2025年度 入学式学長式辞
2025年4月3日
大阪公立大学
学長 櫻木 弘之
本日、大阪公立大学に入学された新入生の皆さん、ご入学、おめでとうございます。教職員を代表して、心よりお祝い申し上げます。
この良き日に、桜が満開の大阪城公園、大阪城ホールにおいて、学部・学域生 2,975名、大学院生1,586 名、合計 4,561 名の皆さんをお迎えできることを、大変嬉しく思います。そして、これまで長きにわたり、皆さんの成長を見守り、支えてこられたご家族の皆様、関係者の方々にも、心よりお祝いを申し上げます。また、ご多忙の中、ご臨席を賜りました大阪市長をはじめ、ご来賓の皆様に、篤く御礼申し上げます。
皆さんが今日という日を迎えるまでには、それぞれの立場で一生懸命に努力を積み重ねてこられたことと思います。その努力に対し、心からの敬意を表します。皆さんは、厳しい受験勉強を乗り越え、大阪公立大学の一員として、今、人生の新たな出発点に立っています。これから始まる大学生活、多くの仲間との出会い、そして未知の学問への探求に、喜びあふれていることでしょう。一方で、「大学ではどのような学びが待っているのだろうか」と、まだ具体的なイメージが持てない方もいるかもしれません。
大学での学びは、高校までの学びとは大きく異なります。それは、「すでに答えがわかっていること、確立された知識を身につける」だけではなく、「まだ誰も答えを知らないこと、答えがあるかどうかもわからないこと」にじっくりと向き合う学びです。また、これまで当たり前だと思っていたことにも、改めて問いを投げかけ、物事の背後にある「本質」を見出していく学びでもあります。こうした学びは、一朝一夕に身につくものではありません。しかし、大学での日々の学びを積み重ねる中で、知識と経験が結びつき、次第に物事を深く理解し、自ら考え抜く力が育まれていきます。
ここで、皆さんが大学での学びを充実させるために、大切なことを2つお話しします。
一つ目は、「まず、自らの専門を極める」ということです。自分が目指したいと思う分野、面白いと感じる領域を見つけ、徹底的に磨くことが大切です。現代社会の多様で複雑な課題は、一つの専門分野だけで解決できるものは少なく、分野を横断した多角的な視点が求められています。では、そのような中で、なぜ自分の専門を極めることが重要なのか——。それは、一人ひとりが確かな専門性を磨くことで、はじめて異なる分野との対話が生まれ、そこから新たな価値が生み出されていくからです。そうして結びついた専門性は、より広い視点から、学問の領域をさらに発展させ、実社会の複雑な課題を解決する力へとつながっていきます。
大学や大学院での学びの中で、まだ誰も解決していない課題を見つけ出し、新たな発見や洞察を積み重ねていく経験が、問題解決のための思考力と実践力を鍛えます。それらは個々の専門分野を超え、未知の課題に対応していく力となり、皆さんが社会に出てからも様々な場面で活かすことができます。ぜひ、自らの専門領域を探究し、「ここは誰にも負けない」、と胸を張れる確かな基盤を築き上げてください。
本学には、皆さんの探求心に応え、成長を支える教員と、共に学びを深め、視野を広げていける仲間がいます。そして、自らを高めていくための、多様で豊かな学びの環境が整っています。このかけがえのない学びの時間を大切にしながら、一つひとつの学びを積み重ね、自らの可能性を広げていってください。一歩一歩の学びと挑戦の積み重ねが、皆さん自身の力となり、未来を切り拓く確かな礎となっていきます。
そして、学びを充実させるために、大切なことの二つ目は、「学び続け・主体的に考える」ということです。現代社会は急速に変化し、テクノロジーの進展が社会のあり方を大きく変えつつあります。生成AIはすでに人間の知的活動を凌駕するほどの能力を持ち、高度な情報化によって、世界中の人々と瞬時に交流できる時代になりました。しかし同時に、真偽の定かでない情報があふれ、何を信じ、どのように行動すべきかを判断することが、かつてないほど難しくなっています。このような時代において重要なのは学び続けること、そして、それを活かしながら主体的に考える力を養うことです。時代が変わっても「変わらない本質とは何か」、逆に、「何を柔軟に変えていくべきなのか」を見極めるには、先人の知恵や歴史に学び、多様な視点を養い、それを自らの思考と行動に活かす力が求められます。新しい技術や膨大な情報に振り回されるのではなく、それらをどう使いこなし、どう活かすのかを主体的に考え、知恵として高めてゆくことが大切です。
この「学び続けること」と「主体的に考えること」を日々実践することで、変革の時代においても本質を見極め、新たな価値を生み出す力が育まれていきます。皆さんは、この姿勢を本学での学びの中で身につけ、社会に出てからも大切にし続けてください。
さて、皆さんが本日入学された大阪公立大学は、140年以上の歴史と伝統を受け継ぐ、大阪市立大学と大阪府立大学が統合し、3年前に誕生した日本最大の公立総合大学です。皆さんは、大阪公立大学としての第四期生にあたります。また9月からはこの会場の目の前、森之宮に新キャンパスがオープンし、皆さんはそこで学ぶ最初の学生となります。前身となる両大学は、共に明治初期、市民の負託を得て設立された、高等教育機関をその源流としています。それ以来、140年以上にわたり、社会を牽引する多くの優れた人材を輩出してきました。歴代の卒業生や教員、研究者は、大阪をはじめ、日本や世界のさまざまな分野で活躍し、科学の進歩や社会の発展を支える礎となり、広く貢献してきました。こうした歩みを支えてきたのは、大阪の人々が大学に寄せてきた熱い想いと大きな期待、そしてそれに応えるべく歴代の学生や研究者・教職員が積み重ねてきた、たゆまぬ努力と情熱です。
この歴史を礎に、令和4年の統合を経て、本学は個々の学問分野が長年培ってきた強みを活かしながら、新たな学術領域を創出し、時代に即応した国際水準の研究・教育を展開しています。そして、ここにいる皆さん一人ひとりの挑戦が、これからの大阪公立大学の歴史を築いていきます。現代社会の課題は複雑化し、単一の視点では解決できないものがますます増えています。皆さんには、本学での学びや経験を通じて、多角的で柔軟な視点を持ち、国際的な視野を広げながら、多様な文化や価値観を理解する姿勢を身につけていってください。皆さんがこれからの時代を築き、グローバルな舞台で活躍されることを期待しています。
現在、世界の情勢は極めて厳しく、不安定な状況にあります。各地で続く痛ましい紛争や戦争、大国間の対立の激化、さらには、未曾有の規模で発生する自然災害——。人類は、かつてないほど地球規模の課題に直面しています。こうした時代にあって、私達には、多様な文化や価値観を理解し、互いに協力し合う姿勢が、これまで以上に求められています。そして、その根本にあるのは、相手の大切にするものを認め、違いを尊重する心です。皆さんには、ぜひ学生時代に、自分とは異なる考え方や価値観に触れ、多様な背景を持つ人々と積極的に交流し、対話を重ねていただきたいと思います。そして、まずは身近なところから、互いの個性を尊重し合いながら学び、共に成長する経験を積み重ねていってください。
大学とは、多様な個性が交わり、新たな価値が生まれる場です。
人生をかけて真理の探究に挑む研究者、互いに切磋琢磨しながら学び合う仲間、そして社会の第一線で活躍する卒業生——。
それぞれが異なる視点と価値観を持ち、それを認め合いながら学び、挑戦し続けることで、人は成長し、豊かな人間性が育まれます。社会が不安定だからこそ、今、世界には、共感力と思いやりを持ち、未来をより良い方向へと導くことのできる、知性と実践力を兼ね備えたリーダーが求められています。皆さんがそのような高い志を持ち、本学での学びと経験を活かしながら自らの道を切り拓き、未来に貢献することを心から期待しています。
冒頭で、「皆さんは、大阪公立大学の一員として、人生の新たな出発点に立っています」と申し上げました。この節目を迎えられたのは、皆さん自身がこれまで努力を重ね、目標に向かって歩んできた成果にほかなりません。しかし、それと同時に、皆さんを支え、励まし、見守ってこられたご家族や友人、そして先生や多くの関係者の存在があったことも忘れてはなりません。さらに、本学で皆さんが学ぶことができるのは、大阪市民・大阪府民をはじめ、多くの方々のご理解とご支援によるものです。それは、未来を担う皆さんが、知を磨き、新たな価値を創造し、社会に貢献していくことへの信頼の証でもあります。そして、それはまた、本学で教育・研究に携わる私たち教職員にとっても、責任と使命を改めて自覚させるものです。この恵まれた環境で学べることへの感謝の気持ちを胸に、皆さん自身の可能性を最大限に伸ばし、未来を切り拓く一歩を確かに踏み出していってください。
最後に、本学の大学院で博士号を取得され、2012年にノーベル生理学・医学賞を受賞された山中伸弥先生の言葉を紹介します。山中先生は、博士研究員としてアメリカのグラッドストーン研究所に留学された際、当時の所長ロバート・マーレー先生から次の言葉を教わったといいます。
「Vision & Work Hard」——ビジョンを持ち、ひたむきに努力する。
同時に、山中先生はこうも語っています。「Work Hard」だけではいけない。努力し続けるうちに、大切な「Vision」を見失ってしまうことがある。だからこそ、なぜこの道を進んでいるのか、自分の志は何なのかを常に見つめ直しながら歩み続けることが大切だ——と。
皆さんも、これから勉学や研究に励み、やがて社会へと羽ばたく中で、目の前の課題に全力で取り組むあまり、自分自身の原点を見失いそうになることがあるかもしれません。そんなときは、今日この日、皆さんが感じた喜びや希望、描いた夢、そして支えてくれた人々への感謝の気持ちを、どうか思い出してください。そして、自らの「Vision」を再び描き直し、信じた道を歩み続けてください。
大阪公立大学での学びと経験が、皆さんの未来を切り拓く力強い一歩となることを心より願い、私の式辞といたします。
本日は誠におめでとうございます。