肝疾患地域連携医療学寄附講座特任教授ご挨拶

肝疾患地域連携医療学寄附講座特任教授ご挨拶

肝疾患地域連携医療学寄附講座  特任教授 西口 修平

 令和2年5月より、河田則文教授・医学研究科長のご配慮により肝胆膵病態内科の寄附講座として肝疾患地域連携医療学を設けていただき、特任教授を拝命いたしました。簡単に自己紹介をさせていただきます。私は、大阪市立大学を昭和56年に卒業し、同年に山本祐夫教授が主宰される内科学第三教室に入局しました。その後、3代目の教授になられた黒木哲夫先生のご指導を頂き、一貫して肝炎ウイルスの診断と治療や輸血感染症などの臨床研究を行ってまいりました。平成17年には第4代教授の荒川哲男先生(現学長)のご尽力により、兵庫医科大学内科学肝胆膵科主任教授として転任致しました。兵庫医科大学では臨床研究支援センター長、肝疾患センター長、副学長、理事などを拝命し、大学の運営にも少しは関わらせていただきました。また、厚生労働省からの仕事や兵庫県の肝炎対策委員長として、公の仕事にも携わる機会を得ました。今年の3月末で幸いにも15年間の任期を恙なく終え、退職となりました。4月からは、兵庫医科大学の連携病院の一つである加納総合病院の名誉院長として、新しい人生を歩み始めたところです。

 河田教授からお話を頂いた際に、母校のために「どのような貢献」ができるのか、私自身明確なビジョンが描けていなかったのですが、「何かお役に立ちたい」という気持ちが高じて引き受けた次第です。また、「兵庫医科大学という別組織で頑張ってきた経験そのものが貴重だ」と、何人かの先生にそそのかされたことも一因です。幸い、加納総合病院も理事長自らが大阪市立大学における院外での活動について快くご了解いただき、これを機に大阪市立大学と加納総合病院の病病連携のきっかけとなることも期待されています。

 さて、唐突ですが、2016年にWHOは2030年までに肝炎ウイルスを根絶することを目標に掲げました。それ以前から、わが国は肝炎撲滅に国を挙げて取り組み、平成 14 年度からC型肝炎等緊急総合対策の開始、平成19年度から肝疾患診療連携拠点病院の整備等の取組を進めてきました。おそらく先進国の中で肝炎ウイルスの撲滅が最も期待できる国は日本であり、その大きな原動力となるのが肝疾患連携拠点病院の活動です。大阪府の拠点病院は、本学以外にも大阪大学、大阪医科大学、関西医科大学、近畿大学がそれぞれ指名されており、独自に肝炎ウイルス撲滅に向けた活動を行っています。兵庫県は、兵庫医科大学が県で唯一の拠点病院であったため、県全域で統一的な肝炎対策を講じることが容易でした。大阪府の場合も、府下全域に一元的な対策を実行することが理想的ですが、そのためには5大学間の緊密な連携というハードルを越えなければなりません。また、これらの対策は、大阪府と大阪市が垣根を取り払って行うべきものです。2022年4月に本学と大阪府立大学との統合により新大学が設立されることはまさしく慶事であり、府市が一体となった綿密な肝炎対策を目指す上で多くのアドバンテージを得ることになります。今後、肝胆膵病態内科が先陣を切り肝炎撲滅を目指した大阪における大きな流れを作っていくでしょうが、肝疾患地域連携医療学がその潮流に上手く乗りファインアシストをするように頑張りたいと考えております。

 大風呂敷を広げるのはさておき、最後に、地に足を付けて何を行うのかをご説明いたします。とりあえずは、15年ぶりに毎週金曜日に肝疾患の専門外来を母校でオープンします。今のところ外来は予約患者ゼロの状態ですので、是非ご紹介をお願いいたします。私でよければ、セカンドオピニオンも喜んでお受けしたいと思います。また、医学部学生や卒業生に対する講義も行うように求められています。母校の学生を適度にアジテートすれば能力のある面々ですのでどこまで活性化できるのかを、私自身も大いに楽しみにしております。私へのご連絡は、肝胆膵内科医局に頂くか、大阪市北区天神橋に居を構える加納総合病院にお願いいたします。

2020年6月1日