電子物理工学科

 

概要

I o T 時代を創生する
エレクトロニクスを追究。

電子物理工学科では、今日の社会を支え、次世代を創生するエレクトロニクス・ナノテクノロジー・マテリアルサイエンスを学ぶことができます。
エレクトロニクスに関する科学技術は、電子物理工学という一つの学問体系に基づいています。電子物理工学で実現される技術として、電子の電荷としての性質を利用するもの、電子のエネルギー的な遷移によって生じる光を利用するもの、電子のスピンを起源とする磁性を利用するものがあります。
エレクトロニクスを支える幅広い学問領域をカバーする電子物理工学は、「電子物性」と「電子材料」に関する学問に大別されます。電子物理工学の両輪をなす両学問が関連しあうことで、現代社会が実現されてきました。けれども、今後のIoT技術の発展とサステナブルな社会の実現には、新奇なデバイスの開発を含む電子物理工学分野全体の発展が期待されています。それには両学問の深化とさらなる展開が必要不可欠です。こうした背景を考慮し、電子物理工学科では電子物理工学の発展に必要な「電子物性」と「電子材料」に共通する知識と能力を修得した上で、その発展を支える両輪となる「電子物性」に秀でた人材と「電子材料」に秀でた人材を養成します。

電子物理工学科 電子物理工学科

 

研究グループの構成と教員

中百舌鳥キャンパス(電子物性コース)

研究グループ 職名 氏名 主たる研究内容等
1.量子物性 教授 戸川 欣彦 スピンエレクトロニクス、磁性、超伝導、電子顕微鏡、電子線物理、電磁場応答の制御と操作
准教授 宍戸 寛明 超伝導、超伝導ナノ構造体、結晶成長、強相関電子系
助教 髙阪 勇輔 磁性、結晶成長、放射光、中性子散乱
2.半導体デバイス物理 教授 東脇 正高  半導体デバイス工学、半導体物理、酸化物・化合物半導体エレクトロニクス、パワーデバイス、高周波デバイス
准教授 沈 用球 ナノ光物性、固体光物性、結晶成長、多元化合物半導体
3.有機半導体工学 准教授 小林 隆史 有機半導体工学、有機薄膜太陽電池、有機EL素子、デバイス物理
准教授 永瀬 隆 有機半導体工学、分子エレクトロニクス、ナノ電子物性、半導体物性、ナノ加工
4.ナノデバイス 教授 秋田 成司 ナノ固体物性、ナノ材料、ナノ電子物性
准教授 有江 隆之 低次元材料、フォノンエンジニアリング、フォノニック結晶、ナノ熱物性
准教授 余越 伸彦 ナノ光物性、ナノ構造半導体、量子情報理論
5.プロセス物理 准教授 安田 雅昭 電子ビーム工学、半導体リソグラフィ、走査電子顕微鏡、ナノ計算科学
6.量子・光デバイス工学 教授 岡本 晃一 プラズモニクス、ナノフォトニクス、量子・光デバイス工学、レーザー応用
准教授 和田 健司 量子・光デバイス工学、レーザー応用、光・超音波計測
助教 松山 哲也 量子・光デバイス工学、半導体光物性、レーザー応用
7.機能デバイス物性 教授 藤村 紀文 磁性強誘電体、磁性半導体、スピントロニクスデバイス、ニューロモルフィック論理素子、ニューロモルフィックセンサー、機能融合型パワーデバイス
准教授 吉村 武 酸化物エレクトロニクス、機能半導体デバイス、強誘電体
8.非線形動力学・複雑系 教授 堀田 武彦 非線形動力学、カオス、ベイスン構造、確率共鳴
准教授 及川 典子 非線形物理、反応拡散系、ソフトマターの物理
助教 芳賀 大樹 非平衡統計力学、物性基礎論、非線形動力学
9.量子物理学 教授 魚住 孝幸 物性理論、強相関電子系、光物性
准教授 加藤 勝 物性理論、電子相関、遍歴電子の磁性、超伝導
准教授 播木 敦 強相関電子系、第一原理計算、X線分光理論
10.固体物性 教授 岩住 俊明 X線分光学、光誘起相転移
教授 三村 功次郎 光電子分光、X線分光、固体電子物性、強相関電子系
准教授 安齋 太陽 強相関電子系、電子状態、放射光
准教授 田口 幸広 正・逆光電子分光、固体表面電子分光、放射光、強相関電子系
11.シリコンフォトニクス 准教授 高橋 和 シリコンレーザー開発、フォトニック結晶、シリコンフォトニクス、半導体微細加工、顕微分光
12.表面界面物性 准教授 野内 亮 電界効果表面科学、ナノ界面制御、原子層デバイス、有機分子デバイス

 

杉本キャンパス(電子材料コース)

研究グループ 職名 氏名 主たる研究内容等
13.光機能工学 教授 金 大貴 半導体ナノ粒子、ナノ粒子秩序構造体、光物性、光機能
准教授 渋田 昌弘 機能性ナノ薄膜、超高速分光、電子物性、電子ダイナミクス
准教授 竹内 日出雄 半導体単結晶、エピタキシャル構造(含:超格子、多重量子井戸)およびナノ薄膜等における光物性の解明とその機能応用
講師 菜嶋 茂喜 超短光パルス技術、テラヘルツ分光技術開発、分光センシング応用
14.数理工学 教授 寺井 章 分子性固体、有機導体、非線型励起、ソリトン、ポーラロン、光学応答、電子状態制御、強相関電子系、計算物理学
准教授 杉田 歩 非平衡統計力学、量子カオス、量子情報
15.表面機能工学 教授 仕幸 英治 スピントロニクス、磁性体、金属、半導体、有機分子、薄膜、接合、多層膜
准教授 小林 中 表面電子物性、ナノスケール分析、電子・イオンビーム点源
准教授 福田 常男 固体表面電子物性、プローブ顕微鏡、機能デバイス、有機無機ハイブリッドデバイス
助教 田中 健司
16.パワーエレクトロニクス 教授 重川 直輝 太陽電池、パワーデバイス
准教授 梁 剣波 ダイヤモンド、半導体デバイスの放熱物性、異種材料接合界面物性、ナノ構造
准教授 武智 誠次 宇宙塵、放射線、粒子検出器
17.プラズマ工学 教授 白藤 立 プラズマ材料プロセス、プラズマ物理、プラズマ化学
教授 呉 準席 大気圧プラズマ材料プロセス,プラズマ計測,プラズマライフサイエンス
教授(クロスアポイントメント) 高岡 素子 食品機能性、美容、抗ストレス、発酵食品、おいしさの科学
講師 村治 雅文 電気を利用した生物の状態などの計測

カリキュラム

1〜2年次 1年次と2年次には基礎学力と高い教養を身につけるために、初年次教育、情報リテラシー、総合教養、健康・スポーツ科学の各科目を学びます。また、外国語科目の学修によりグローバル能力を養成します。そして自然科学や数学の知識を広く得るために基礎教育科目(線形代数・解析学・基礎物理学など)を学びます。専門科目についても、分野への導入である「電子物理工学概論」、基礎教育科目を高度にした電磁気学・統計物理学・量子力学・電気回路学・解析力学などを学びます。
2年次前期終了時に、「電子物性コース」か「電子材料コース」を選択します。コース分け以降、学生は電子物性、電子材料いずれかに軸足をおいた学修を行います。
3年次

電子物性コース
電子物性の観点から深い専門知識を修得するために、結晶物理工学・固体エレクトロニクス・気体エレクトロニクス・電磁波・光学・非線形力学、磁性・超伝導・集積回路デバイス・量子デバイス・放射光科学・ナノエレクトロニクス・光エレクトロニクスに関する科目を学びます。

電子材料コース
電子材料の観点から、固体物理学、半導体工学・物理光学・電子材料学・磁性材料学・量子エレクトロニクス・パワーエレクトロニクスに関する科目を学びます。

コース共通
電子物理工学実験を受講し、卒業研究に向けた基礎能力を養います。

4年次 各コースとも卒業研究に従事し、電子物理工学の専門知識をさらに深く追求するとともに、実験的・理論的技法も磨き、自身で主体的に新しい研究テーマに取り組みつつ、指導教員や大学院学生との議論を重ねながら課題を遂行する総合的能力を身につけます。

 

研究トピック

新半導体材料・デバイスの創出
〜 社会変革をもたらす先端的電子デバイスの研究開発 〜

半導体デバイス物理研究グループ(東脇研究室)

 現在、世の中に存在するほぼ全てのエレクトロニクスは半導体デバイスによって支えられています。そのため、より高性能な半導体デバイスの創出が社会的に常に求められております。私達の研究室では、研究室主催者(東脇教授)が世界に先駆けて見出した、「酸化ガリウム」という新しい半導体を用いたトランジスタ、ダイオードの研究開発を行っています。酸化ガリウムの応用先は、世界的省エネ、脱炭素化への貢献が期待される電力変換用パワーデバイス、および既存の半導体デバイスでは長期安定利用が難しい高温、放射線下に代表される極限環境での情報通信・信号処理デバイスが挙げられます。現在酸化ガリウムは、次世代エレクトロニクスを担う期待の半導体新材料として、世界中の大学、企業、研究所で研究開発が活発化しています。
 東脇研究室では、酸化ガリウム薄膜エピタキシャル成長から、実際のデバイス作製・評価に至るまでを対象とした研究開発を、国内外の企業、研究所、大学と共同で実施しています。新半導体材料・デバイス研究開発で、自分の力を試してみたい/活躍してみたいと考える学生の皆様、共同研究を希望される企業の皆様、ご連絡お待ちしております。

ナノ光物性研究グループ(東脇研究室)

 

在学生の声

次世代の光機能性材料の研究に没頭し、ビジネスコンテストでは最優秀賞も受賞。

大阪市立大学 大学院 工学研究科電子情報系専攻 後期博士課程 3年生 李太起 さん
大阪朝鮮高級学校 出身

学部時代は旅行サークルに所属し、東南アジアを中心に多くの国を旅しました。大学院に入ってからは研究に没頭。次世代の光機能性材料として期待されている半導体ナノ粒子について、論文作成や国際学会での発表を行いました。海外の専門誌に自分の論文が掲載されているのを見た時は、感慨深いものがありました。また、産官学に渡り活躍するグローバルリーダーを育てる教育プログラムにも参加し、一週間のアメリカでの研修等も体験しました。このプログラムでは異なる分野の学生4人とチームを組み、リアルタイムで水質汚染検査をするシステムを考案。ビジネスコンテストで提案し、最優秀賞を獲得できました。これらの貴重な経験を活かし、今後は企業の研究開発職で活躍したいです。

李太起さん

 

卒業生の声

就職活動を通じて需要の高まりを実感。今と未来を支える技術や知識が吸収できる学科です。

大阪市立大学 大学院 工学研究科 電子情報系専攻 前期博士課程 修了 東 志織 さん
大阪府立夕陽丘高校 出身
勤務先 ローム株式会社

プラズマ工学の研究室に所属し、プラズマを用いた材料合成を追究しました。韓国で行われた国際会議(HyMaP 2017)でExcellent Poster Awardを受賞できたのは、新たな事例報告であることに加え、学内での研究発表を重ねて明解な資料作成に努めた結果だと思います。友人づくりを目的に入ったフットサルサークルでも視野が広がり、充実した学生生活を過ごせました。就職活動が始まって驚いたのは、就職先の選択肢の多さです。私自身は、インターンシップに参加した電子部品メーカーから学校推薦で内定を獲得。技術者でありながら表に立って説明できる技術営業職に魅力を感じたことが決め手になりました。AIやIoTの活用にも、半導体をはじめ電子部品の技術進化は不可欠です。今後ますます需要が高まる学科だと思います。

東 志織さん

 

主な就職先

三菱電機/ソニー/川崎重工業/ダイキン工業/村田製作所/ローム/デンソー/トヨタ自動車/京セラドキュメントソリューションズ/パナソニック/本田技研工業/シャープ/キオクシア(東芝メモリ)/浜松ホトニクス/キヤノン/東京エレクトロン/日本電産/ブラザー工業/アルトナー/Wave Technology/関西電力/近鉄グループホールディングス/コニカミノルタ/島津製作所/住友電気工業/ダイヘン/日産自動車/日本ガイシ/阪急阪神ホールディングス/クボタ/ルネサスエレクトロニクス ほか

教育目的

エレクトロニクスを支える学問領域である電子物性及び電子材料それぞれの深化と、更なる発展に必要な共通の知識と能力を修得した上で、その発展を実践できる電子物性に秀でた人材と電子材料に秀でた人材を養成する。

学科ポリシー

アドミッション・ポリシー

グローバル社会の持続可能な発展には、情報通信、エネルギー、交通等、多様な技術分野の進歩が不可欠である。これらに共通する基盤技術である、電子デバイスのさらなる高度化・高機能化、新規創成が様々な産業分野において求められている。そのような要求に応えるには、確固たる物理的基礎に立脚した電子技術に基づく、より独創的な発想が必要である。電子物理工学科は、このような社会的要請に応えるために、従来の電子工学の範疇を超える、電子材料、電子物性に力点を置いた教育を行うことで、幅広い物理的視野と電子技術の素養をもち、高い創造牲を発揮できる人材を育成することを目標とする。

  1. 物理学や電気・電子工学に対する強い関心があり、専門知識と技術を体系的に学び、それを幅広い工学に応用することで社会の発展に貢献する意欲をもつ人。
  2. 論理的な思考力と豊かな想像力の獲得を目指し、勉学意欲に溢れる人。
  3. 物質がもつ電気、磁気、光などの物理学的性質の解明と新規機能の開拓、実験的また理論的解明などの幅広い電子・物理の科学技術に強い興味を持ち、主体的かつ積極的に学修・研究する意欲に溢れる人。
  4. 外国語能力に優れ、国際的視野をもって新たな課題を見出し、その解決に積極的に挑戦する意欲をもつ人。
  5. 高い倫理観をもって課題解決に意欲的に取り組む人。

 

ディプロマ・ポリシー

電子物理工学科では、電子物理工学分野に基礎を置き、本課程のカリキュラムに沿って、教育目標にかかげる以下の能力を身に付けた者に学士(工学)の学位を授与する。

  1. 専門分野を習得するための基礎学力、ならびに幅広い学問に接することで育成される幅広い視野、豊かな人間性、高い教養を有する。(高い教育と広い視野)
  2. 科学技術分野に対する様々な広い見識を養うための自然科学、数学、情報科学などの広範な基礎知識を修得し、それらを問題解決に応用することができる。(自然科学の基礎知識)
  3. 国際社会において技術的な情報を受信・発信することができる。(語学的コミュニケーション能力)
  4. 電子工学および関連する物理学の基礎・専門知識を修得し、それらを問題解決や未知領域の開拓に応用することができる。(電子物理工学の基礎・専門知識)
  5. 自主的に課題を見つけ、修得した科学・技術の知識と情報を利用し、問題点の把握、グループワーク、発表と討論などを通じて、計画的に学習・研究を進めることによって解決を図る総合的能力を有する。(科学技術的コミュニケーション能力、課題遂行能力)
  6. 社会に対して知識や技術を応用する専門家としての倫理観を備え、実務上の工学的課題と専門知識の関わりを理解できる。(技術者倫理、実務技術)
  7. 必ずしも解が一つでない課題に対して、種々の学問・技術を利用して実現可能な解を見出すために、自主的に達成の道筋を設定し、計画的に複数の学問・技術を総合応用して課題を達成できる。(デザイン能力)

 

カリキュラム・ポリシー

  1. 専門分野を習得するための基礎学力の養成および、幅広い学問から高い教養と広い視野を身につけるために、初年次教育科目、情報リテラシー科目、総合教養科目、健康・スポーツ科学科目を提供する。(高い教養と広い視野)
  2. 自然科学や数学の知識を広く一般的に得るために、基礎教育科目(線形代数、解析学、応用数学、基礎物理学など)を提供する。(自然科学の基礎知識)
  3. 国際社会において通用する語学力と表現能力を身につけるために、外国語科目(英語、初修外国語)及び電子物理工学英語演習(4年次)を提供する。 (語学的コミュニケーション能力)
  4. 電子物理工学の専門知識を習得するために、専門教育科目を提供する。(電子物理工学の基礎・専門知識)
  5. 基本的物理現象の理解・実験装置や器具の扱い方・実験結果の整理と評価法等を習得する。グループワーク、課題における問題点の把握、実験結果の討論、技術レポートの作成等、実験的課題を計画的に遂行するための総合力の基礎を養う。(科学技術的コミュニケーション能力、課題遂行能力)
  6. 実務上の工学的課題と電子物理工学の繋がりに対する理解を深めるために、科学技術に関わる専門職としての立場や責任、取るべき姿勢についての講義である工学倫理(3年次前期)、環境倫理(3年次後期)、エンジニアのためのキャリアデザイン/経営論(3年次前期)、最新のトピックに触れるための工学部インターンシップ(3年次通期)、エンジニアのための経済学(3年次後期)、特殊講義(4年次前期)科目を提供する。(技術者倫理、実務技術)
  7. 電子物理工学分野の未解決の課題に対して、複数の学問・技術を総合応用して解を見つけ出すデザイン能力を養成するために、電子物性コースで電子物理工学卒業研究A(電子物性)(4年次前期)と電子物理工学卒業研究B(電子物性)(4年次後期)を、電子材料コースで電子物理工学卒業研究A(電子材料)(4年次前期)と電子物理工学卒業研究B(電子材料)(4年次後期)を、それぞれ提供する。3年次前後期で各コースにおいて提供される電子物理工学実験1、電子物理工学実験2は、卒業研究を遂行するための基礎能力を養う科目として位置付けられる。卒業研究にあたっては、さらに深く電子物理工学の専門知識を追求するとともに、実験的・理論的技法も磨き、自身で主体的に新しいテーマに関する研究に取り組みつつ、指導教員や大学院学生との議論を重ねながら課題を遂行していく総合的能力を養う。(デザイン能力)

各科目の学修成果は、定期試験、中間試験、レポート、発表等の平常点等で評価することとし、その評価方法の詳細については、授業内容の詳細とあわせてシラバスに記載する。