院生・修了生の声

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植野 春菜 さん

2022年度 博士前期課程修了

 

1. この研究科に進学した動機を教えてください。

私は就職活動を周囲が始める中で、大学卒業時に就職をするのか、大学院に進学するのか悩みました。もう少しじっくりと自分の疑問を大事にしたい、これまでの学びを生かして卒業論文だけでなく時間をかけて研究してみたいという思いと、就職した後に社会福祉の理論や学びを実践に生かすことができる職員になりたいとの思いで、大学2回生の冬に大学院進学を決意しました。
大学院進学を決めた後、私が本研究科を選んだ理由は大きく二つありました。
一つ目は、研究を進めていくうえで多角的な視点で物事を考えるために必要な学びがあったことです。私は、ダウン症児とその保護者の地域生活をテーマに研究したいと思っていました。そのために、障害学、教育、保育、地域福祉などの分野も含め、理論研究・実践研究のどちらもから学びを深めることができるのではないかと考えました。
二つ目に授業や研究室が少人数であり、対話の中で学びを深められると考えました。教授だけでなく、ほかの研究室の大学院生からの意見をもらうことで、視野が広がるのではないかと考えました。

 

2. 研究の内容を教えてください。

私の研究テーマは、「学童期のダウン症児と家族が住みやすい地域―養育者の困難感と生活満足感に関連する要因―」です。ダウン症児とその家族の地域生活の現状と養育者の困難感及び生活満足感に関連する要因について明らかにし、ダウン症児とその家族が暮らしやすい地域について検討することを目的とする研究を行いました。学童期のダウン症児の主たる養育者を対象に地域生活についてインターネットを介したアンケート調査を行いました。ダウン症児の地域生活に関して、ダウン症児の地域活動の制限などの実態や、養育者の困難感と生活満足感に関連する要因を分析し、どのような地域が住みやすいのかを考察しました。
研究の結果、ダウン症児とその保護者が暮らしやすい地域は、ダウン症児の活動の制限がされない地域、周囲の視線が気にならず温かく見守ってもらえていると感じることができる地域、養育者の労働時間が誰かの犠牲によることなく保証される地域であることがわかりました。

 

3. 現代システム科学研究科に進学してよかったと思える点について教えてください。 

私が本研究科に進学してよかったことは、課題解決する力がついたことだと思っています。研究だけでなく、社会福祉の現場でも問題が起こった際に、目の前のことに取り組むだけでなく、状況を整理し、仮説を立て、解決策を考えることができるようになったと思います。社会福祉協議会に就職してからも、この力は活かされており、地域課題について課題を集約し分析し、活動や取り組みに生かしています。
また、ポスター発表など自身の研究をわかりやすく他の人に伝えることや、スライドを用いてわかりやすい説明資料を作ることなどを行っていたので、就職してからも、地域課題の共有や啓発などの資料作成や説明ができていると評価につながっています。

 

4. ご自身の研究が社会にとってどのような意味をもつのか、またご自身の研究から広がる可能性について教えてください。

私の研究は、ダウン症児とその保護者の研究ですが障害のある人だけでなくすべての人にとって暮らしやすい地域のヒントになると考えています。障害があることで、買い物へ行く、公園へ行く、行きたい学校へ行くといったごく当たり前のありふれた事を諦めてしまう人たちもいます。社会に少しの工夫や手助け、配慮があれば諦めることがなかったかもしれません。ダウン症は、1000人に1人の割合で生まれて来ると言われています。低くない確率です。しかし、多くの人がまさか自分がダウン症の子どもを授かるなんてと思っている現状もあります。もし自分の子どもに障害があった時、暮らしやすい社会で生きていきたい、子どものためにさせたいと思ったことを実現したい、そして、子育てしていても自分の時間や夢を持ちたいと思うだろうと考えます。それには制度面や環境が完璧に整っているとは言えない現状があります。
私の研究は、ある意味自分のための、そして周囲の未来の社会を考える研究だと思っています。社会福祉は難しくはなく、誰にとっても身近なことで、自分達の社会が少しでも生きやすくなるために、誰もが〇〇なりたい、〇〇したいと考えるのと同じであると思っています。

 

5. この研究科に進学しようとする学生に対して何かメッセージがあれば教えてください。

現代システム科学研究科への入学を考えている皆様。
私は現在、京都市の社会福祉協議会で、地域支援の仕事についています。研究科で時間をかけ学び考えた経験は、私の現在の仕事を支えています。仕事で壁にぶつかった時に立ち止まり振り返ることができる力、現状を分析し仮説を立て解決策を考える力、そしてエビデンスを持ち、話をすることができる力など、専門職としての私の強みとなっています。
私自身、大阪府立大学にて4年間、福祉についてたくさんの学びを得ました。その学びを自分の中に落とし込み、活用できているのは2年間の大学院での経験があったからだと思います。社会福祉学分野では、現場を大事にし、研究している教授や先輩がたくさんいます。
将来研究の道に進むわけではない人でも、もう少し学びを深めたい人、自分の力にしたい人など、現場で働く力を高めることができます。また、それだけでなくじっくりと自分の疑問や違和感に向き合う時間になります。その疑問や違和感を明らかにしていく方法を、教授や研究室のメンバーとの対話の中で考えることができます。皆さんのこれから選ぶ道が皆さんにとっての大事な時間になると信じて、応援しています。