養殖場高度化推進研究センター
設置目的
農業や畜産業や酪農業では従来の機械技術に加え、IoT技術やICT技術が組み合わせられ、それらの技術普及が進みつつある。そして、これは第1次産業に従事する方々の労働軽減や若い方々の参入に一つの弾みをつけている。その一方で、水産業、特に養殖業では機械化・自動化・情報化がある程度可能であるにも関わらず、必ずしも十分には普及していないのが現状ではないかと思う。
例えば養殖場の一例としてカキ養殖などが挙げられるが、育てられた水質が非常に重要なカキの養殖場においては、これまでブイによる定点水質観測や人手による水質計測が行われてきた。しかし、夏場の水質の日周期的な変動や、養殖場内の細かな水質の変化等を計測するにはコストがかかりすぎるため、十二分な計測をすることが出来なかった。このような背景から、本研究センター研究員等はカキの養殖場において、独自の自動航行船を研究開発し、これによる高密度かつ高頻度の水質計測を行う技術を確立しつつある。そして、この技術に定点観測ブイ、海洋シミュレーションを組み合わせ、数km×数kmという広大な養殖場内での水質情報を明らかにし漁業者の方や自治体の関係者に提供する研究プロジェクトを実施している。これは総務省からの委託を受けた事業(SCOPE事業、2018年1月~2019年3月)である。
有給餌養殖、無給餌養殖問わず、養殖業は機械化、自動化、情報化をまだまだ押し進めることが可能な分野であると考える。そして、工学・水産学・環境学に通じる研究者、技術者が十分に議論を進めることにより更なる発展が望める。そこで、本研究センターでは、養殖場の機械化、自動化、情報化についての研究を行うことを目的とし、専攻を横断する立場の研究者が本研究センターに参画し、養殖場の省力化等、将来の姿について考える。
研究内容の概要
本研究センターに参画する研究員等は、自動航行船を研究開発し、カキ養殖場にこれを導入し始めている。養殖場での活動は、航行という基本的な機能だけではなく、洋上という外乱がある中であっても作業場所といった定められた位置を保持しなくてはならない場合がある。この自動航行船は四胴船、かつ各胴が回頭できるという極めて独特な形状を有しており、これにより容易な定点保持を可能としている。我々はこの船を「ロボセン」と名付けているが、本研究センターでは、このロボセンの高機能化について研究する。また、養殖分野でのロボセンのさらなる適用事例についても研究を行う。
各地域によっては、養殖場の機械化、自動化、情報化等に向けて動き出し始めている。自動航行船の利用の他、低コスト水質センサーの導入、高機能ブイの開発、水質等の情報化サービス網の構築、水中の画像解析による魚体の把握、大規模沖合養殖の導入等々、様々な先端的事例がある。この他にも、本研究センターに参画する研究員により漁業と魚食がもたらす魚庭(なにわ)の海の再生プロジェクト等も実施されている。本研究センターでは、こうした先端的事例についての事例研究を行う。尚、事例研究においては、研究センターは研究センターコンソーシアムとの連携を図る。研究センターコンソーシアムは、自治体、漁業関係者、学識経験者、企業からの会員を募り、この中で先端的な取り組み事例についての知見や知識を共有する。
本研究センターは養殖場における機械化・自動化・情報化をめざすことから工学・水産学・海洋物理学・海洋環境学といった横断的取り組みとする必要がある。このことから、工学分野では、大阪公立大学、水産学分野では、石川県水産総合センター、海洋物理学、海洋環境学分野では、国立環境研究所ならびに大阪公立大学の研究者が本研究センターに参画する。
構成員
センター長
二瓶 泰範(工学研究科 准教授)
研究員
区分 | 教授 | 准教授 |
---|---|---|
工学研究科 | - | 二瓶 泰範 原 尚之 |
情報学研究科 | - | 佐賀 亮介 |
現代システム科学研究科 | 大塚 耕司 | 黒田 桂菜 |
客員研究員
機関 | 役職 | 氏名 |
---|---|---|
石川県農林水産部水産課 | 技師 | 原田 浩太朗 |
国立環境研究所 地域環境教育センター | 主任研究員 | 中田 聡史 |
任意団体 能登の森里海研究会 | 会長 | 大慶 則之 |
北海道立総合研究機構 | 主査 | 栗林 貴範 |
広島県立総合技術研究所 西部工業技術センター 生産技術アカデミー |
主任研究員 | 友國 慶子 |
阪和興業㈱ |
- | 鈴木 佳奈 |
公立大学法人 福井県立大学海洋生物資源学部 |
教授 客員教授 |
佐藤 秀一 |
設立年月日
2019年4月1日
研究所サイト
養殖場高度化推進研究センター(CAINES) Webサイト
養殖場高度化推進研究センターが独自に運営するページです。
SDGsへの貢献
大阪公立大学は研究・教育活動を通じてSDGs17(持続可能な開発目標)の達成に貢献をしています。
本研究センターはSDGs17のうち、「11:住み続けられるまちづくりを」、「13:気候変動に具体的な対策を」、「14:海の豊かさを守ろう」、「17:パートナーシップで目標を達成しよう」に貢献しています。
お問い合わせ
工学研究科 二瓶 泰範
Tel 072-254-7446(代表) Tel 3367(内線)
Eメール nihei[at]omu.ac.jp [at]の部分を@と変えてください。