微生物制御研究センター
設置目的
自然界には人類にとって有用な微生物もあれば有害な微生物、無益無害な微生物が生息しており、バイオテクノロジーの分野では有用なものの利用面が注目されがちである。しかし、国際的に多発する大災害やテロなど一般社会やグローバル次元の問題だけでなく頻発する医療・食品・工業製品・建築物の不正やヒューマンエラーの問題についても広く安全への認識が高まってきている。
有害微生物が関わる産業や日常社会においても、薬剤耐性菌や強い感染力をもつウィルスの蔓延、汚染微生物による食中毒や食品腐敗、高松塚古墳壁画など文化財のカビなどによる被害、金属やコンクリートなど工業製品や建築構造物の生物劣化が原因となる事故など、それらの制御・抑制が21世紀の人類が抱える重い課題として、そのリスクを極力低減化させる対策が急務であることが強く意識されている。
現在有害微生物の制御対策が必要とされる分野は、医療、医薬、食品、諸原料・工業材料、一般生産・製造環境、家庭環境、建築物、文化遺産・文化財、生物兵器によるテロ対策、宇宙事業など極めて広範囲にわたる(図1参照)。
図1 有害微生物の制御が必要な分野
有害微生物の制御対策として適用される滅菌・殺菌・抗菌・消毒・除菌などに関する技術とシステムの進歩は近年著しいものがあるが、それでも多くの汚染や被害の事故例が頻発し、生産・製造における経済的損失やそれに付随的に発生する健康被害や環境悪化、ときには人命に関わるケースもあって深刻化している。
21世紀でのこれらの分野での微生物学的な安全性の深化・追求のためには、微生物の特性や機能を理解するための基礎学術研究の進展による制御対策基盤の確立とともに、それに基づいたより信頼性の高い微生物制御技術の高度化・装置開発・インテリジェント化制御システムの構築と制御効果を適正に評価できる検査システムの高度化が重要である。
微生物学的安全性保証への努力は、一般の多種多様な業界・企業で実行されているが、それを基盤的にサポートする学理体系の構築を目指す学術分野での研究体制については、医療・食品関係で特定の政府研究機関が担っているものの、生産・製造領域や諸環境保全分野ではほとんど見当たらない。
このような背景をもとに、本研究センターは、生産・製造と諸環境を主要対象とした微生物学的安全性に関わる学内の関連分野の専門研究者を結集し、学内外の連携による英知と情報の相互交流を深め、微生物制御のインテリジェント化による基盤形成とそれに基づく新規技術の開発とその高度化を企図する。またその先導的な活動によって、生産・製造業界および地球環境社会における微生物学的安全性の確立に貢献することを使命とし、個の使命を達成することを本研究センターの設置目的とする。図2に設置概念を示す。
図2 本研究センター設置の理念と目的
研究内容の概要
本研究センターでは、上記の目的に基づいて活動し、そのミッションを果たすため、
(1)制御基礎・解析研究部門
(2)制御技術・検査研究部門
(3)制御情報・管理研究部門
の3つの研究部門を設置する(別に運営部門を置く)。
制御対象物・場は図1に記載の通り、医療、食品、諸材料、諸環境を主とする。また対象とする制御法は、加熱法、放射線照射法、薬剤処理法、生物学的方法などとし、また標的微生物は、細菌の栄養細胞と芽胞、真菌のカビと酵母である。
図3 本研究センターの組織図と対象制御法
研究内容は次項の役割分担に連動するが、各研究部門について次の通りである。
- 制御基礎・解析研究部門
微生物制御の原理を追究し理論基盤の形成と制御機構の解析によってその解明をめざす。 - 制御技術・検査研究部門
微生物制御のための技術や装置の開発、検査システムの高度化・インテリジェント化とともに滅菌技術とバリデーションシステムの高度化を担当する。 - 制御情報・管理研究部門
微生物制御に関する諸情報の収集・データベース化および国内的・国際的次元での微生物衛生管理システムの高度化と普及のための研究を担当する。
微生物制御研究センター 講演会
開催日 | 形態 | タイトル | 会場 | 詳細 |
---|---|---|---|---|
2023年11月2日 | 共催 |
微生物制御研究センターシンポジウム2023 「生活環境とカビ管理対策セミナー」 |
大阪公立大学 I-Site なんば | 詳細 |
2023年6月22日 |
共催 |
損傷菌セミナー2023 |
エル・おおさか(大阪府立労働センター) | 詳細 |
2022年11月4日 | 共催 | 微生物制御研究センターシンポジウム2022共催 「生活環境とカビ管理対策セミナー」 |
大阪公立大学 I-Siteなんば | 詳細 |
2021年12月3日 | 共催 | 微生物制御研究センターシンポジウム2021共催 「生活環境とカビ管理対策セミナー」 |
大阪府立大学 I-Siteなんば | 詳細 |
2020年6月5日 | 主催 | 損傷菌セミナー2020・大阪府立大学微生物制御研究センターシンポジウム2020「微生物胞子の損傷・殺菌とその制御・評価・予測」 | 大阪府立大学 I-Siteなんば | ※新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響で開催中止 |
2019年8月28日 | 主催 | 食品安全科学研究センター・微生物制御研究センター合同シンポジウム「食品の微生物的な安全性と制御法の先端的研究」 (微生物制御研究センターシンポジウム2019) |
大阪府立大学 I-Siteなんば | 詳細 |
2019年6月28日 | 共催 | 損傷菌セミナー2019 日本防菌防黴学会・女性研究者の会 第18回学術講演会 |
女子栄養大学 駒込キャンパス 香川綾記念生涯学習センター(東京都豊島区) | 詳細 |
2018年9月7日 | 共催 | 微生物制御研究センターシンポジウム2018共催「関西カビ制御セミナー ―生活環境のカビ:検査と制御の基本―」 | 大阪府立大学 I-Siteなんば | 詳細 |
2018年6月19日 | 共催 | 損傷菌セミナー2018「異分野多面的視点から考える損傷菌問題」 | 豊洲シビックセンター (東京都江東区) |
詳細 |
2017年7月31日 | 主催 | 微生物制御研究センターシンポジウム2017「微生物の機能活用・集団・生存における制御」 | 大阪府立大学学術交流会館 (中百舌鳥キャンパス) |
詳細 |
2017年6月13日 | 共催 | 損傷菌セミナー2017「食品の環境ストレスによって発生する損傷菌とその意義」(損傷菌研究会主催) | 豊洲シビックセンター (東京都江東区) |
詳細 |
2016年7月22日 | 共催 | 損傷菌セミナー2016「食品関連分野における損傷菌とその対策」(損傷菌研究会主催) | 大阪府立大学学術交流会館 (中百舌鳥キャンパス) |
詳細 |
2016年6月17日 | 主催 | 開設記念シンポジウム「微生物制御の新しい潮流」 | 大阪府立大学 I-Siteなんば | 詳細 |
構成員
センター長
朝田 良子 (工学研究科 准教授)
研究員
区分 | 教授 | 准教授 | 助教 | 特任研究員 |
---|---|---|---|---|
工学研究科 | 松浦 寛人 |
川上 洋司 朝田 良子(微生物制御研究センター 運営幹事) |
– | – |
農学研究科 | – | 岸田 正夫 | – | – |
理学研究科 | 加藤 幹男 | – | – | – |
研究推進課 | – | – | – | VO CONG KHANH |
客員研究員
機関 | 役職 | 氏名 |
---|---|---|
食品安全科学研究センターで受入 | 客員教授 | 日佐 和夫 |
大阪府立大学 | 客員教授 | 土戸 哲明(微生物制御研究センター 運営顧問) |
関西大学 化学生命工学部 | 特任准教授 | 坂元 仁(微生物制御研究センター 運営幹事) |
日立造船株式会社 脱炭素化事業本部 計画部 | 理事 部長 |
福田 直晃 |
NPO法人カビ相談センター | 副理事長 | 久米田 裕子 |
パナソニック株式会社ライフソリューションズ社 | 参事 | 堀切 茂俊 |
大阪公立大学 工学研究科 | 客員研究員 | 古田 雅一 |
設立年月日
2016年(平成28年)3月1日
研究所サイト
微生物制御研究センターWebサイト
微生物制御研究センターが独自に運営するページです。
SDGsへの貢献
大阪公立大学は研究・教育活動を通じてSDGs17(持続可能な開発目標)の達成に貢献をしています。
本研究センターはSDGs17のうち、「2:飢餓をゼロに」、「3:すべての人に健康と福祉を」、「9:産業と技術革新の基盤をつくろう」に貢献しています。
お問い合わせ
工学研究科 准教授 朝田 良子
Eメール asada.ryoko[at]omu.ac.jp
[at]の部分は@に差し替えてください
運営事務局
Tel 072-254-9675(直通) Tel 3630(内線)