院生・修了生の声/周 小璇 さん

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周 小璇 さん

2023年度 博士前期課程修了

2024年度~ 博士後期課程2年

 

1. この研究科に進学した動機を教えてください。

学部時代、臨床心理士および公認心理師の資格取得を目指して心理実習に参加しました。そこで出会った方々は、日常生活の中で「異質」と見なされがちな存在でもあり、その出会いは、私にこれまで考えたことのなかった問いをもたらしました。臨床心理学を学び始めたばかりの段階ではありましたが、それまでの人生でうまく扱えなかったことや、疑問に感じながらも周囲から「考えなくてもよい」とされてきたことに丁寧に向き合い、考え続けていく営みがこの分野にはあると実感しました。こうした経験を通して、心のあり方や人の理解についてより深く学びたいと考え、本研究科への進学を志望しました。

 

2. 研究の内容を教えてください。

学部では「日常的な芸術創作体験がもたらす心理的効果」をテーマに研究を行いました。幼少期に芸術活動を行っていた人が、一度中断を経て再び創作に向き合った際、心がどのように動かされるのかを、インタビューとバウムテストを用いて意識的・無意識的側面から検討しました。
しかしこのテーマは、自分の中でも捉えきれない部分が多く、大学院に進学してからもどこかモヤモヤとした感覚が残り続けていました。そこで紀要執筆の機会に卒業論文を振り返り、理解が不十分だった点や言い切ってしまっていた部分を再検討しました。
修士論文では坂本龍一の自伝と晩年のアルバムを題材に、創作と現実体験の変遷をたどりながら、彼にとって音楽が何を意味していたのかを考察しました。
こうした研究を通して、臨床の知恵は特別な場だけでなく日常の中にも存在すること、そして心の問題には答えが一つに限らないからこそ、常に自分で問い直しながら探究し続けることが大事だと思います。

 

3. 現代システム科学研究科に進学してよかったと思える点について教えてください。 

学部から現代システム科学域で学び、そのまま本研究科に進学しました。当初は「現代システム科学」とは何なのかと戸惑いもありましたが、複数の研究分野に触れる中で、現代社会を多角的に捉える視点を養うことができました。大学院に進学してからは、物事を一面的にではなく、さまざまな立場や可能性から考える重要性をより強く実感しています。
また、院生となってからは指導教員や他の院生との関係が非常に密になり、些細な気づきや言葉にならない感覚についても時間をかけて共有し、ともに考えることができています。留学生である私にとって、文化や背景の違いを前提としながら個人として尊重してもらえる環境は大きな支えとなっています。
さらに、少人数で行われる授業や、院生主体で運営される心理臨床センターでの実践を通して、研究と臨床の双方を主体的に深められる点も、本研究科に進学してよかったと感じる大きな理由です。

 

4. ご自身の研究が社会にとってどのような意味をもつのか、またご自身の研究から広がる可能性について教えてください。

現在、主流の芸術教育を受けていない人々が創作活動を行う場においてフィールドワークを行っています。そこでは、一般的な「美しさ」や形式にとらわれるのではなく、その人が表現したいものをその人なりのかたちで表すことが大切にされています。
これまでの研究活動を通して感じているのは、人の心には芸術の基準のような明確な正解がないということです。重要なのは何が正しいかを決めることではなく、なぜそう感じるのか、どのように受け取られるのかを問い続ける姿勢であると考えています。実際に作品を考察する際にも、論文の中で言い切れることは多くなく、「こうかもしれない」「なぜそう感じたのか」と考え続ける作業が中心となります。
こうした視点は、社会における多様な生き方の理解にもつながると感じています。人のあり方を単純な良し悪しで捉えるのではなく、その人がその時々に表現している一つのかたちとして受け止めることができるのではないかと考えています。

 

5. この研究科に進学しようとする学生に対して何かメッセージがあれば教えてください。

「部屋の中の象」という表現があります。これは、人々が気づいていながらも語ろうとしない、明白でありながら扱いの難しい問題を指す言葉です。日常生活の中では、そのような「象」は誰にも話せなかったり、話しても流されてしまったりすることが少なくありません。もし、その存在を見つめ、言葉にし、考え続けていきたいと思うのであれば、本研究科はそのための場になると思います。
もちろん、それは容易な作業ではなく、多くのエネルギーを必要とします。同時に、自分自身の心身のバランスを保ちながら取り組むことの大切さも実感しました。
本研究科に進学後、心理臨床家としての基盤を丁寧に築く時間になるとともに、必ずしもその道に進まない人にとっても、自分自身と向き合いながらこれからの生き方を模索する貴重な経験になるはずです。新たな問いに出会い、自分なりに考え続けていきたい方に、ぜひおすすめしたいと思います。