超硫黄レドックス生命科学研究所

設置目的

生命活動において硫黄は不可欠な元素であり、特に生体内の酸化還元反応やエネルギー代謝において重要な役割を果たしている。近年、分子内に硫黄原子が直鎖状に連結した構造を持つ“超硫黄分子”が生体内で酵素的に産生されることが明らかとなった。超硫黄分子は、さまざまな生理機能に深く関与していることが明らかになっており、さらに従来の教科書に記載されていないような新たな知見が次々に解明されている。超硫黄分子はその不安定性ゆえに詳細な解析が困難であり、その特性や機能の解明には高度な研究基盤が求められる。

本研究所の設置目的は、超硫黄分子の合成・分析・機能解明を通じて、基礎化学および基礎生物学の知見を蓄積し、新たな生理活性物質の探索を行うことにより、医学、獣医学、創薬、食品、環境分野への応用可能性を探求することである。さらに、超硫黄分子を基盤とした新規医薬品の開発、治療・予防法の確立、機能性食品の開発など、実用化を目指す。これにより、各分野における新技術の創出を促進し、健康長寿社会の実現や持続可能な資源利用に貢献する。

redox

研究内容の概要

  1. 超硫黄分子の合成と構造解析
    超硫黄分子の化学的特性を明らかにするため、安定化技術の開発と精密合成法の確立を行う。新たな超硫黄分子の探索とともに、質量分析、核磁気共鳴、ラマン分光解析、X線構造解析を用いた詳細な分子構造の解明を進める。
  2. 超硫黄分子の動態解析
    超硫黄分子の生体内における存在様式を定量的かつ網羅的に解析するためのオミックス解析技術を開発し、動物、植物、微生物、ヒト臨床検体における超硫黄分子の動態解析を行う。

  3. 超硫黄分子の生理機能の解明

    超硫黄分子が生体内で果たす役割を明らかにするため、細胞、組織、動物・植物個体レベルでの作用メカニズムの解析を行う。特に、抗酸化作用、シグナル伝達、タンパク質修飾への関与について、オミックス技術を活用して総合的に評価する。

  4. 食品、疾病予防・治療への応用研究

    超硫黄分子の生理機能を活かした機能性食品の開発、疾患予防・治療法の開発を目指し、バイオマーカー探索や創薬応用研究を推進する。特に、神経変性疾患、がん、炎症性疾患への応用可能性を探る。

  5. 環境・エネルギー分野への応用

    超硫黄分子が持つ特異的な化学特性を利用し、新たな環境浄化技術やエネルギー変換技術の開発を行う。特に、硫黄を用いた触媒技術やバイオ燃料の高効率生成への応用研究を進める。

本研究所の活動を通じて、超硫黄分子研究の学術的発展を促進するとともに、医療・環境・エネルギー分野への応用を推進し、社会への貢献を果たしていく。

構成員

研究所長

居原 秀(理学研究科 教授)

研究員

区分 教授 准教授
理学研究科 加藤 裕教 笠松 真吾
農学研究科 山地 亮一

獣医学研究科 東 泰孝 西山 和宏
医学研究科 大谷 直子

客員研究員

機関 役職 氏名
東北大学大学院医学系研究科 卓越教授 赤池 孝章
東北大学大学院医学系研究科 教授 本橋 ほづみ
熊本大学大学院生命科学研究部 教授 澤 智裕
東北大学大学院医学系研究科
大阪公立大学研究推進機構
特任教授
客員教授
井田 智章

設立年月日

2025年(令和7年)4月1日

SDGsへの貢献

SDGs239

大阪公立大学は研究・教育活動を通じてSDGs17(持続可能な開発目標)の達成に貢献をしています。

本研究センターはSDGs17のうち、「2:飢餓をゼロに」、「3:すべての人に健康と福祉を」、「9:産業と技術革新の基盤をつくろう」に貢献しています。

お問い合わせ

理学研究科 教授 居原 秀

Tel: 072-254-9753 Tel :4099(内線)

Eメール: iharah [at]omu.ac.jp

[at]の部分を@と変えてください。