海洋システム工学科

 

概要

海との共生・調和に基づいた
多様なシステムを創造する。

地球は水の惑星であり、人類はその誕生以来、水の源である海洋から豊かな恵みを受けてきました。その資源を持続的に有効活用するためには海洋環境を守り、海と共生する活動のあり方を探らなければなりません。
この考えに基づき、海洋システム工学科では、海洋環境の評価と保全などに関する基礎知識と、安全で効率的な海洋輸送システム・海洋資源や海洋空間の利用システムに関する基礎理論を学びます。さらに自然と技術の共生を考究するためのシステム科学に関する基礎理論、実験・実習・フイールド計測などを通して具体的な方法論の展開を推進していきます。
人類が発展させてきた工学技術の上に成り立つ人間活動を、海という自然とどう共生・調和させていくか──これが、海洋システム工学の第一の目的です。目的を達成するには、地球システムの中での海洋を多面的に理解した上で、自然と技術の統合システムを創造し、海で使われる工学技術の新たな展開を図ることが不可欠です。
現在具体的に取り組んでいる技術課題は、船舶などによる安全で効率的な海洋輸送、エネルギーや鉱物資源の宝庫としての海洋の有効活用、海の広大な空間利用などに関わるシステムの創造です。これらの先端的工学技術を、単に自然に配慮した技術としてではなく、自然との共生・調和を基本とした持続的発展に有効なものにすること、それが海洋システム工学のめざすところです。

貿易船 海洋システム工学科

 

研究グループの構成と教員

中百舌鳥キャンパス

研究グループ 職名 氏名 主たる研究内容等
1.海洋システム計画学 教授 有馬 正和 海洋システム計画学、ヒューマン・ファクター、海中ロボット工学、海洋政策研究
准教授 新井 励 海洋環境計測、海洋音響工学、海洋光学、計測工学
2.海洋輸送工学 教授 片山 徹 船舶工学、高速艇工学、海洋工学、浮体運動学、復原性、操縦性、推進性能、風力推進船、洋上風力・波浪・潮流発電、耐航性能、水槽試験
准教授 生島 一樹 構造工学、船体構造解析、非線形有限要素解析、大規模数値計算、並列計算
講師 谷口 友基 船舶工学、海洋工学、制御工学、浮体運動学、浮体式波力発電、水槽試験
3.海洋空間利用工学 教授 中谷 直樹 海域環境モニタリング、海洋環境計測、海洋生態系工学、生態系モデル、海洋資源工学
准教授 柴原 正和 溶接力学、FEMによる熱弾塑性解析、画像計測、船舶海洋構造力学、大規模構造解析
4.海洋資源工学 教授 橋本 博公 海底資源工学、数値流体力学、自律運航船、自律型潜水機、制御工学、マルチフィジックス、模型試験、実海域試験
准教授 二瓶 泰範 海洋構造物に働く流体力、渦励振問題、ヨットの設計開発、浮体式洋上風力発電
5.海洋環境工学 教授 馬場 信弘 海洋環境学、海洋流体力学、マリンエコシステム、海洋循環
准教授 坪郷 尚 造波抵抗、海洋構造物、超大型浮体式構造物、流力弾性

 

カリキュラム

海洋における自然と人間活動の調和を基調としながら、持続可能な海洋の利用に関わる多様な人工・自然システムについての教育課程を編成しています。

1年次 幅広い学修により豊かな教養を身につけるため、基幹教育科目を中心に履修します。これにより、日本語で論理的に表現する能力や、グローバル化やネットワーク化に対応できる能力、国際的コミュニケーション能力、数学・物理学および情報科学に関する知識とその応用に関する基礎的素養を身につけます。また、配当される専門科目において、海洋システム工学の専門の基礎的知識を身につけます。
2年次 配当される専門科目を履修し、3年次以降の専門科目履修に必要な知識を習得するとともに、海洋に関わる技術者としての自覚を身につけます。また専門科目の中のプロジェクト科目の履修によって、デザイン能力、計画力、総合力、コミュニケーション能力を身につけます。
3年次 海洋システム工学の専門科目を中心に履修し、講義・演習などを通して、海洋システム工学に関する問題解決につなげる解析力とその応用力を身につけます。専門科目の「海洋システム工学科学技術英語」では多様化価値観と国際的なコミュニケーション能力を、さらに「工学倫理」、「環境倫理」では技術者・研究者としての倫理観を身につけます。
4年次 必修とされる卒業研究で、制約条件の中で自主的かつ計画的に物事を進める能力を身につけ、獲得した解析力を駆使して問題解決可決に向けた統合化力と、創造力を身につけます。

 

研究トピック

自動操船AIの開発と実証実験
高度自律化が拓く海上輸送と海洋開発の未来

海洋輸送工学及び海洋資源工学研究グループ

日本の経済活動に欠くことのできない海上輸送。ポストコロナのキーワードは「高度自律化」です。AI技術のひとつである深層強化学習を応用することで、単なる認知支援に留まらず、危険判断や回避行動まで踏み込んだ自動操船システムを開発しています。大型試験水槽での模型船実験と操船シミュレータによる模擬実験を経て、実船を用いた実証実験を大阪湾にて実施しました。輻輳海域でのAIの方位指示による自動航行は世界初の試みです。現在は、離着岸操船を自動化するAI開発と大型フェリーを用いた実証実験を行っています。研究対象となる海洋人工物は船舶だけに留まりません。日本が有する広大な排他的経済水域は海洋エネルギーと海底鉱物資源の宝庫です。現在、広範な海域を効率的に探査するための水中ロボットや帆走式エネルギー基地の運用自律化に取り組んでおり、海底掘削機の開発に必要となる海底環境を模擬する固液二相シミュレーションの研究も行っています。

海洋輸送工学及び海洋資源工学研究グループ

 

海洋輸送工学及び海洋資源工学研究グループ

海洋輸送工学及び海洋資源工学研究グループ

 

在学生の声

マレーシアから日本へ。海を越えて最先端の海洋工学を学ぶ。

大阪府立大学 大学院 工学研究科 航空宇宙海洋系専攻 海洋システム工学分野 博士前期課程2年生 ハリクリシュナン・ハリワーナン さん
Pusat Bahasa Teikyo高校(帝京マレーシア日本語学院) 出身

高校在学中に、身近な海洋の大部分が未知であること知り、その解明にロマンを感じて海洋工学に興味を持つようになりました。日本は海に囲まれた国であり、海洋工学についての最先端の技術を有していることから留学先に決め、海洋工学科に進学しました。1年次では数学・物理などの基礎的な学問を学び、2年次から専門的な知識を養うとともに海洋における事象を工学的にモデル化することで理解を深めてきました。海洋工学科では教員や先輩との距離が近く、勉学に関するアドバイスや就職活動についての相談も親身に対応してくれます。基本的には学生の自主性を尊重し、行き詰まった時は的確なガイダンスをしてくれるのが心強かったです。本学科で身につけた能力を活かして来年から社会に貢献できるように仕事に取り組んでいきたいと思います。

ハリクリシュナン・ハリワーナンさん

 

卒業生の声

在学中に多様な海事産業に関わり新造船の設計業務の道へ。

大阪府立大学 大学院 工学研究科 航空宇宙海洋系専攻 前期博士課程 修了 足達 美奈 さん
大阪府立寝屋川高校 出身
勤務先 株式会社MOLシップテック

新造船の設計業務に船主として携わっています。海運会社は船を建造するわけではありません。海運会社が運用する船の建造から運航、そして船が寿命を迎えるまでの船の一生に関わるすべての過程の経験を得て、より良い船を建造するのが船舶建造技術を担う私の仕事です。海や工学に関連することを学びたいと入学を希望。在学中に学内外問わず様々な海事産業に関わりました。様々な経験をするうちに船の一生に関わりたいという思いが芽生え、海運業界を志望しました。プロジェクト演習授業及び研究室生活で得た、チームで考えること、目的に向かって努力し結果を出すことは、現在の業務につながっており、今でも私の大切な財産です。船は荷物を運ぶことだけではなく、様々な外的要因を考慮されたうえで造船・運航されています。関わる全ての人や環境にとってより良い船を、これからも手掛けていきたいと思います。

足達 美奈さん

 

主な就職先

川崎重工業/三菱重工業/ジャパンマリンユナイテッド/今治造船/新来島サノヤス造船/商船三井/川崎汽船/古野電気/日立造船/ダイハツディーゼル/日本海事協会/国土交通省/防衛省/新日鉄住金エンジニアリング/JFEスチール/清水建設/竹中工務店/クボタ/コマツ製作所/トヨタ自動車/日産自動車/本田技研工業/ダイハツ工業/スズキ/デンソー/日本車輌製造/日立製作所/大阪ガス/NEC/キヤノン/ダイキン工業

教育目的

海洋における人間活動に関わるすべての技術は、人間及び環境との調和の上にあるべきとの基本理念のもとに、海洋における各種の人工システムに関する研究、開発、設計、生産、運用を担う人材、及び海洋環境の計測、保全、創造に寄与できる人材を養成する。

学科ポリシー

アドミッション・ポリシー

私たちの住む地球は、地圏、水圏、気圏とそこで生きる生物圏から構成されるひとつのシステムととらえることができる。いま、この地球システムは生物圏での人間活動によって大きな影響を受け、さまざまな障害が起こることが懸念されている。海洋システム工学科では、地球システムの中の水圏、特に海の環境という自然を理解し、その自然を壊すことなく海を利用し豊かな人間社会に貢献するために、海という自然システムと海を利用する人工システムを統合する学問の構築を目指す。
海洋における人間活動に関わるすべての技術は、人間および環境との調和の上にあるべきとの基本理念のもとに、海洋における各種の人工システムに関する研究、開発、設計、生産、運用を担う人材、および海洋環境の計測、保全、創造に寄与できる人材を育成する。
この教育理念に基づいて、地球システムの中の海洋システムを理解するために、海洋環境およびその中で使用される人工システムに関する基礎学力をつけ、さらに専門知識を習得するとともに、総合的に物事を考える能力を育成すること、また、社会的倫理観を養い、国際社会においても活躍できるための自己表現力をつけ、幅広い分野で活躍できる創造性豊かな有能な人材を社会に送り出すことを目指す。
したがって、海洋システム工学科では、工学部のアドミッション・ポリシーに加えて、一般選抜では、次のような学生を求める。

  1. 海洋システム工学に対する強い関心があり、この分野で、人と調和した豊かな社会の発展に貢献する意欲をもっている人
  2. 論理的な思考力と豊かな創造力の獲得をめざし、学習意欲を継続できる人
  3. 高い倫理観をもって課題解決に意欲的に取り組む人

 

海洋システム工学科では、多様な人材を選抜するために総合型選抜を実施する。総合型選抜においては、工学部のアドミッション・ポリシーに加えて、次のような学生を求める。

  1. 海洋システム工学分野において先駆的に活動する意欲がある人
  2. 高い倫理観を持ち自身の学業・生活に対して責任感のある人
  3. 海洋システム工学における諸課題に取り組むための基礎的な数学の素養、物理学の素養を身につけている人

 

ディプロマ・ポリシー

海洋システム工学分野では、次の能力・姿勢を身につけたものに、学士(工学)を授与する。

  1. 数学、物理学および情報科学に関する知識を有し、それらを工学に応用できる
  2. 海洋システム工学の専門知識と技術を体系的に学び、応用できる。
  3. 日本語で、海洋システム工学の文章を、読み、書くことができ、論理的な議論ができる。
  4. グローバル化し、高度にネットワーク化された情報化社会に柔軟に対応でき、多面的・俯瞰的に物事を考えることができる。
  5. 国際的コミュニケーション能力を有し、対話や自己表現により異文化と交流できる。
  6. 海洋システム工学について、社会および自然に及ぼす影響や効果、およびこれらの分野の専門家、技術者が社会に対して負っている責任を理解し、具体例を通して倫理観とそれに基づき適切な判断や行動を行うことができる。
  7. 海洋システム工学を利用して、社会の要求を解決するための創造的な思考を行うことができる。
  8. 生涯学習の観点から、自主的、継続的に海洋システム工学について、その応用を含む学問分野全般を学習することができる。
  9. 与えられた制約のもとで、計画的に学習を進め、物事をまとめることができる。
  10. 海に対する愛情を持ち、海洋に関わる技術者として、地球システムの中の海洋システムにおける人間活動の在り方について考えることができる。
  11. 海洋に関わる自然および人工システムに関する基礎知識を修得し、それらを応用して問題を解決することができる。
  12. 海洋に関わるさまざまな問題を総合的に解析し、その本質を知るとともに、知識を統合化して、調和のとれた問題解決策を導くことができる。
  13. 上記の解析力と統合化力を駆使して、海洋に関連する新しいシステムを創造することができる。

 

カリキュラム・ポリシー

海洋における自然と人間活動の調和を基調としながら、持続可能な海洋の利用に関わる多様な人工・自然システムについての教育課程を編成する。

  1. 「海洋システム工学科のディプロマ・ポリシー」の達成を目的として、教育課程の編成を行う。
  2. 工学の基礎に根ざした学問の系統性と順次性を尊重して、基幹教育科目及び専門科目により構成される整合性・一貫性を持つ体系化された教育課程を編成する。
  3. 基幹教育科目の履修により、教養豊かな人間性を涵養し、幅広い学修成果を身につける。さらに、工学を学ぶために必要な自然科学全般についての基盤的知識を修得するとともに、生涯に亘る学びの基礎を築く。
  4. 1年次では、学生の幅広い学修を保証し、豊かな教養を身につけるため、基幹教育科目を中心に履修する。その中で、4年間の学士課程教育の基礎を構築するため、基礎教育科目を適切に配当する。これらの履修により、日本語で論理的に表現する能力や、グローバル化やネットワーク化に対応できる能力、国際的コミュニケーション能力、数学・物理学および情報科学に関する知識とその応用に関する基礎的素養を身につける。また、配当される専門科目において、海洋システム工学の特色を理解するとともに、海洋システム工学の専門の基礎的知識を身につける。
  5. 2年次では、引き続き基幹教育科目の履修によって、豊かな教養を身につけるとともに、その中の基礎教育科目と配当される専門科目を中心に履修し、3年次以降の専門科目履修に必要な知識を習得するとともに、海洋に関わる技術者としての自覚を身につける。また専門科目の中のプロジェクト科目の履修によって、デザイン能力や計画力、総合力、コミュニケーション能力を身につける。
  6. 3 年次以降では、海洋システム工学の専門科目を中心に履修し、講義・演習などを通して、海洋システム工学に関する問題解決につなげる解析力とその応用力を身につける。また、プロジェクト・実験・実習科目の履修によって、引き続き、デザイン能力や計画力、総合力、コミュニケーション能力を身につける。専門科目の「海洋システム工学科学技術英語」の履修によって、多様化価値観と国際的なコミュニケーション能力を身につける。さらに、「工学倫理」、「環境倫理」を履修し、技術者・研究者としての倫理観を身につける。
  7. 4年次では、必修とされる卒業研究を履修することで、自らが学び、制約条件の中で計画的に物事を進める能力を身につけるとともに、これまで身につけた解析力を駆使し、問題解決に向けた統合化力と、創造力を身につける。

各科目の学修成果は、定期試験、中間試験、レポート、発表等の平常点等で評価することとし、その評価方法の詳細については、授業内容の詳細とあわせてシラバスに記載する。