臨床栄養師育成プログラム

Ph.D.を有する臨床栄養師養成を目指した大学院教育の試み

ここ十数年程度の間に、わが国の管理栄養士が担うべき役割に大きな変化がありました。それは、それまでの病院食管理を中心とする給食管理業務から、Nutrition Support Team (NST)の主要メンバーとして、臨床医学の最前線で仕事をする co-medical stuff としての業務が大幅に増えたことです。そこで管理栄養士養成課程を持つ大学や管理栄養士が進学する大学院教育も、この管理栄養士に期待される役割の変化に対応して、教育内容を変革する、すなわち臨床医学的な教育、実習、研究の充実を図ることが求められるようになりました。更に、高次機能病院におけるNST活動を通じてもたらされた臨床栄養のレベルアップという成果を、中核病院周辺の療養型病院、老健施設、在宅介護の場などに広く還元してゆくことも課題になってきました。

この二つの課題に対応すべく、我々の研究科が主体となって申請した”地域ケアを担うPh.D.臨床栄養師の養成 -病院と地域をつなぐ管理栄養士のエキスパート教育プログラム-”が、平成19年度文部科学省選定“大学院教育改革支援プログラム(医療系)”に採択され、平成21年度まで3年間活動しました。文科省の援助期間が終了した平成22年度から平成28年度までは、大阪市立大学(当時) 新規重点項目、教育支援事業に選定され、”地域ケアを担うPh.D.臨床栄養師の養成”として継続しました。平成29年度からは、当研究科の大学院教育プログラムとしてリニューアルし、再出発しています。
将来管理栄養士として大学病院や高次機能病院で働きたい、あるいは現役の管理栄養士がキャリア形成の必要性を感じて進学する社会人大学院として、臨床栄養学的経験とスキルを習得しつつ、臨床栄養学的課題をもって学位論文を執筆するというコンセプトは本プログラム発足当初より受け継がれています。

その概要は下記の通りです。病者、被介護者を病院のみに任せるのでなく、地域や居宅で支えていこうとする時代にあって、病者、被介護者の地域、在宅における健康管理を進めていくために、管理栄養士が栄養管理のエキスパートとして参加し、高度の専門的知識・技能を有して活動することが求められています。本教育プログラムでは、管理栄養士を広く大学院に受け入れ、栄養学の専門家として充分な専門栄養学、臨床医学を習得させるとともに、本学部の学際性に富む教育体制を有効に活用し、社会福祉学、臨床心理学、居住環境学など、地域ケアにまつわる幅広い知識を習得します。また、管理栄養士としての実務能力の涵養のため、高次機能病院での臨床インターン研修や、地域ケアのフィールドで実践的な栄養ケアマネジメント研修を積みます。そして実践の場で得られた臨床栄養学的課題を抽出し、科学的に解析、解決策を創案し、結果を学術論文化することで学位を取得することを目指しています。

本プログラム開始後十数年が経過し、本コース修了者から全国の大学附属病院、国公立の高次機能病院、私立の中核病院の栄養部に多くの人材を輩出しています。また一旦実務経験を積んだのち、後進の指導にあたるべく大学の教員になる者も出てきており、当該プログラムの掲げる目標である“地域ケアを担うPh.D.臨床栄養師の養成―病院と地域をつなぐ栄養管理のエキスパート教育”を実践できる人材が養成されつつあります。
我が国における管理栄養士養成課程を持つ大学院において、臨床栄養学的課題をテーマに博士論文を執筆、学位の取得を目指すコースはなお希少な存在であり、当該分野におけるパイオニアとして本プログラムを継続、発展させていこうと思っています。

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附属病院におけるNST回診実習

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NSTカンファレンス実習(附属病院)

 

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市民病院におけるNST研修

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老健施設での実習

 

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市民公開講座参加

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市民公開講座参加