地域防災センター

設置目的

日本列島はプレートの収束境界に位置し、地震・火山噴火などの自然災害が頻発する。激しい造山運動のため居住に適するエリアが限定され、局地的災害で集中的な物的・人的損害が発生することも多い。国内屈指の人口密集地を擁する大阪平野では、過去20年間余り(すなわち甚大な損害を被った阪神・淡路大震災以降)に、地下情報の把握を目的として、国および地方自治体によって多くの人工地震探査が行われてきた。しかしながら、それらの貴重な情報の総合的解釈に立脚して、活断層など自然災害の原因となる地質構造のリスク評価が十分に進んでいるとは言い難い。探査衛星が提供する最先端のリモートセンシングデータ解析も、従来の通説を追認する段階にとどまっており、地域社会への災害ハザード情報提供は遅々として進まない。この現状を打破し自然災害に耐えうる都市圏を構築するために、いま強く求められているのは、継続的な地質状況および地盤特性の評価と、災害のバッファーとなる地域環境の構築である。さらに、自然災害に対する靭性ならびに復興へのポテンシャルを具備したコミュニティの構築および維持についても、それぞれの地域の特性を踏まえて、多面的な問題点の把握と提言を行う必要がある。

大阪公立大学は、「高度研究型大学―世界に翔く地域の信頼拠点―」を基本的理念として標榜し、地域社会のニーズに応える最先端の研究成果を数多く上げて来ている。たとえば、大阪および周辺地域の活断層評価に関する最新研究成果の多くは、本学の運営する学術情報リポジトリ(OPERA)に登録され、万人が無償で閲覧・ダウンロードすることができる。しかし、ともすれば個々の業績はその分野の専門家のみが情報を共有しており、総合的な評価が行われた事例は比較的少数にとどまっている。今回開設する地域防災センターは、この現状を打破して、学域や研究科の垣根を越えた分野横断型の研究を志向する。究極の目的は総合的研究の成果を地域社会に還元して、減災・防災への取り組みを推進支援することであるが、本学における学士教育カリキュラムとの連携を強化し、地域防災の牽引役となり得る有為な次世代リーダーの育成についても積極的に取り組むものである。

研究内容の概要

地域防災への三位一体の取り組み

コミュニティに応じた減災・復興の提言
  • 復興・防災まちづくりとジェンダーに関する研究
  • 被災者支援レジーム/復興まちづくりの国際的比較研究
地域を取巻く環境と災害への靭性評価
  • 都市防災と緑地計画との関わりについての研究
  • 農業施設のもつ多面的機能(ため池による洪水緩和など)に関する研究
地域の地盤特性と自然災害リスクの評価
  • 活断層研究・地質調査・火山災害予測
  • 地盤情報データベースの整備と情報公開
  1. 災害リスク認識は、起こり得る自然災害ポテンシャルを把握することによって可能となる。当センターの研究の土台となるのは、継続的なデータの解析に基づく地震や火山噴火等の地殻変動予測であり、その研究成果と連携した地域地盤情報データベースを整備・公開する。
  2. 災害への靭性を持つコミュニティ構築をめざし、都市圏のオープンスペースとしての緑地計画に関する提言や、被害緩和機能を持つ農地(および、ため池等の農業施設)整備状況の分析・評価など、地域を取り巻く環境のあるべき姿に関する研究を推進する。
  3. 避け得ない天災のダメージを緩和し、復興へのポテンシャルを高めるためには、地域社会特性の研究に立脚し、「災害時要援護者」支援ネットワークを如何に構築するかが極めて重要である。そのため、社会福祉協議会等と連携しセミナーを企画・実施する。

構成員

センター長

伊藤 康人(現代システム科学研究科 教授)

研究員

区分 教授
現代システム科学研究科 伊藤 康人
農学研究科 堀野 治彦
加我 宏之
木全 卓
理学研究科 三浦 大助

客員研究員

機関 役職 氏名
株式会社地球科学総合研究所 エグゼクティブアドバイザー 河合 展夫
- - 前川 寛和
京都大学理学研究科地球熱学研究施設 教授 楠本 成寿
- - 山地 久美子
城西大学現代政策学部 社会経済システム学科  助教 飯塚 智規
北海道教育大学旭川校 准教授 佐藤 鋭一

設立年月日

2019年(平成31年)1月1日

SDGsへの貢献

sdgs22

大阪公立大学は研究・教育活動を通じてSDGs17(持続可能な開発目標)の達成に貢献をしています。

本研究センターはSDGs17のうち、「11:住み続けられるまちづくりを」に貢献しています。

お問い合わせ

現代システム科学研究科 教授 伊藤 康人

Eメール yasuto.itoh[at]omu.ac.jp  [at] の部分は@に差し替えてください