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微分作用素や差分作用素の可換族に対する同時固有函数の研究は, 広義の多変数超幾何函数の問題として, また可積分な1次元量子多体系の問題として, 現在も興味深い研究が進展している. 本講義では,対称函数の基本事項の解説から始めて, いわゆる Macdonald 多項式の理論の概要を紹介する. 多変数の q 直交多項式としての側面と, q 差分作用素の可換族の同時固有函数としての特徴付けを中心に, Macdonald 多項式のさまざまな著しい性質について紹介する. 講義を通じて,表現論と特殊函数の基礎的な事項も習得できるように配慮したい. 1日目:対称函数, 特に Schur 函数 2日目:Macdonald 多項式の定義と例 3日目:直交関係式,q 差分作用素の可換族 4日目:双対性, Pieri 公式, 核函数 5日目:アフィン Hecke 環と q Dunkl 作用素
カンドルという代数系とそのホモロジーの理論は、特に結び目の研究において、有益な結果をもたらしてきた。本講義では、カンドルの理論を初歩から解説し、この理論が結び目の研究にどう活かされてきたのかを紹介する。また、カンドルは対称性を記述する言語としても優れている。併催される談話会では、このことについても紹介する。
symplectic構造について、トピックを選んで入門的な解説を行う。 多様体のsymplectic構造は、局所的にはDarbouxの定理によって標準的なものと同じである。 一方で、その大域的な構造が明らかになってきたのは比較的最近のことである。 1985年のGromovの仕事以降、非線形解析の進歩や理論物理学からの影響も相俟って、 symplectic多様体の不変量は様々なものが構成されている。 本講義では、symplectic幾何の基礎事項とともに大域symplectic不変量の一つであるsymplectic容量、 特に、Hamilton系の周期解を用いて定義されるHofer-Zehnder容量(1990年)について解説する。 時間の関係で深い解析学の知識を使う部分は概説にとどめるが、 全体としてsymplectic構造に関する予備知識なしで理解できるようにお話ししたい。 最終日には、Hofer-Zehnder容量に関する(逆向きの)等周不等式であるViterbo予想と 凸幾何の古典的未解決問題であるMahler予想との関連など最近の話題についても紹介する。
代数体上のさまざまなモチーフやガロワ表現に対するL関数は整数論における興味の中心である。 本講義ではそのようなL関数のp進類似であるp進L関数について論じたい。 Dirichlet L関数のp進類似である久保田-Leopoldt p進L関数の発見の後に、 楕円曲線や楕円モジュラー形式をはじめとして幾らかの場合にもp進L関数が構成されているが、 高次元のモチーフでの構成例は未だ多くない。 また、高次元においてはモチーフがpでordinaryであるかそうでないかによって、 そのp進L関数に関係する状況は少し異なっていることにも注意したい。 本講義では、non-ordinaryな場合も込めて、 p進L関数が定義されるべきp進測度の空間の基本事項について なるべく多くの時間を割いて説明したい。 その上でp進L関数を構成するには具体的にどのような手続きやステップが必要なのか? p進L関数の存在予想はどのように定式化されているか? についてなるべく丁寧に説明したい。 また、講義の後半ではその一般論を理解するために、 特に楕円モジュラー形式のp進L関数の場合にAmice--VeluやVishikらによって構成された p進L関数のkey pointをしっかり確認したい。 より一般の場合の高次元のモチーフに対するp進L関数の構成の現状などについては、 講義の折々に講演者に理解する範囲で関連する問題点について触れていきたい。
非線形消散型波動方程式の初期値問題の時間大域解について講義する。 一般に非線形発展方程式の時間大域解の存在を示すとき、 解が有限時間で爆発しないことを保証するアプリオリ評価を得ることが重要となる。 本講義では、非線形消散型波動方程式に対してアプリオリ評価を示す手法として、 Fourier変換により線形問題の解の減衰評価を求め、 それを非線形問題に応用する Matsumura (1976) による減衰評価法と、 適当な重み関数を付けたエネルギーを考え、部分積分により エネルギーの有界性を示す Todorova--Yordanov (2001) によるエネルギー法 の2種類の方法を解説する。 時間が許せば、これらの手法の精密化や最近の進展についても紹介したい。
非線形シュレディンガー方程式の特殊解である定在波の安定性について講義する。 特に、基底状態の変分的特徴付けと線形化作用素の性質を用いた Weinstein 及び Grillakis-Shatah-Strauss による古典的な方法について、 必要となる解析学の基礎知識についても説明しながら、 なるべく丁寧に解説したい。
1日目:非線形シュレディンガー方程式の概説:対称性と保存則2日目:エネルギー汎関数の微分と線形化作用素3日目:基底状態の存在と変分的特徴付け4日目:制約条件付き最小化問題と線形化作用素の正値性5日目:Grillakis-Shatah-Strauss の方法による安定性の証明
イデアルのシンボリック冪は、ヒルベルトの第14問題との関係、クロネッカーの問題や Eisenbud-Mazur 予想との関係、組み合わせ論に関連したイデアルの研究など、可換環論の多方面から研究されている。シンボリック冪のリース環(シンボリックリース環)はネーター環になるとは限らないが、そのことがシンボリック冪の研究を困難にしている。シンボリックリース環は代数多様体の Cox 環あるいは多重切断環と一致することが多く(それは Demazure 構成によって説明できる)、したがってその有限生成性は双有理幾何にとっても非常に重要な問題になる。この講義では、主としてスペースモノミアル曲線の定義イデアルのシンボリックリース環の有限生成性を扱う。Z^n-次数付き環の"環の形の全容"を見るために、Z^n-次数付き環の GKZ-分解から始める。シンボリックリース環と多重切断環の関係を説明し、Huneke の判定法を一般化して述べ、その幾何学的意味を与える。それを用いながら、スペースモノミアル曲線の定義イデアルのシンボリックリース環の有限生成性に関して議論する。negative curve の存在性と永田予想の関係に関して述べ、r-nct(トーリック曲面の一点ブローアップの negative curve になりうるローラン多項式)を定義して、その性質を調べる。
5日間それぞれの内容:
一日目:イントロ、Gelfand-Kapranov-Zelevinsky 分解、一変数の Demazure 構成二日目:シンボリックリース環と多重切断環の関係、Huneke の判定法三日目:スペースモノミアル曲線のシンボリックリース環四日目:r-nct(トーリック曲面の一点ブローアップの negative curve になりうるローラン多項式)の定義と基本性質五日目:GKZ分解と双有理幾何との関係、多変数 Demazure 構成(講義の進行状況によっては、5日目の内容は割愛する可能性があります。)
連絡先:橋本光靖
多変数正則写像の力学系について基本的な事柄を講義する.特に次の話題について概説する.
(1) 正則写像の不動点.特に吸引不動点,放物型不動点の構造(2) Fatou-Bieberbach 領域の構成(3) 複素 H\'enon 写像の構造(4) (時間があれば)複素射影空間の正則写像の力学系
Hessenberg varieties are subvarieties of the flag variety with rich connections to algebraic geometry, combinatorics, and representation theory. They are important examples in combinatorial algebraic geometry, in the sense that much of their geometry and topology can be described in Lie-theoretic and combinatorial terms. Special cases of Hessenberg varieties include famous classes of varieties studied in other contexts, such as Springer fibers, Peterson varieties, and the permutohedral variety.
This lecture series will focus on one area within the study of Hessenberg varieties, namely, the symmetric group representation on the cohomology rings of regular semisimple Hessenberg varieties, as defined by Tymoczko, and the ensuing connection between Hessenberg varieties and the long-standing Stanley-Stembridge conjecture in combinatorics. Some related questions regarding the construction of explicit permutation bases will also be briefly discussed. The lectures will consist of three parts:
3次元球面内の結び目の分類や幾何的・代数的性質の探求が結び目理論の中心課題である. 結び目は2次元球面に横断的な2重点を持つように射影され,その射影図に交差の上下の情報を加えた結び目ダイアグラムとその同値変形であるライデマイスター移動を用いて議論されることが多い. 1996年にKauffmanが,結び目ダイアグラムの通常の交点に加え,仮想的な交点も許した仮想結び目ダイアグラムを考え,一般化されたライデマイスター移動による同値類を仮想結び目として定義した. その後,仮想結び目については多くの研究がなされている. 本講義では通常の結び目と仮想結び目の,特に組み合わせ的な議論に関しての,性質について入門的な話をする.
キーワード:FOX彩色,Jones多項式,局所変形
モジュラー形式や保型表現は、現代の整数論の研究において最も重要な道具の一つである。 一変数の正則モジュラー形式の理論で最も重要な結果は、Deligneによって証明された Ramanujan予想である。これは、モジュラー形式のFourier係数の評価であり、保型表現 の言葉ではGL(2)の正則カスプ保型表現の不分岐な局所因子の佐武パラメーターが全て絶対値 が1であるという主張になる。ところが、多変数の正則モジュラー形式では同じ主張は成り立たない。 これには、斎藤・黒川リフトやDuke-Imamoglu-Ibukiyama-Ikedaリフトといった反例が 具体的に構成されている。
Ramanujan予想にどれぐらいの反例があるかという問題については、今日ではArthurの 重複度公式という答えが得られているが、これは保型形式の存在性を主張する結果である。 一方で様々なリフトは構成法からFourier係数などの多くの情報が得られる。
この集中講義では、正則保型形式について説明した後、近年に池田・山名によって表現論を 用いて再構成されたDuke-Imamoglu-Ibukiyama-Ikedaリフトについて解説する。 また、それの応用として得られる宮脇リフトについても紹介したい。
3次元外部領域(剛体の障害物の外部)での非圧縮粘性流体の運動を 記述する Navier-Stokes 方程式の初期値問題の時間大域解の漸近挙動を、 定常解の漸近安定性との関連の中で考察する。定常解の周りでの線型化 方程式の初期値問題の解の Lq-Lr 減衰評価の導出が最も重要 で難しいステップとなるので、その解説が本講の中心部分となる。 前半では、まず Stokes半群の場合に、Stokes resolvent のスペクトル 解析を通して時間減衰評価を示す。後半では、障害物の並進速度と 回転角速度が時間により変動する場合に、 non-autonomous な線型化 作用素が生成する発展作用素の時間減衰評価を求める技法について 述べる。
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