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2025年10月14日

  • 活動報告

海洋開発設計・制作セミナー「自動運航船避航プログラミングコンペティション」が中百舌鳥キャンパスで開催されました

曳航(えいこう)水槽

▲曳航(えいこう)水槽

 

ホバークラフト

▲ホバークラフト

 

中百舌鳥キャンパス 生産技術センター

▲中百舌鳥キャンパス 生産技術センター

 

― 学生が自律運航の未来を設計!短時間で挑むアルゴリズム開発 ―

日本財団オーシャンイノベーションコンソーシアム主催の「海洋開発設計・制作セミナー:自動運航船避航プログラミングコンペティション」が、10月11日(土)から13日(月・祝)、大阪公立大学中百舌鳥キャンパスにて開催されました。本セミナーは、自動運航船技術をテーマに、学生がプログラム開発と操船アルゴリズムの構築を行う実践型の学習プログラムです。全国から集まった理工系学生12名(4名×3チーム)が参加しました。

背景と目的

近年、海運業界では人手不足や効率化の課題を背景に、自動運航船の社会実装が急速に求められています。日本は高い制御技術と安全運航の知見を有し、国際的にも重要な立ち位置にあります。本セミナーは、こうした社会ニーズに応える次世代人材を育成することを目的に、学生が短期間で「構想・設計・実装・発表」までを体験できる構成となっています。

実施概要

ミッション内容

競技は、実際の自律航行を模したミッション形式で行われました。水槽内には6つのブイが設置され、左3つが緑、右3つが赤で区分されています。その先には別のホバークラフトが左奥に、ゴールを示す2つのブイが右側に配置されています。学生たちは、ブイの間を通過し、障害物を避けながらゴールを目指す3段階のミッションに挑みました。①ブイ通過航行、②衝突回避からゴールインまでの制御、③全航路(ブイ通過〜ゴールイン)を統合制御する課題に対して、限られた3日間で設計から調整・発表までを行う形式です。

 

ミッション1 操縦試験

 

ミッション2 衝突回避&ドッキング試験

 

ミッション3 総合試験

競技結果・参加チーム紹介

🥇 Cチーム(赤) ― 優勝(コンペ50点+プレゼン90点=140点)

Cチームは、単なるミッション達成に留まらず、「ミニマム」「フル」「エクストラサクセス」の3段階目標を設定。後退やブレーキを最小限に抑え、乗り心地や省エネルギーも意識した取り組みが評価されました。フレームレートを0.5fpsから2fpsへと引き上げ、スリープを使わずカメラのみで制御を完結。制御係数を用いた非連続的なアルゴリズムにも挑戦しました。本番では想定外の検出エラーも発生しましたが、リスク分析を踏まえた堅実な姿勢が光りました。審査員からは「実装力と探究心が非常に高い」と高く評価されました。

 

🥈 Aチーム(青) ― 第2位(コンペ40点+プレゼン60点=100点)

Aチームは、赤と緑のブイをカメラで認識し、その中点を航行するアルゴリズムを採用。バウンディングボックスの大きさによって旋回強弱を調整し、視認性に左右されない制御を実現しました。プログラムの画像解析頻度を敢えて落とすことで安定性を高め、「ゆっくり進むことが最短距離」という戦略が印象的でした。

 

🥈 Bチーム(黄) ― 第2位(コンペ10点+プレゼン90点=100点)

Bチームは、ブイの組み合わせに応じて制御を変化させる「ロケットスタート作戦」を展開。画角を4分割して細やかな制御を実現し、序盤は大胆に、後半は繊細に舵を取る戦略を採用しました。初期条件に影響される難しさがありながらも、全ミッションをリタイアなしで完走。発想力と挑戦姿勢が高く評価されました。

審査員・講評コメント

大阪公立大学 海洋システム工学科 橋本 博公教授

「同じ機体でありながら、各チームで全く異なる結果となりました。実際の自律運航船でもどのような制御アルゴリズムを用いるかが重要です。」

 

吉野電機株式会社 自律航行システム開発部 原 裕一様

「現場の無人運航船でも同様の課題に直面します。各チームが現実的な制御・検知の工夫を凝らしていた点に感銘を受けました。」

 

日本財団 池田 大誠様 (日本財団オーシャンイノベーションコンソーシアム)

「既存コードを利用するだけでなく、どのチームも独自の発想でチャレンジしており、技術的探求心の高さに驚かされました。」

 

 

海洋システム工学科 橋本 博公教授

▲海洋システム工学科 橋本 博公教授

総評

わずか3日間という制約の中で、学生たちは「問題を定義し、制御を実装し、結果を発表する」までを完遂しました。サンプルプログラムをベースにしながらも、各チームがオリジナルのロジックを組み込み、自律制御の本質に迫る成果を示しました。特に「視認性の補正」「フレームレート調整」「係数制御」など、現実の自動運航船開発にも通じる発想が多く見られ、産学連携による実践教育の意義を強く示す機会となりました。

関連リンク

👉 Project海洋開発公式サイト(イベント詳細)

👉 無人運航船プロジェクト「MEGURI2040」

👉 【動画】無人運航船プロジェクト「MEGURI2040」

👉 Njord Challenge: Student World Championships for Autonomous Ships

👉 KAMAKEのすすめ

編集後記(学科広報部)

今回のセミナーは、短期集中×実践教育の理想的モデルケースとなりました。「制御アルゴリズムを通じて社会課題を解く」という経験を通じ、学生一人ひとりが海洋システム技術の将来を自分ごととして捉え始めています。本学科では、今後も産学連携の教育機会を通じて、未来の海洋人材の育成を推進してまいります。広報担当として現場に立ち会いながら、学生たちの真剣なまなざしと議論の熱量に強く心を打たれました。参加者が自らの手で未来の海洋技術を形にする姿に、自律運航船が一般に普及する未来が着実に近づいていることを感じました。