「脊椎脊髄外科」専門診療

「脊椎脊髄外科」専門診療について

 大阪公立大学脳神経外科は、1970年代より脊椎脊髄疾患の専門診療を開始し、脳神経外科における脊椎脊髄外科分野では日本の草分け的施設であります。また、脳神経外科学会の専門領域学会である日本脊髄外科学会の創設に最も貢献した教室の一つであり、学会事務局が長年のあいだ当教室に設置されていました。
現在では、脳神経外科手術のなかでも、最も繊細な手術の一つである脊髄髄内腫瘍や脊髄血管奇形といった手術用顕微鏡下でおこなうミクロな手術から、胸腰椎といった大きな関節を矯正固定するようなダイナミックな手術まで幅広く行っています。とくに、脳神経外科医の武器である手術用顕微鏡下手術の技術を駆使する脊髄腫瘍の手術においては、日本有数の実績と治療成績を誇ります。
私達の「患者第一」の信念は設立以来変わることなく、どんな時代にあっても優れた治療成績をおさめることを最重要課題としています。

専門担当医

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内藤堅太郎 プロフィールはこちら
講師
脳神経外科専門医
脊髄外科認定医/指導医
外来診察日:毎週月曜日および金曜日
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児嶌悠一郎 
脳神経外科専門医
外来診察日:毎週金曜日
初診受付は午前9時~10時半で、紹介状(診療情報提供書)が原則必要です。地域医療施設での画像検査などをお持ち頂ければ、初回診療がより迅速となります。

外来受診方法の詳細
 https://www.hosp.omu.ac.jp/outpatient/index.html

地域医療機関から直接に診察予約を取ることが可能です。
地域医療連携室のご案内
https://www.hosp.omu.ac.jp/health_professionals/area/area.html

ご不明な点は脳神経外科外来へ電話でお問い合わせ下さい。
電話番号:06-6645-2356,2357
受付時間:午後2時~4時

連携施設のご紹介

当科専任スタッフが、連携施設において外来診療・手術治療を行っています。
 

対象疾患

一般施設では治療困難な疾患も積極的に取り扱っています。神経モニタリング、術中画像および手術用顕微鏡下手術を駆使して、安全・高精度かつ根治的手術を提供します。

脊椎変性疾患・脊柱靭帯骨化症

・変形性頚椎症
・頸椎椎間板ヘルニア
・脊椎後縦靭帯
・黄色靱帯骨化症
・腰椎椎間板ヘルニア
・腰部脊柱管狭窄症
・腰椎変性すべり症
・側弯症

個々の患者さまの病状に合った低侵襲手術を提供します。患者さまの病状を正確に診断し、脊椎除圧、脊椎矯正あるいは脊椎固定術を選択します。
当教室では、術中に操作部位や操作方向を視認できるナビゲーションシステムと術中CT撮影装置が連動した最新のシステム(Oアームシステム)を導入しており、脊椎固定術における安全なスクリュー設置が可能となっています。また、近年日本に導入された頸椎変性疾患に対する人工椎間板手術も、導入当初からいち早く実施しています。

 

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術中CTとナビゲーションシステムを用いた脊椎固定術

 

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頸椎人工椎間板手術:術前・後

 

脊髄腫瘍

脊髄腫瘍は、おおよその発生頻度は年間人口10万人あたり1~2人程度と極めて稀な疾患です。発生場所は、脊髄を包む膜(硬膜)を境界として、硬膜の外側(硬膜外)および内側(硬膜内)に大きく分類されます。硬膜内腫瘍は、さらに脊髄内部から発生する髄内腫瘍と、脊髄周囲から発生する髄外腫瘍に分類されます。

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・髄内腫瘍 上衣腫、星細胞腫、血管芽腫、海綿状血管腫など
・髄外腫瘍 神経鞘腫、髄膜腫など
・硬膜外腫瘍 転移性腫瘍、悪性リンパ腫など

 

腫瘍の大きさや部位、組織型(良性、悪性など)によって、神経症状の進行度や手術難易度が大きく異なります。CTおよびMRI検査により適切な診断を行い、手術治療可能かどうかを決定します。手術治療では、腫瘍の存在部位により腫瘍への到達方法を検討し、顕微鏡下にて慎重に腫瘍を摘出します。腫瘍摘出後は、腫瘍の病理検査結果により放射線治療や抗がん剤治療を追加するかどうかを決定します。
当教室では、脊髄腫瘍のなかでも特に繊細な手術操作を要求される脊髄髄内腫瘍に対しては、先代から蓄積されてきた数多くの手術ノウハウをもとにし、さらに新しい技術(神経モニタリングや術中蛍光造影など)を取り入れ、難易度の高い手術をより安全に行うことで、現在も日本有数の実績を誇っています。

 

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脊髄髄内腫瘍(上衣腫):術前・後

 

脊髄動静脈瘻

動静脈瘻は、全身のいろいろな部位にできる動脈と静脈の奇形の一つで、動脈と静脈が毛細血管を介さずに直接つながっている病態です。その結果、脊髄浮腫や脊髄梗塞・出血などいろいろな病態を呈するようになってきます。脊髄動静脈瘻は脊髄腫瘍よりもさらに稀な疾患です。
当教室では、血管内治療グループと協力し、近年ではより低侵襲である血管内治療を第一に検討します。一方で、血管内治療に適さない複雑な病変に対しては、血管内治療と手術を組み合わせた集学的治療を提供します。そのために必要となるハイブリッド手術室(血管撮影装置を併設している手術室)を当施設には設置しています。

 

脊髄空洞症

脊髄空洞症とは脊髄内に髄液が溜まる病態です。キアリ奇形、脊髄腫瘍、外傷や感染による癒着性くも膜炎など、さまざまな原因がありますが、精査を行っても原因がわからない場合もあります。手術方法は原因となっている疾患によって異なります。症状の進行は緩徐なことが多いですが、一旦進行した症状は手術後にも残ることが多く、手術のタイミングを逃さないことが重要です。

  1. キアリ奇形

先天的に頭蓋骨の一部(後頭蓋窩:小脳が入っている後頭骨の部分)が狭く、小脳の一部(小脳扁桃)が脊椎管内に落ち込んでいる病態です。神経症状は、下垂した小脳扁桃の脊髄や脳幹部への直接圧迫による場合と、脳脊髄液循環障害が原因の脊髄空洞症による場合があります。
手術は脳脊髄液の流れの障害を解除する根治手術(大後頭孔減圧術)を基本としますが、患者によっては脳脊髄液のバイパス路を作成する髄液シャント術が必要になることもあります。

 

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キアリ奇形に対する大後頭孔減圧術:術前・後と骨削除範囲

 

  1. 脊髄癒着性くも膜炎

外傷や感染、くも膜出血後、脊髄手術後などが原因で、脊髄を覆うくも膜と脊髄の間で炎症が起こり、長年かけて癒着が進行していきます。本来髄液が還流している脊髄とくも膜の間で還流障害が起こるため脊髄空洞の原因となります。炎症そのものを停止させる根治治療はなく難治性の病態です。そのため、治療を行っている施設が少ないのが現状です。当教室ではできるだけ病状の進行を予防する目的で、髄液シャント術を積極的に行っています。

 

頭蓋頸椎移行部病変

・頭蓋底陥入症
・環軸椎亜脱臼症
・歯突起後方偽腫瘍

頭蓋骨と頸椎の連結部分(頭蓋頸椎移行部)は、脊椎骨の中で最も複雑な構造であり、さらに脳幹部へ向かう椎骨動脈がすぐ近くを走行しているため、手術には細心の注意が必要となってきます。この部位の手術では脊椎インプラント使用した固定術が必要となることも多いですが、近年では最新のナビゲーションシステム(Oアームシステム)を使用することで、より安全な手術が可能となっています。

 

脊椎・脊髄外傷

当院救命救急センターと協力しながら、緊急対応が可能な体制を整えており、最善の手術治療を提供します。

 

その他

・先天性疾患(二分脊椎など)
・感染(化膿性脊椎炎など)
など

 

脊椎・脊髄疾患

脊椎骨は7個の頸椎、12個の胸椎、5個の腰椎および仙椎・尾骨から成り立っています。ひとつの脊椎骨は輪を形成しており、それらが上下に連なってできた長いトンネルのなかに脳と四肢の間で情報伝達を行う脊髄が存在します。
隣り合う脊椎骨どうしは主に椎間板で連結されており、脊柱全体で頭を支えながら体のスムーズな動きを可能にするとともに、脆弱である脊髄を保護する役目も担っています。
頭部・体幹の支柱・関節構造である脊椎と脳から連続する神経構造である脊髄が密接に関連するため、加齢に伴う変性疾患、外傷、腫瘍、血管障害、奇形などのさまざまな疾患に対応する必要があります。

基本治療方針

脊髄と脳は一体で、中枢神経と呼ばれます。脊髄からさらに分枝するのが末梢神経です。
中枢神経と末梢神経の最も大きな違いは再生能力です。
一般に、中枢神経である脳および脊髄には再生能力は乏しいと考えられています。
従って、脊椎・脊髄疾患では重篤な神経症状が進行する前に、あるいは重篤な神経症状がそれ以上に進行しないように、治療を考えなくてはなりません。

当科で取り扱っている主な脊椎・脊髄疾患

  • この分野で取り扱っている主な脊椎・脊髄疾患の情報を「脳と神経のデータベース」のコーナーにまとめてありますのでぜひご覧ください。