生物化学科
生物と化学、ふたつの視点から将来の創薬に貢献できる
生物化学科は生物学科とどう違うの?創薬もできるって薬学部とは何が違うの?ミクロな生体分子からマクロな生物個体や生態系まで、生命現象という複雑で広い分野を様々な視点から学ぶことができる生物化学科の魅力について、大学院博士前期課程修了の青木絢子さん、小吹(おぶき)桃子さん(2021年度 大学院博士前期課程 在学時)
毒素を薬に変える研究で国際特許を出願中
小吹:私は毒素を薬に変える研究をしています。細胞の中に薬がうまく入らず薬が効かないという問題を改善するためのものです。有機化学的視点により、サポリンという毒性のあるタンパク質の一部の構造が、細胞の中に入っていくために大事な役割を果たしているということを発見しました。そこで、この構造を持った毒性のない化合物を合成し、薬を運ぶ運搬役として、抗がん剤や遺伝子を細胞まで運ばせる研究をしています。国際特許も出願しているので、今後も応用研究を深めていきたいと思っています。
青木: 私は在学中、がんの治療に関する研究をしていました。放射線治療は副作用が強いとされていますが、がん細胞だけにピンポイントに放射線を作用させることができれば、正常な細胞を傷つけずにすみます。そこで、放射線の一種である中性子線があたるとがん細胞を攻撃する効果が発現するホウ素10Bに目をつけました。このホウ素中性子捕捉療法において、ホウ素を含んだ化合物をがん細胞まで届けることができれば、がん細胞だけに中性子線を作用させることができ、副作用の少ない治療ができます。自分の研究論文が学術雑誌の表紙絵(カバーピクチャー)にも採用され、とても嬉しかったです。
生物と化学をつなぐ学際領域の融合
青木: 生物のメカニズムを知って、有機化学的手法を使って動きを制御し、体の外から薬を使って動かす。生物化学での生物と化学の強い融合的な視点からの創薬科学へのアプローチは、薬学部の学びとの大きな違いだと思います。小吹さんはなぜ創薬に興味を持ったんですか?
小吹: 学部の4年間では、基礎有機化学の授業やマウスの解剖などが興味深く、薬学部でなくても生物の視点から薬をつくり出せることを知り、創薬に興味がわきました。混合した物質のある成分を分離して特定するクロマトグラフィーや分子量の測定など、様々な分析技術を習得できるのも、この学科のおもしろさだと思います。青木先輩は留学もされてましたよね?
青木: 大学院1年生の時に文部科学省の「トビタテ!留学JAPAN」に応募し、大学のサポートを受けながら、留学奨学金を得ることができました。3ヶ月間、カナダのトロント大学に研究留学をして学びを深め、帰国後は、大学内で留学相談カフェを実施し、自分の体験談を通じて多くの学生と話す機会にも恵まれました。
バイオ医薬品の開発など、ますます活躍が期待される分野
小吹: 生物化学科は、バイオ医薬品の開発など、今後ますます活躍が期待される分野だと思います。卒業後は医療機器・医薬品の研究開発を行う予定ですが、大学で培った研究知識や技術を活かして医療現場に寄り添った研究開発者になり、医療の発展に貢献したいと考えています。
青木: 生物相手の研究は、様々な要因で思うように進まないこともあり、忍耐力や楽観性が身につきます。大阪のメーカーで研究員として働く今も、大学で学んだことが大いに役立っています。会社では、医薬部外品や化粧品、健康食品など、幅広い製品を取り扱っていますが、様々な学問を学んできた人達とのディスカッションはとても楽しく、自分の専門性と合わせて新しい商品の開発につなげたいと思います。
生物化学科を目指す受験生へ一言
青木: 生物化学科は、学問領域の垣根を越えた学際的な学びが魅力。好奇心旺盛な人、探究するだけでなく世の中に役立つものを生み出したい人に向いていると思います。受験勉強はつらいこともあるかもしれませんが、その先には楽しい大学生活が待っているので、頑張ってください!
小吹: これからの薬には、生物、化学、物理と様々な観点からの知識が求められていると痛感しています。そうして、生物の生態、分子を知って、そのメカニズムから新たに分子を合成する、目に見えないものをデザインして動かす、そんな、生物化学のスペシャリストを一緒に目指しましょう。