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2025年11月12日

  • 活動報告

🛳️ 挑戦の航路 Vol.3 ― 未来を紡ぐ航海 日本から世界へ、そして次の挑戦へ

1. 世界に挑んだあとに、見えた景色

 

世界に挑んだあとに見えた景色 1

 

北欧ノルウェー・トロンハイム。
ここは、世界でも有数の自律運航船技術の集積地
「世界初の自律船実験海域」と呼ばれるトロンハイム・フィヨルドを有し、国家主導で産学官が連携する“海洋イノベーション国家”として知られています。

 

そんな地で開催される「Njord Challenge(ニョルド・チャレンジ)」は、世界各国の学生が自律船技術を競う最高峰の大会です。
日本から初めて出場した学生チーム「GEMBU」は、その舞台に立ち、26チーム中9位という快挙を成し遂げました。

 

「本番は思うように動かせませんでした。でも、世界の海に船を浮かべられたこと自体が、次につながる一歩です。」
(大阪公立大学・田邊優希さん)

 

2. 海外との“現実”――支援に支えられた航海と、距離のハンデ

 

海外との現実 3 海外との現実2 1

 

世界大会に挑む上で、最初に立ちはだかったのは「距離」でした。
ノルウェーまでの渡航には往復約40万円、加えて機材輸送費。日本チームにとって決して小さくない壁となります。

 

しかし、ここで支えとなったのが多くの企業・団体からの協賛支援でした。
旅費や宿泊費、機材運搬の一部をカバーしてもらえたことで、学生たちは安心して“世界挑戦”のスタートラインに立つことができました。

 

それでも、海外のチームとの資金格差は大きく、他国ではスポンサー企業が多く、150万円級のLiDARや複数基の高性能GNSSを備えるチームも多くいました。
「日本は距離の面でどうしてもコストがかかる。でも、その分“工夫で勝つ”という誇りを持って挑みました」と吉岡さんは語ります。

 

実際、学生主体の活動でこれだけの規模を実現できたのは、国内の支援ネットワークと、何よりも彼ら自身の努力と情熱があったからに他なりません。

 

3. 協賛の力――支え合うことで、技術は前に進む

 

協賛の力 1

 

「支援してくれた方々がいなければ、この船は海に浮かんでいませんでした。」
東京大学の田口新風さんはそう言い切ります。

 

日本財団オーシャンイノベーションコンソーシアムの旅費支援、アルテアエンジニアリング株式会社やスマートナビゲーションシステム研究会など企業の技術協力、大学・研究室・家族の支援──
GEMBUの挑戦は、まさに「日本の力の結晶」そのものです。

 

SNSで応援の声を寄せた同世代の学生たち。
そのすべてが、彼らを海へと送り出す追い風になりました。

 

4. 日本の強み、それは“つくる力”

 

日本の強み 3 日本の強み2 1

 

豪華な装備を持つ海外勢の中で、GEMBUが見せたのは日本的な設計思想の美しさでした。

 

安全性を重視した電装設計、整理された配線、手作業で磨かれたFRP船体。
「機械を理解していること」「理由を説明できること」──
それが、日本の学生が持つ最大の武器となります。

 

「既製品に頼らず、全部自分たちで設計した。その分トラブルが起きても“中身を理解している安心感”がありました。」
 (吉岡舜さん)

 

5. 次なる航海 ― 2026年、再び世界へ

 

2026年夏、ノルウェーで再び行われるNjord Challenge。
GEMBUは今、AI制御を導入した次世代モデルの開発に取り組んでいます。
カメラの露出制御や通信安定化を改良し、「完全自律航行での完走」を目指します。

 

「海は、まだデータが少ない分野。AIを育てるには最高の環境なんです。」
(田邊さん)

 

また、新メンバーや協賛企業も随時募集しています。
「文理問わず、“世界の海に挑む”意志があれば誰でも歓迎です」と田口さんは笑います。

 

差し替え画像② メンバー募集PR 1

 

6. 謝辞 ― 未来の航海者たちへ

 

GEMBUチーム一同より。

 

「この挑戦は、私たちだけのものではありません。支えてくださった全ての方々、企業、大学、家族、仲間に感謝します。
そして、海を目指す次の世代へ――あなたの船も、きっとこの海を渡れます。」

 

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編集後記(学科広報部)

 

取材を通して、彼らの「限界を超える努力」を目の当たりにしました。 大会直前、ほとんど寝ずに船体の調整を続け、 現地では試験・修正・再挑戦を繰り返されていました。その姿は、単なる学生の挑戦ではなく──国を背負う技術者の姿です。

 

この取り組みは、自分たちのスキルアップや力試しのためではありません。 “日本の海洋技術を世界に示す”という使命感が根底にあると感じました。 研究や授業で多忙な中、課外活動としてこれほどのレベルの挑戦を続ける姿勢に、 心から感銘を受けました。

 

彼らが目指しているのは、「勝つこと」ではなく「未来を創ること」。 その信念に胸を打たれ、ぜひ来年度もこの挑戦を続けてほしいと願います。 そして、この活動がもっと多くの人に知られ、日本の若者たちが「海」で再び夢を見られる社会になることを心から期待しています。