院生・修了生の声 vol.1

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橋本 拓磨 さん

2024年度 博士前期課程修了

 

1. この研究科に進学した動機を教えてください。

私は現代システム科学域心理学類の前身である、大阪府立大学現代システム科学域環境システム学類人間環境科学課程の出身です。元々は大学院に進むことは考えていませんでしたが、いくつかのきっかけがあり、大学院に進学しました。                    
その一つが神経・生理心理学の受講です。特に認知神経科学的な知見に感銘を受けました。そこで、神経・生理心理学を担当されていた牧岡省吾先生の研究室に入りました。元々は音楽の認知に興味がありましたが、諸事情により卒論では全く異なる現象を扱うことになりました。ところが、それはそれで非常に楽しくなってしまい、そのまま大学院に進みました。したがって、動機を一言でまとめるならば「面白そうだったから」です。実際、大学院では期待に違わず面白い2年間を送ることができました。

 

2. 研究の内容を教えてください。

大まかな研究分野は、認知心理学・認知神経科学です。知覚の系列依存性という現象を研究しています。系列依存性とは、現在の知覚が直前の知覚に影響される現象です。例えば、右に傾いた線を見た直後に垂直な線を見ると、垂直な線の知覚は系統的に右向きに偏ります。この現象は傾きだけでなく、多様な特徴に対して生じます。私は、数の知覚の系列依存性を扱っていました。修士論文では、数の系列依存性が視覚と聴覚という異なるモダリティを越えて生じることを示しました。つまり、視覚による数知覚がその後の聴覚による数知覚に影響する、その逆も然り、ということです。

 

3. 現代システム科学研究科に進学してよかったと思える点について教えてください。 

現代システム科学研究科に進学してよかったと思える点は、自分とは異なる研究対象や方法論を持つ多くの教員・大学院生と関わる機会を得られたことです。
私が所属していた認知行動科学分野には、心理学とその周辺領域がご専門の幅広い先生方がいらっしゃいます。認知行動科学分野の先生方はどなたもフレンドリーで、指導教員以外の先生方とも関わる機会を多く得られました。認知行動科学分野は大学院生同士の交流も盛んで、他研究室の大学院生と多くの楽しい時間を過ごしました。
このような環境で、多様な視点を持つ人々と関われたことは私にとって貴重な経験でした。異なる視点からの意見や感想は様々な場面で役立ちました。なにより、異なる視点を持つ他者に話してみることが有用であるという気づきを得られたこと自体が得難い経験だったと思います。

 

4. ご自身の研究が社会にとってどのような意味をもつのか、またご自身の研究から広がる可能性について教えてください。

我々の知覚は、必ずしも正確に外界を反映していません。先ほどご紹介した系列依存性もその一例と言えます。ヒトの知覚を知ることは、社会を構成する人間がどのような世界を生きているのかを知ることです。この点において、知覚研究は社会とつながっています。
系列依存性は、知覚システムが現在の知覚を形作る際にその直前の知覚情報を利用していることの表れであるということができます。これはどのようなメカニズムで実現されているのでしょうか?また、これには機能的な意義があるのでしょうか?系列依存性から提起されるこれらの問題は、ヒトの知覚の理解に非常に重要です。このような問題に取り組む基礎研究から広がる可能性はなかなか伝わりにくいと思います。しかし前述のとおり、知覚研究は社会につながっています。間接的ではありますが、知覚に関する基礎研究は社会や世界に対して大きな可能性を生んでいると考えています。

 

5. この研究科に進学しようとする学生に対して何かメッセージがあれば教えてください。

大学院というのはとても面白いところです。しかし、ただ在籍していれば面白い時間や経験を提供してくれるところだとは思いません。いかに面白がるかが大切だと思います。
大学院生活は楽しいことや面白いことで溢れていますが、うまくいかないこともたくさん起こると思います。研究が行き詰ったり、元々興味のなかったことに取り組む羽目になったりするかもしれません。そんなとき、いかにその状況や研究を面白がれるかが、大学院生活において最も大切なことではないでしょうか。
ただ、何かを面白がるにはそれだけの余裕も必要です。無理をしないことが大切だと思います。また、問題に直面した時には、自分とは異なる視点をもつ他者に話してみることも有効だと思います。先にも述べましたが、この点において、幅広い研究分野の教員・大学院生が集まる現代システム科学研究科はとても良い環境です。
ここまでの内容は私が修士課程で得た教訓です。自戒の念も込めてここに共有します。ぜひ何でも面白がって、楽しい大学院生活を送ってください。