法学研究科 法曹養成専攻(法科大学院) 3ポリシー
ディプロマ・ポリシー
〔人材養成の方針及びディプロマ・ポリシー〕
(1)人材養成の方針
本専攻は、大都市であるがゆえに発生する様々な法的問題に即応できる高度な法的能力を備えた、真のプロフェッションとしての法曹の養成を目的とする。
大都市において発生する問題の具体的な形態は多様であるが、大別すると、次のような問題が存在する。第一に、大都市を主たる活動拠点とする企業の経済活動にかかわる問題である。第二に、様々な社会的弱者を含む、大都市に住まう市民の日常生活にかかわる問題である。第三に、大都市が経済および社会のグローバル化の最先端に位置することに伴う国際的な問題である。目指されるのは、これらの法的諸問題に対応できる能力を備えた法曹の養成である。
本専攻は、また、真のプロフェッションとしての法曹の養成をめざす。真のプロフェッションと呼び得るためには、次のような意欲と能力を有する必要がある。第1に、新たな法的問題に果敢にチャレンジする精神と、法曹実務の世界においてリーダーシップを発揮し、法実務の発展を担っていこうとする意欲とを有していなければならない。第2に、実定法の技術的な解釈に終始することなく、基礎法科目や外国法科目、隣接科目、展開・先端科目などについての深い学識に基づいて、現にある法を相対化し、批判的に検討することのできる高度の能力を備えていなければならない。第3に、人間という存在への深い関心と紛争当事者の苦悩を真摯に受け止めることのできる豊かな人間性を備え、そのうえで、法曹としての社会的責任を十分に自覚し、公益的業務に積極的に取り組む意欲を有していなければならない。
以上を踏まえ、以下のような3つのタイプの高度な専門性を備えた法曹の養成をめざす。
第1は、複雑化しかつ多面化する企業の法的ニーズに十全に応えるとともに、その企業活動が法の枠を超えることのないよう的確なアドバイスを提供することのできる、取引法、財産法、金融法、民事手続法、経済法、知的財産法等の諸分野についての深い造詣を有する法曹である。
第2は、日本国憲法の人権擁護の精神を十分に内面化したうえで、市民の日常生活に深くかかわる取引法、財産法、金融法、家族法、民事手続法、刑事法、労働法等の諸分野に精通し、なおかつ、社会的弱者への深い理解と共感をもって、頼りがいのある法的アドバイザーとして依頼者に接するとともに、民事法律扶助事件、国選弁護事件、消費者被害の救済、外国人労働者の権利保護等の様々な分野で、公益的活動に積極的に取り組む法曹である。
第3は、経済および社会のグローバル化の進展に伴って多発している国際取引にかかわる紛争や外国人を当事者とする紛争に的確に対応することのできる、国際取引法、国際私法、国際人権法、外国法などについての深い造詣を有する法曹である。
(2)ディプロマ・ポリシー
法学研究科は、大都市であるがゆえに発生する様々な法的問題に即応できる高度な法的能力を備えた、真のプロフェッションとしての法曹を養成するという理念に基づいて、所定の単位修得により、以下のような能力等の基準(ディプロマ・ポリシー)を満たした学生に、法務博士(専門職)の学位を授与する。
- 全ての法曹に不可欠な現行法についての十分な知識と考え方を確実に身につけていること
- 現代社会に発生する新たな法的問題に適切に対応する専門的能力を身につけていること
- 現行法を固定的で万能なものと見ることなく、法の発展に寄与することのできる「善き法律家」たりうる能力を身につけていること
- 人間という存在への深い関心と紛争当事者の苦悩を真摯に受け止めることのできる豊かな人間性を備え、そのうえで、法曹としての社会的責任を十分に自覚し、公益的業務に積極的に取り組む意欲を持つ「市民のための」「善き隣人」としての「善き法律家」たりうる能力を身につけていること
カリキュラム・ポリシー
〔教育課程の編成方針(カリキュラム・ポリシー)〕
本専攻は、 高度の専門性が求められる職業を担うための深い学識及び卓越した能力を培うことを目的とする専門職学位課程のうち、専ら法曹養成のための教育を行うことを目的とする専門職大学院として設置されることから、関係法令及び認証評価基準に適合した教育課程を編制する。その際、経済学や理数系、医学系など他の分野を学んだ者や、社会人等としての経験を積んだ者などを幅広く受け入れ、多様なバックグラウンドを有する法曹を輩出していくという法科大学院の目的に鑑み、いわゆる法学未修者に対する法曹養成を着実に行うことのできる教育課程に留意するとともに、それとあわせて、法学部等において法学の基礎を学んだいわゆる法学既修者が、その基盤をさらに発展させ法曹に必要な能力を早期に身に付けることのできるカリキュラムとする。
以上を踏まえ、本専攻では、「法曹養成に特化した専門職大学院にふさわしい内容・方法で理論的教育と実務的教育の架橋が段階的かつ完結的に行われる」ことを重視し、以下のカリキュラム・ポリシーを設定して教育課程を編制する。
- 全ての法曹に不可欠な現行法の十分な知識と考え方を確実に身につけるため、法律基本科目に属するほとんどの科目を必修科目とする。
- 現代社会に発生する新たな法的問題に適切に対応する専門的能力を身につけるため、展開・先端科目に属する多数かつ多様な科目を選択必修科目とする。
- 現行法を相対化し、批判的に検討することのできる能力を高めるため、基礎法科目や外国法科目を選択必修科目として充実させ、履修を推奨する。
- 市民のための法律家たりうる能力を身につけるべく、市民の日常生活の中で生じる生の紛争と紛争当事者にじかに接する機会を提供するため、エクスターンシップ等の法律実務基礎科目を必修科目または選択必修科目とする。
≪教育方法に関する方針≫
- 法律基本科目のうち、法曹に共通して必要とされる専門的学識の修得を目指す科目(基礎科目)においては、原則として講義の方法によって授業を行う。
- 法律基本科目のうち、法曹に共通して必要とされる専門的学識の応用能力(法的な推論、分析、構成及び論述の能力)の修得を目指す科目(応用科目)においては、原則として演習の方法によって授業を行う。
- 展開・先端科目においては、法曹に必要とされる専門的な法律の分野に関する専門的学識及びその応用能力の修得のため、講義及び演習の方法によって授業を行う。
- 基礎法学・隣接科目においては、法曹に必要とされる専門的な法律の分野に関する専門的学識及びその応用能力の修得のため、講義及び演習の方法によって授業を行う。
- 法律実務基礎科目においては、将来の法曹としての実務に必要な学識及び能力の修得のため、講義、演習及び実習の方法によって授業を行う。
≪学習成果の評価に関する方針≫
- 学生の学修成果を適切に把握するため、「大阪公立大学における教育の内部質保証に関する方針」に従って、アセスメントポリシーとアセスメントリストを定め、複数の評価指標・方法を用いて定期的に、本専攻の教育カリキュラムの学修成果の評価を行う。
- 科目の到達目標の達成状況を基準にした成績評価ガイドラインを定め、それに則した成績評価を行う。科目の到達目標および評価方法・評価基準はシラバスに明記する。
- 講義科⽬及び演習科⽬は、原則として、学期末の所定の試験期に実施する試験(以下「定期試験」という。)を含めた複数の要素を考慮して成績評価を⾏う。
- 定期試験については、成績評価の明確性と公平性を確保するため、定期試験に係る成績評価の基準を作成し、学生に対して開示する。
アドミッション・ポリシー
- 大阪公立大学法学研究科法曹養成専攻は、大都市であるがゆえに発生する様々な法的問題に即応できる高度な法的能力を備えた、真のプロフェッションとしての法曹の養成を目的とする。この目的のもと、本専攻は、新たな法的問題に果敢にチャレンジする精神、現にある法を相対化し、批判的に検討することのできる高度の能力、人間という存在への深い関心、人の苦しみに共感しようとする姿勢、人々及び社会のために困難な仕事を遂行しようとする志を有する学生を求めている。
- 入学者選抜にあたっては、法曹となろうとする者に必要とされる専門的学識及び応用能力並びに法曹としての実務に必要な学識及び能力並びに素養を涵養するための教育を受けるために求められる適性及び能力の有無を適確かつ客観的に判定する。
- 入学者選抜にあたっては、大学で法律学を学んだ者のみならず、公平性、開放性、多様性の理念のもと、法律学以外の分野での専門知識や社会経験を有する者も受け入れる。このため、一般選抜において、法学既修者のための2年短縮型と、法学未修者のための3年標準型に分けて、試験を実施する。
- 2年短縮型の入学者選抜では、論述式の法律試験科目において、文章の正確な読解力、理論的な推論・分析・判断を的確に行うことのできる能力、および思考のプロセスと結果とを明確に表現する能力のほか、本専攻において1年次に提供される法律基本科目についての基礎的な学識、および2年次配当科目の履修の前提として必要な学識を備えているかどうかを判断する。加えて、書面審査により、上記(1)に示した人物としての資質を有しているかどうかを総合的に判断する。
- 3年標準型の入学者選抜では、小論文試験において、法科大学院における履修の前提として必要な能力、すなわち文章の正確な読解力、理論的な推論・分析・判断を的確に行うことのできる能力、そして、思考のプロセスと結果とを明確に表現する能力が備わっているかどうかを判断する。加えて、書面審査により、上記(1)に示した人物としての資質を有しているかどうかを総合的に判断する。
- 本専攻では、以上のほかに、「大阪公立大学(大学院法学研究科)及び大阪市立大学(法学部)の法曹養成連携協定」及び「大阪公立大学(大学院法学研究科)及び大阪公立大学(法学部)の法曹養成連携協定」に基づき、大阪市立大学及び大阪公立大学における法曹養成プログラムにおける教育を受けた者に対して、特別選抜を実施する。この入学者選抜では、学業成績及び提出書類により、上記(4)と同等の能力、学識及び資質を備えているかを判断する。