院生・修了生の声
北野 洸太朗 さん
2023年度 博士前期課程修了
1. この研究科に進学した動機を教えてください。
主に2つの理由があります。一つは自分の付加価値を高めるためです。
学部生時代の私は、特にやりたいことも明確になく、何かに熱心に取り組んだ経験がありませんでした (日々の講義を除く)。そのため4年生になった頃、自分は卒業後に社会で戦える武器を持っていないのではないか、と漠然とした不安を感じるようになりました。そのような時期に研究室に配属され、先輩方が各々テーマを持ち研究に取り組んでいる様子を見て、私も何かを探究しその過程で得た知見を自分の武器としたいと思うようになりました。
二つ目は好奇心です。研究室に配属されてから研究活動を通じて様々な経験を積ませていただく中で、自身の研究テーマについてより深く、広く知りたいと思うようになり大学院進学を志望しました。本研究科を志望したのは進学後も継続して同じ研究テーマに取り組めるからです。
2. 研究の内容を教えてください。
研究テーマは、「東南アジア主要都市及び大阪における大気中マイクロプラスチックの観測研究」です。マイクロプラスチックとは非常に小さなプラスチック片であり、地球上の様々な環境で存在が確認されてきましたが、近年は大気中においても存在が報告されています。これらは呼吸を通じて生物体内に侵入・沈着し健康被害を引き起こす可能性がありますが、世界的に観測例が不足していました。そこで私の研究テーマでは、大阪と東南アジア (ベトナムとインドネシア) において観測を行い、赤外分光法によるポリマー種同定や画像解析ソフトを用いた形状の観察や粒径測定等を行い、都市別に特徴を比較、気候や地理条件との関連性を明らかにすることを目的としていました。
3. 現代システム科学研究科に進学してよかったと思える点について教えてください。
一般に大学院に進学してよかった点、中でも本研究科に進学してよかった点の2つに分けて説明します。
前者に関して言えば、論理的・批判的な目で物事を見るくせが身についたことです。研究活動を行う中で、先生や先輩方から自分では気づかなかった本質的な質問や指摘をいただく中で身についていったのだと思います。
後者は、研究科に所属する学生各々の専門分野が多岐に渡るという点です。当時在籍していた竹中・藤井研究室内でさえも人によって研究テーマは大きく異なる印象はありましたが、研究科という枠組みで見ると学問のジャンルですら違ったりと多様性に富み刺激的な環境でした。
4. ご自身の研究が社会にとってどのような意味をもつのか、またご自身の研究から広がる可能性について教えてください。
私が携わった研究活動は、「プラスチックごみ問題が地球上の全ての生物にとって喫緊の課題である」という主張を補強する根拠になると考えています。私が初めて本研究に関わった頃と比較すると、大気中マイクロプラスチックの観測例やメディアでの報道もかなり増えてきていますが、未だ、海洋等のマイクロプラスチックと比べると認知度が低いように思います。今後、大気中マイクロプラスチックの報告例や健康影響に関する知見が蓄積されていくことで、人々が真に当事者としてプラスチックごみ問題に向き合えるようになると考えています。
5. この研究科に進学しようとする学生に対して何かメッセージがあれば教えてください。
進学を迷われている方には強くお勧めしたいです。意欲と行動が伴っていれば様々な経験を積ませていただけて、研究室あるいは大学が保有するありとあらゆるリソースを活用し何かを探究できる環境は大学院以外に中々ないと思います。一方で、自由度の高さゆえに自分で考えることが強く求められる環境でもあります。そのため、研究を進める中で辛く感じることもかもしれませんが、どんな経験であっても振り返った時には自身の糧になっていることを実感できると思うので、ぜひ色々なことにチャレンジしてみてください。