院生・修了生の声/丹羽 晴香 さん

丹羽 晴香 さん
2025年度 博士前期課程修了
1. この研究科に進学した動機を教えてください。
もともと別の大学に在籍していましたが、在籍していた大学の大学院には実験心理学を専門的に研究できるコースがなく、他大学院への進学を考えていました。学部時代の卒業論文が現代システム科学研究科の牧岡研究室で行われた研究の発展にあたる内容であり、大学院でもその延長線上で研究を深めたいと考えたため、この研究科に進学しました。実際に、当初思い描いていた通りに自分の関心のあるテーマに取り組むことができ、非常に充実した2年間になったと感じています。
2. 研究の内容を教えてください。
私は、「人は身体との相互作用の中で世界を捉えている」という身体性認知の考え方に関心を持っています。私たちは身体を通して物体や環境と関わっているため、認知は身体から切り離して考えることができないのではないか、と考えていました。
そこで私は、身体の状態を制限することで、身体が認知にどのように関わっているのかを明らかにできるのではないかと考え、「手を拘束する」という方法に着目しました。過去の牧岡研究室の研究では、手の拘束が、コップやハサミのような「手で操作可能な物体」の記憶や大小判断に影響することが示されています。これは、手の可動性を制限することで、物体を操作するシミュレーションが妨げられるためだと考えられています。
一方で、この手の拘束の効果が、「視覚的粗さ」のようなより純粋な視覚特徴にも及ぶのかは明らかになっていませんでした。そこで私の研究では、手の拘束が視覚的粗さ判断に与える影響を検討しました。その結果、手の拘束は視覚的粗さの弁別感度には大きな影響を与えない一方で、粗さの評価そのものには関係する可能性が示されました。
3. 現代システム科学研究科に進学してよかったと思える点について教えてください。
この研究科に進学して良かったと感じるのは、研究にしっかり向き合える環境と、良い仲間に恵まれたことです。
まず環境面では、院生室や実験室などの設備が整っていたことに加え、分からないことがあれば気軽に相談できる先生方がいらっしゃったことが、とても心強かったです。認知行動科学専攻の先生方は、質問すれば丁寧に教えてくださる方ばかりで、研究を進めるうえで大きな支えになりました。
また、同期に博士課程進学を目指す学生がいたことも、私にとって大きな刺激になりました。私は修士課程修了後に就職する道を選びましたが、研究に対するモチベーションが高い同期が身近にいたことで、自分ももっと頑張ろうという気持ちを持つことができました。実験をして終わりではなく、論文や発表という形で研究成果を社会に発信していこうとする姿勢から、多くの学びを得ました。
4. ご自身の研究が社会にとってどのような意味をもつのか、またご自身の研究から広がる可能性について教えてください。
私の研究は、人の知覚メカニズム、特に視覚と体性感覚のような異なる感覚同士がどのように関係し合っているのかを理解することにつながると考えています。基礎的な研究ではありますが、このような知見が積み重なることで、人が日常の中で受け取っている多感覚情報がどのように相互作用しながら処理されているのかを、より深く理解できるようになると考えています。
また、こうした理解は、例えばものづくりの分野において、人の認知特性に合った製品やサービスの設計にもつながる可能性があります。たとえば、より使いやすいもの、より安全なもの、より快適に感じられるものを実現するために、人の知覚や認知の仕組みを踏まえた設計に活かしていけるのではないかと考えています。
5. この研究科に進学しようとする学生に対して何かメッセージがあれば教えてください。
この研究科は、「研究したい」という気持ちを持っている学生にとって、とても恵まれた環境だと思います。その思いがあれば、先生方もさまざまな形で後押ししてくださいます。私自身も、海外で学会発表を経験する機会をいただき、非常に貴重な経験になりました。
大学院進学を迷っている方もいるかもしれません。私自身も進学を決めるまでにかなり悩みました。研究を続けたいという思いはあった一方で、進学後の就職活動に不安があり、修了後の自分の姿を明確に思い描けていたわけではなかったからです。それでも、この研究科で過ごした2年間は、海外学会への参加をはじめ、これまでの人生の中でも特に得難い経験に満ちた時間でした。そしてその経験を通して、研究の面白さをより強く実感し、修了後は企業で研究に携わる道を選びました。
自分が本当に面白いと思えることに真剣に向き合える時間は、とても貴重だと思います。迷いながらでもその気持ちを大切にして進んでいけば、きっと自分らしい道につながっていくと思います。