哲学歴史学専攻

哲学歴史学専攻について

本専攻は、人間の社会と文化の構造・発展を明らかにし、 人間のあり方を歴史と文化のなかに追求することを目的とします。哲学と歴史学という、方法論は異なるものの、人間文化の基礎を研究する両分野を統合したところに特徴があります。人間理解のための二つの基本的な座標軸といってよい哲学的観点と歴史学的観点を統合した教育研究体制は、激しく変動する時代潮流の中で、人間の社会とその文化の本質と普遍的価値、さらにその変容を明らかにすることを可能にします。専門分野への深い知識に加えて、関連分野にも視野を広げられる研究者、広い知識と教養をもった専門職業人を養成します。専攻内には、学問分野と研究方法に応じて、哲学、日本史学、東洋史学、西洋史学の各専門分野を設けます。

専修紹介

 

哲学専修について

哲学専修について

哲学専修では、大別すると、哲学、倫理学、宗教学、美学という四つの分野の研究をおこなっている。
まず狭義の哲学の分野には、古代ギリシアから現代に至る西洋哲学の歴史についての理解を踏まえながら、学問的な思考にとって不可欠な推論の原理について論じる論理学、世界とそこで人間存在が占める位置について論じる存在論、世界についてのわれわれの知識の成り立ちと根拠について論じる認識論などが含まれる。さらには、科学哲学・心の哲学・言語哲学など、哲学のなかの新しい分野についても積極的に研究がおこなわれている。
倫理学には、正しい生き方とはどのようなものかという問題を中心に倫理(道徳)の本質や原理について考える理論的倫理学と、生命の技術的操作の是非など今日の具体的な倫理的問題について研究する応用倫理学とが含まれる。
広義の宗教学には、宗教一般の成立原理について普遍的立場から考察する宗教哲学と、個別的宗教について実証的に研究する実証的宗教学とが含まれるが、本研究科の哲学専修では主として宗教哲学の研究がおこなわれている。
美学は、広義においては感性の学として、一方では人間の感情、情緒、センス等の機能やメカニズムに関する哲学的ないし哲学史的解明を目指し、他方、勝義の感性的経験の相関者としての美的なものに関わる諸現象、すなわち芸術や美に関する諸問題に、価値論的、存在論的ないし認識論的等のアプローチを試みる。 これまでの大学院生の研究テーマとしては、バークリー、ヒューム、カント、ニーチェ、ウィトゲンシュタイン、ベルクソン、ハイデガー、メルロー=ポンティなどの思想が挙げられる。
なお哲学専修では、年に一度、他大学の研究者も招き、院生も参加して、哲学研究会をおこなっている。これは1985年より20回を超えて開催されてきた哲学懇話会を改組し、2006年より新たに発足した研究会である。

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日本史学専修とは

日本史学専修について

古代から現代までの日本社会の歴史を学ぶとともに、自ら研究する力量を身につけることをめざします。その際、考古学的遺跡・遺物、古文書、日記や記録、近現代の公文書、習俗・伝承など、さまざまな史資料の分析法を学び、それらを駆使して、政治史、社会史、都市史、文化史など、幅広い視野からの歴史研究を心懸けています。研究活動は学内にとどまりません。さまざまな学会、研究会の活動を通して、全国的広がりをもって、他の大学、研究機関の研究者と交流を深めています。なお、将来の進路は、大学教員、博物館や資料館の学芸員などの研究職・専門職につくケースが一般的です。

日本史学専修の刊行物

『市大日本史』

大阪市立大学日本史学会は1998年5月に発足し、学術雑誌『市大日本史』を刊行してきました。年1回の大会時の講演・研究報告、投稿論文、合同調査の報告などを掲載しています。大阪公立大学の開学にともない、学会・学会誌ともにリニューアルし、一層の発展をめざします。

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東洋史学専修について

東洋史学専修について

東洋史学専修は、創設当初、北アジア史の鴛淵一、中国農業史の天野元之助、中国明清史の中山八郎、中国古代史の佐藤武敏を擁して開始されました。鴛淵一退任後は、教員3名の体制となり、以後、天野元之助の後任に明清社会経済史の重田徳、重田病没の後は中国水利史の森田明、中山八郎の後任に高麗李朝史の北村秀人が加わり、その後中国六朝史の中村圭爾が加わって4名の体制となりました。佐藤武敏退任の後はアジア史に視野を広げるべく、トルコ史の新井政美を迎え、新井政美転出の後には東南アジア史の早瀬晋三が、森田明の後には中国近代史の飯島渉を経て、中国近世史(宋元)の平田茂樹が加わりました。2000年3月を以て北村秀人が退任し、3名の体制に再び戻りましたが、2001年4月からは、中国近世近代史(明清~民国)の井上徹が赴任いたしました。2009年4月にはインド経済史の野村親義が加わり、翌年3月に中村圭爾が退任しました。2012年4月にはオスマン帝国史の上野雅由樹が加わりました。2019年3月には井上徹が退任し、同年4月に元代史の渡辺健哉が加わりました。2020年3月には野村親義が転出し、2021年4月に中央ユーラシア史の濱本真実が加わりました。
この間、特筆すべきは、佐藤武敏、天野元之助が学士院賞を受賞したことです。このことは、東洋史学専修の発展に大きく寄与するものであったといえましょう。

  • 平田茂樹教授:中国近世史。科挙官僚制を中心とする政治構造の歴史を主に扱う。
  • 渡辺健哉教授:元朝史、近代日中学術交流史。
  • 濱本真実准教授: 中央ユーラシア史、ロシア史。
  • 上野雅由樹准教授:オスマン帝国史、アルメニア史。

以上のスタッフを抱える東洋史学専修では、古代から近代に至る中国及び内陸アジア・西アジアの歴史を広くカバーするとともに、都市、海域世界に関わる独自の観点を打ち出して、マクロな視点から人類社会の歴史構造に迫ろうとしています。研究を進めるに際しては、中国の古代出土史料、正史・実録・会要・文集・地方志・族譜・裁判資料・現地調査資料(民国期)を含む編纂史資料、現地調査による王統系譜・口述史料、経済・人口統計史料などを用いて、分析を行っています。オスマン帝国史では、中央政府の行政文書や歴史的刊行物、ヨーロッパ諸国の外交文書などを用いて研究しています。

現在、数多くの大学院生が研究を行っています。研究内容は、宋代社会史、宋元の地域社会史、明清社会文化史、近世オスマン帝国史、アルメニア近代史など多様です。また、専修の教育研究課程で学んだ院生は修了後、大学や高校の教員、公務員として活躍しており、一般企業でその才能を開花させた者もおります。

文学研究科COEプログラム「都市文化創造のための人文科学的研究」(2002年度―2006年度)に積極的に関与し、このプログラムの修了後も、都市文化研究センター(文学研究科)を中心とする重点研究「アジア海域世界における都市の文化力に関する学際的研究」のプロジェクトに取り組んでいます。また、海外では、都市文化研究センターの海外拠点(サブセンター)・中国社会科学院歴史研究所との共同研究を維持するとともに、新たに中山大学歴史系・上海師範大学中国近代社会研究所・広州大学人文社会学院・寧夏大学西夏学研究院と共同研究を発足させました。

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西洋史学専修について

西洋史学専修について

西洋史学専修では、西欧・東欧・地中海地域からアメリカ合衆国にわたる諸社会の特質を、歴史的分析の手法を用いて学ぶとともに、自ら研究する力量を身につけることをめざします。西洋近代諸語の講読を通じて研究文献や史料の読解能力を養うとともに、古代・中世史の場合はギリシア語・ラテン語史料の読解力の養成に努めます。本専修ではビザンツ史研究の伝統があるのが大きな特徴といえます。しかしもちろん、これ以外の伝統的な西洋史諸分野での研究・教育にも力を入れています。

西洋史学専修は、文学研究科の改革により2001年度より新たに設けられました。文学研究科の中では歴史の浅い専修に属します。そのため当初は他専修に比してややこじんまりしていましたが、近年は院生も増え内部は活気にあふれています。2022年4月現在、西洋史研究室には、指導教員が3名、博士前期・後期課程の大学院生およびODが10名ほど在籍し、他大学出身の研究者を都市文化研究センターの研究員としてうけいれています。指導教員のうち、北村昌史教授はドイツ近現代史を、草生久嗣教授はビザンツ帝国史を、そして向井伸哉准教授は中世フランス史研究を専攻しています。院生・OD・研究員の研究領域としては、教員と同じくビザンツ帝国史や近現代ドイツ史を研究している者から、中世イギリス史、中世イタリア史、近代イタリア史、近代フランス史まで多彩です。西洋史研究室は、おそらく文学研究科の中でももっとも多くの言葉が飛び交い、世界各地の多様な文化が出会う場といえるでしょう。

博士前期課程修了後は、多くの人が本研究科の博士後期課程に進学します。博士後期課程進学後は、海外の大学へ留学する人が少なくありません。これまでロシア、オーストリア、イタリア、ドイツなどに留学しています。

博士前期課程のカリキュラムは大きく時代順に構成されています。講義は古代史、中世史、近・現代史について広く学べるよう組んであります。演習では西欧諸国語による研究書講読や、ギリシア語・ラテン語の史料講読を通じて、テクストを正確に読解する力をつけます。さらに研究指導を通じて修士論文の作成をみっちり指導します。さらに教員と大学院生によるラテン語・ギリシア語の読書会が行われたり、修士論文の作成前には博士前期課程2年の院生だけでの自主ゼミなども行われたりしています。博士後期課程では、教員の個人指導の下に論文執筆や学会発表を行い、課程博士論文を完成することをめざします。博士後期課程の院生は、すでに多くの学会で発表しています。西洋史学専修は創設後20年近くを経て2名の課程博士と5名の論文博士を送り出しております。

各教員の研究分野に応じて日本国内のビザンツ史、中世史、ドイツ史関係の全国学会および地方研究会と深い関わりがあり、学生の皆さんの日本ビザンツ学会、西洋中世学会、ドイツ現代史研究会への積極的な参加を支援します。専修内の研究会・勉強会活動として文学研究科プロジェクト、ビザンツ研究連絡会、ドイツ語講読会、中世ラテン語古文書翻刻会などが開催されています。また将来、学内および国際的な連携とともに、独自の研究センターや雑誌を立ち上げるのが西洋史学専修の夢です。

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