院生・修了生の声 vol.2

渡邉 穂名美 さん
2018年度 (大阪府立大学)修士課程修了
1. この研究科に進学した動機を教えてください。
大阪府立大学の環境システム学類に入学したため、大学入学当初は幅広く環境、社会、心理について学んでいました。その中で、臨床心理学に出会い、目に見えない人のこころをさまざまな視点で理解しようとすることに興味を抱き、さらに深く学んで、心理学の専門性を活かした仕事に就きたいと思ったのが進学の動機です。
2. 研究の内容を教えてください。
大学院では『「部活動に引き寄せられる現象」についての臨床心理学的考察』をテーマに修士論文を執筆しました。内容としては、入部が自由であるはずの部活動になぜか受動的に入ってしまう現象に注目し、文献研究とインタビュー調査から、青年期の人々のこころの動きと部活動の存在意義を考えるといったものになります。その後、大学院修了後から現在まで、児童養護施設で心理療法担当職員として働いています。主な業務内容は心理療法の実施、コンサルテーション、関係機関との協議、児童の支援方針や施設運営を協議する会議への出席等です。何らかの事情で、家庭で生活できなくなり施設入所となった子どもたちは、それだけでも大きな出来事ですが、過去の逆境体験や将来への不安、今を生きる中で感じる行き詰まり等さまざまな心理的困難を抱えて生活しています。心理療法を実施する中で、遊びや言葉でのやりとりを通してそのような気持ちを表現し、ともに考え、整理することに取り組んでいます。そして、子どもたちの課題は何か、どう成長したか、成長がどこで停滞しているか、どう支援していくか等を、日々保育士や児童指導員といった他職種の職員とともに考えています。
3. 現代システム科学研究科に進学してよかったと思える点について教えてください。
充実した実習と指導体制がよかったと感じています。在学時は正直大変でしたが、今振り返ってみると、医療、福祉、教育の3領域の学外実習に行くことができ、学内実習ではさまざまな主訴、年齢の来談者の担当を数多く経験でき、大学院で鍛えられたおかげで今の自分があると感じています。現在の職に就くきっかけになったのも、1年間の児童養護施設での実習を通して子どもたちの成長や変化を目の当たりにし、今を懸命に生きている子どもたちに携わっていきたいと感じるようになったのが大きいです。院生が長くじっくり実習先にかかわれるのは、他にはない特徴だと思います。1学年5人前後の学生を5人の先生方で指導してくださるため、毎週の個別SV、論文指導で細やかな指導を受けられるのはありがたかったです。また、院生主体で心理臨床センターを運営するため、組織を運営するとはどういうことか身をもって経験できたのもよかったと感じています。組織の一員として働いていると、セラピストとしての専門業務だけでなく、さまざまな組織運営に関する業務を担う必要があります。できることは何でもする、組織全体のことを考えるという姿勢が身につけられたように思います。
4. ご自身の研究が社会にとってどのような意味をもつのか、またご自身の研究から広がる可能性について教えてください。
児童虐待は増加傾向にあり、私の働く施設でも入所児童の約8割が虐待を理由に入所しています。虐待の影響や発達障がいの特性を持った入所児童も増えており、ケアニーズの高い子どもたちが多く、退所後社会への適応が難しくて苦労する児童が多いため、子どもたちを適切にアセスメントしてケアすること、社会に繋いでいくことが求められています。児童養護施設で働く中で、子どもの最善の利益のために社会全体で子どもを育むという社会的養護の理念に基づき、子どもたちが安心安全を感じられ、強みを伸ばし、課題に向き合うことができる生活環境作りをさまざまな職種が連携して行うことが必要であり、心理士としてその役割の一端を心理的な視点から担っていると考えています。目の前で日々さまざまな問題が起こるため、施設の中では早急な解決を求める動きが生じることもありますが、問題の多くはすぐに解決できるものではありません。問題はネガティブな側面だけでなく時にチャンスであること、不確実なことに耐えること、目下の問題が解決すればいいのではなくじっくりかかわる必要があること等、大学院で体感したことを念頭に置いて施設の中で存在できればと考えています。
5. この研究科に進学しようとする学生に対して何かメッセージがあれば教えてください。
心理臨床家として活動していく土台作りをするための充実した環境が臨床心理学分野にはあります。自分と向き合い、人と向き合っていく覚悟が持てる場だと思います。しんどいことやつらいこともたくさんありましたが、先生方や先輩方との繋がりは密であり、支えられながら鍛えられました。