複雑系科学研究所
設置目的
細胞が集合して組織や臓器になった時に細胞の性質のみでは説明できない機能を持つように、個が集合体となって起こす行動(運動・機能など)が個の性質では説明できない事象が自然界で観察される。このような事象を複雑系と呼び、複雑系の動作原理を究明する学問が複雑系科学である。
複雑系科学には数学・物理学・化学・生物学などの学問の垣根を超えた『総合知』を必要とする。本研究所は、医学・理学・工学などの横断的連携によって自然界に存在する複雑系の動作原理を究明し、特に複雑系が階層的に絡み合う生命システムの普遍性を解明する事で医療技術の進歩へ貢献する事を目的として設置される(下図)。
また、本研究所は、高校、大学、企業との縦断的連携による研究者育成をする場としても活動し日本の基礎科学力の向上に貢献する。
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研究内容の概要
本研究所は、生命システムの根幹である細胞生理に着目して、まず細胞生理における水の複雑系を解明する事を目指す。水は、細胞成分の60~70%を占める最も多い分子であり、蛋白質等の物質と水素結合している水(結合水)と水素結合していない水(自由水)で存在する。細胞生理は主に蛋白質の機能である事を考慮すると、蛋白質ならびに結合水、自由水の関連性を理解することは細胞生理の解明につながる。
そこで、本研究所では、「理論化学部門」ならびに「物質科学部門」、「細胞生体部門」を形成し、結合水と自由水、そして蛋白質から生まれる複雑性および秩序性に着目して各部門で解析し、それらを統合させることにより細胞生理を駆動する生命システムに関する研究を行う(下図)。
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- 「理論化学部門」
細胞生理は蛋白質の機能が基軸となる。蛋白質は、結合水で覆われた殻(水和殻)で包まれ、水和殻を形成していない自由水の中で行動することにより機能を発揮すると想定される。蛋白質と結合水ついて詳細に研究がなされ、蛋白質の性質は主として構成アミノ酸の水分子に対する親和性(親水性)/排他性(疎水性)によって決定されることが広く知られている(Anfinsen原理)。一方、自由水についてはほとんど研究がなされていない。
自由水は、細胞質(cytoplasm)の主成分であり、細胞内の隅々まで行き渡っており、視点を変えると、語源に「行渡る」という意味を持つプラズマと類似する。プラズマは、「荷電粒子群と電磁場が相互作用する複合系であり、粒子の運動は電磁場を変化させ、電磁場の変化は粒子の運動にフィードバックされる。」と定義される。ここで、水流場を物質の性質 (親水性と疎水性)と熱勾配、プロトン勾配を駆動力として不規則的な水の運動から規則的な水の運動を引き起こす場と定義すると、「自由水は水分子群と水流場が相互作用する複合系であり、水の運動は水流場を変化させ、水流場の変化は水の運動にフィードバックされる。」という仮説が立てられる。
つまり、水和構造、温度、pHなどパラメーター変化から生じる規則的な水の運動が蛋白質の機能に影響するという仮説である。
本部門では、これらの仮説を検証し、分子動態シミュレーションモデルの構築を目指す。また、得られた成果を「物質科学部門」、「細胞生体部門」へ提供する。
- 「物質科学部門」
細胞生理は、蛋白質機能の発現、つまり蛋白質と物質の分子間相互作用から始まる。蛋白質と物質の分子間相互作用は物質(低分子、蛋白質、核酸など)との結合であり、前述したように蛋白質の周囲には結合水が水和殻を形成しているので、蛋白質機能の発現するためには蛋白質周囲に存在する結合水の除去が必要不可欠となる。この過程には温度やpH、電磁場などの水の運動と関わる物理化学的因子が重要と考えられるが、その詳細は分かっていない。
本部門では、蛋白質の構造ならびに分子間相互作用における温度やpH、電磁場などの影響を検証し、蛋白質の構造ならびに分子間相互作用における水素結合(結合水)の意義から、水の複雑系に関わる因子の特定を目指す。
また、得られた成果を「物質科学部門」へフィードバックし、「細胞生体部門」へ提供する。
- 「細胞生体部門」
細胞生理は、情報の吸収 (貪食・飲食作用やホルモン応答など)、情報の変換 (転写・翻訳やエネルギー代謝など)、情報の発散 (代謝物の排泄やホルモン分泌など)に大別される。
本部門では、情報の吸収・変換・発散における温度やpH、電磁場などの影響を検証すると共に、老化や疾患との関連性の解明を目指す。
また、「物質科学部門」、「細胞生体部門」へフィードバックする。
構成員
研究所長
松原 勤(医学研究科 准教授)
研究員
| 所属/区分 | 教授 | 准教授 | 助教 |
|---|---|---|---|
| 医学研究科 | ー |
松原 勤 |
湯浅 秀人 |
| 理学研究科 | 中瀬 生彦 細川 千絵 |
ー |
ー |
|
工学研究科 |
ー |
中西 猛 |
ー |
| 獣医学研究科 | ー |
松原 三佐子 |
ー |
| 農学研究科 | ー |
望月 知史 |
ー |
設立年月日
2026年(令和8年)4月1日
SDGsへの貢献
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大阪公立大学は研究・教育活動を通じてSDGs17(持続可能な開発目標)の達成に貢献をしています。
本研究センターはSDGs17のうち、「3:すべての人に健康と福祉を」、「4:質の高い教育をみんなに」
に貢献しています。
お問い合わせ
医学研究科・准教授 松原 勤
Tel: 06-6645-3701
Eメール: matsu335[at]omu.ac.jp
[at]の部分を@と変えてください。