院生・修了生の声/長岡 若葉 さん

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長岡 若葉 さん

2023年度 博士前期課程修了
2024年度~ 博士後期課程在学

 

1. この研究科に進学した動機を教えてください。

私は他大学の福祉系四年制大学に在学していた頃から大学院進学に関心を抱いていました。しかし、同分野では大学院に進学する学生は少なく、進学先の選定や研究テーマの絞り込みに迷いが生じた結果、最終的には進学を見送り卒業を迎えました。卒業後は福祉の現場で働きながら関心のある文献を読み進めてきましたが、「適切な文献に到達できているのか。」「自分が見たい事実だけを無意識に拾い上げているのではないか」という不安が強まり、専門的な指導の必要性を痛感するようになりました。独学では越えられない限界を意識したことが、改めて大学院進学を真剣に考える契機となりました。
進学先を検討するなかで、本研究科を選んだ理由は大きく二点あります。第一に、これまで読み進めてきた書籍や論文のなかで関心を持った研究者が複数名在籍していたことです。第一線で活躍する教員から指導を受けられる点は大きな魅力でした。第二に、修士課程と博士課程が連続した体系のもとで設計されている点です。長期的な視野で研究を構想し、一貫した指導のもとで着実に研究を積み上げられる環境に強く惹かれ、本研究科への進学を決意しました。

 

2. 研究の内容を教えてください。

私は現在、小児期逆境体験(ACEs)と呼ばれる児童虐待や家庭内の機能不全を経験した若年若者の抱える不利の軽減に関する研究をしています。ACEsは、精神疾患や虚血性心疾患の罹患率の上昇など心身に長期的な悪影響を与えることが知られていますが、その悪影響を緩和する要因に関する研究は、どうすれば子ども時代にその悪影響を緩和できるようなポジティブな経験を提供できるかという点に着目したものが多く、成人後の支援の提供や介入方法に関する研究は多くありません。そのため、私の研究ではACEsの悪影響を緩和するような体験や関係性などを成人に対しても提供するにはどうすればよいのか、またその提供に際してスティグマなく、また特定の地域に限らず誰でも利用しやすい方法はどのようなものかという点を明らかにしたいと考えています。それらを通じて、何歳からでもまたどんな地域に生活していても「生まれ育ちによる不利を軽減させる支援」を受けることができる社会の実現を目指していきたいと考えています。

 

3. 現代システム科学研究科に進学してよかったと思える点について教えてください。 

進学してよかったと感じる最大の点は、研究を支えてくれる人的環境の豊かさです。
本研究科には社会福祉学分野だけでなく、人間科学分野や臨床心理学分野など関連領域が併設されており、異なる専門性をもつ院生・教員と交流する機会が多くあります。指導教員はもちろん、研究科内のさまざまな教員が学生の研究に対して熱心にコメントや情報提供をして下さるため、多角的な視点から研究を進めることができます。さらに、現場で働きながら学んでいる院生も多く、実践の場から得られる生きた知見に触れられることが、研究に厚みをもたらしてくれています。
また、日常的な人間関係にも恵まれており、院生室での何気ない会話や悩みの共有など気軽に話せる仲間の存在が大学院生活の支えとなっています。研究は孤独になりがちですが、共通の関心をもつ仲間がそばにいることは非常に心強いものです。
加えて、SPRING事業や大学独自の支援制度など経済的なサポートも整っており、安心して研究に向き合える基盤が確保されている点も、本研究科に進学してよかったと感じる大きな理由の一つです。

 

4. ご自身の研究が社会にとってどのような意味をもつのか、またご自身の研究から広がる可能性について教えてください。

これまで、ACEsをはじめとした家庭環境の不利が子ども時代だけでなく成人してからも長期的に影響を及ぼすことが知られている一方で、成人後の若者に対する支援は多くありませんでした。特に、日本の若者支援は「就労支援に偏重していること」や「頼れる家族の存在が前提に置かれていること」などが指摘されており、「なんとか就労はしていてもしんどさを抱えている者」や「治療や福祉的支援までは必要としていないものの、情緒的な関わりを求める者」などへ提供できるメニューはあまり多くありません。私の研究を通じて、子ども時代にACEsの悪影響を緩和するようなポジティブな経験ができなかったとしても、成人してからであってもポジティブな経験を保障できる社会を作りたいと考えています。それにより、昨今子どもの権利に注目が集まる中で、子どもから成人まで切れ目ない権利擁護を行うことができるのではないかと考えています。

 

5. この研究科に進学しようとする学生に対して何かメッセージがあれば教えてください。

大学院進学に迷いや不安のある方も多いかと思いますが、もしも皆さんのなかに「知りたいこと」があるのであれば、たとえ「今すぐ」でなくても、大学院という選択肢を人生のどこかに置いてみるのも一つの方法です。「知りたいこと」を深めるには個人で向き合う姿勢が不可欠ですが、よき仲間や適切な指導が得られると、その個人での探求がさらに真価を発揮し、その分析の質が深化します。
私自身、入学前から現在までを振り返ると、大学院での学びは決して楽なことばかりではありませんでしたが、それ以上に知識や視野の広がりを感じています。それは、研究に限った話ではなく、院生仲間との交流を通じて多様な価値観に触れられたことが大きな財産となりました。
日々の生活に追われると、ご自身の「知りたい」という気持ちが後回しになってしまうこともあるかと思います。しかし、その「知りたい」という気持ちを、どうか手放さずにいてください。皆さんにとっての学びのタイミングや巡り合わせが訪れたとき、本研究科には、その思いに寄り添い、共に歩んでくれる教員や仲間がいます。皆さんが学びを深めたいと思った時に、この場が力になれればうれしく思います。