バイオエコノミー研究所

設置目的

21世紀の循環型社会を駆動する「バイオエコノミー」を担う人材の育成、教育・研究フィールドを中心とした産学官連携モデルの実証研究、社会への情報発信などを、多分野の融合によって実現するための農学教育の拠点を形成する。本研究所を設立し、全国の農学系大学に先駆けて、「バイオエコノミー」に関わる教育カリキュラムを実行する。

農学の最先端研究成果と教育効果が「バイオエコノミー」の駆動力である。しかしながら現状では、21世紀の循環型社会を成功に導くために、農学と農学部附属農場が果たすべき役割は明確に認識されていない実情がある。

「バイオエコノミー」とは、生命科学とデータサイエンスの融合・協奏がもたらす技術革新によって、天然資源枯渇、気候変動、少子高齢化、食料安全保障など、人類が直面する地球規模の諸問題を解決し、持続的な発展を可能にする概念であり、第5次産業革命とも言われる社会構造改革の原動力である。その影響範囲は工業分野、農業分野、エネルギー・環境分野、健康・医療分野など広範囲の産業活動に及ぶ。「バイオエコノミー」は、“化石資源に依存しない持続型の社会システム”であり、そのアウトプットは2030アジェンダ(SDGs)のほぼ全ての項目を網羅している。

2030年には、「バイオエコノミー」によって駆動される産業規模が、全GDPの2.7%(約200兆円、OECD加盟国)規模に成長するとの試算があり、米国では170万人の雇用創出が予測されている。EUのHORIZON2020プログラムの予算総額は786億ユーロにもなり、バイオエコノミー教育は就学年齢に達した子供に対しても開始されている。一方、日本国内のバイオエコノミーに関する認知レベルは極めて低く、欧米と比較するならば周回遅れとも言える状況にある。近年、ようやく内閣府や産業競争力懇談会などの積極的な関与が始まった。

今、バイオエコノミーに関わる分野横断的な人材育成を進めるための教育システムを整備することによって、次世代の農学教育の発信拠点を形成する絶好の機会が訪れている。

研究内容の概要

本研究所は以下の3分野を中心的な活動の場とする。生命環境科学域の応用生命科学専攻と緑地環境科学専攻の教員が中心となって、工学域、現代システム科学域の協力のもとに、学際的な農学系の教育・研究の新たな方向性を導き出す。これらの取り組みを統合し、伝統的農業と、ICTやAIなどを駆使する“次世代農業”の融合によって、新たな農業形態(家族農業)の実現に貢献する(家族農業の10年、2019年から2028年:国連で採択)。

スマート農業(脱炭素社会における都市型農業生産)

応用生命科学専攻と緑地環境科学専攻で実施中の植物のゲノム育種、有用形質のデジタル化とビッグデータ取得、メタン発酵による廃棄物有効利用などを課題とする。

  • 作物生産に関わるビッグデータ(気象条件、土壌、作物生育量、遺伝子発現、物質産生量、病害発生予測など)の網羅的解析を前提とした教育研究フィールドの研究推進
  • バイオマスを利用した再生可能エネルギー生産
  • 再生可能エネルギー生産のためのバイオマスの生産と供給、バイオガス発電などの実証モデル
  • 再生可能エネルギー生産と利用による生産物のブランド化(付加価値付与)

スマートセルインダストリー(化学産業プロセスからの脱却)

バイオエコノミーの重要な要素技術の一つは、化石資源と有機合成に依存せず、医薬品やバイオプラスチックなどの工業原料を生産することにある。これらの取り組みの多くは、すでに生命環境科学域で実施中である。応用生命科学専攻が専門とする植物・微生物を用いた有用物質生産研究が基盤となる。

  • 生命情報ビッグデータの取得と解析、重要遺伝子の特定、細胞機能設計
  • 合成生物学による新規の細胞・組織の開発、新品種育種
  • ゲノム編集などを用いた次世代型の植物機能改変

食料分野(食品安全性研究)

遺伝子組換え・ゲノム編集の社会受容など(応用生命科学専攻)

  • 生物情報ビッグデータ取得を元にした安全性評価の実施
  • 生産物の精密科学分析によるブランド化(付加価値の付与)
  • 学会活動、シンポジウム開催、出前講義による食品安全性や遺伝子改変作物の解説

構成員

所長

横井 修司(農学研究科 教授)

研究員

区分 教授 准教授 講師
農学研究科

太田 大策
川口 剛司
小泉 望
阪本 龍司
横井 修司

望月 知史
山口 夕
遠藤 良輔
工学研究科 福田 弘和 -

金田 さやか

客員研究員

機関 役職 氏名
株式会社Monjude 取締役 中村 順

設立年月日

2019年10月1日

研究所サイト

バイオエコノミー研究所 Webサイト

バイオエコノミー研究所が独自に運営するページです。

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SDGsへの貢献

sdgs25

大阪公立大学は研究・教育活動を通じてSDGs17(持続可能な開発目標)の達成に貢献をしています。

本研究センターはSDGs17のうち、「2:飢餓をゼロに」、「3:すべての人に健康と福祉を」、「4:質の高い教育をみんなに」、「7:エネルギーをみんなに そしてクリーンに」、「8:働きがいも経済成長も」、「9:産業と技術革新の基盤をつくろう」、「11:住み続けられるまちづくりを」、「12:つくる責任 つかう責任」、「13:気候変動に具体的な対策を」、「14:海の豊かさを守ろう」、「15:陸の豊かさも守ろう」に貢献しています。

お問い合わせ

農学研究科

教授 横井 修司

Tel 072-254-9701 Tel 6473(内線)
Eメール shyokoi[at]omu.ac.jp [at]の部分を@と変えてください。