2026年度 入学式学長式辞
2026年4月6日
大阪公立大学
学長 櫻木 弘之
本日、大阪公立大学に入学された新入生の皆さん、ご入学、おめでとうございます。教職員を代表して、心よりお祝い申し上げます。
この良き日に、桜が舞う大阪城公園、大阪城ホールにおいて、学部・学域生2,979名、大学院生1,599名、合計 4,578名の皆さんをお迎えできることを、大変嬉しく思います。そして、これまで長きにわたり、皆さんの成長を見守り、支えてこられたご家族の皆様、関係者の方々にも、心よりお祝いを申し上げます。 また、ご多忙の中、ご臨席を賜りました大阪府知事をはじめ、ご来賓の皆様に、厚く御礼申し上げます。
今日ここに至るまで、皆さんはそれぞれの立場で、懸命に努力を重ねてこられたことと思います。その歩みに対し、心からの敬意を表します。皆さんは、厳しい受験勉強を乗り越え、大阪公立大学の一員として、今、人生の新たな出発点に立っています。これから始まる大学生活に期待を抱き、多くの仲間との出会いや、未知の学問への探究に、思いをめぐらせていることでしょう。一方で、「大学ではどのような学びが待っているのだろう」と、まだ具体的なイメージがわかない方もいるかもしれません。
大学での学びは、高校までの学びとは大きく異なります。大学では、与えられた問いに正確に答えるだけでなく、自ら問いを見いだし、その意味を考え続ける姿勢が求められます。 新しい知識や情報を受け取るだけではなく、さまざまなものの見方や学びの方法に触れながら、自らの視点を養い、物事をより深く捉えていくことが大切になります。そうした力は、容易に身につくものではありません。しかし、大学での日々の学びを重ねる中で、知識と経験が結びつき、物事を深く考え、自ら行動する力へと育っていきます。
大学での学びを深めていくうえで、大切なことは、自らの専門を極めることです。 自分が目指したい分野、心から面白いと思える領域を見つけ、それを深く掘り下げ、磨いていくことが大切です。大学や大学院での学びの中で、まだ誰も解決していない課題に向き合い、新たな発見や考察を積み重ねていく経験は、問題解決のための思考力と実践力を育てます。 そうして培われた力は、分野を越えて未知の課題に向き合う力となり、皆さんが将来、社会に出てからも、さまざまな場面で活かされていきます。
もっとも、入学した今の時点で、自分は何を専門として深く学んでいきたいのか、まだ漠然としていてよくわからないという人も多いかもしれません。しかし、それは決して不安に思うことではありません。これから、大学で幅広い学問の入り口に触れていく中で、自分は何を深く学びたいのかを、次第に見出していくことができるからです。
その大切な出発点となるのが、昨年9月に開設した森之宮キャンパスでの基幹教育です。この新しいキャンパスで、皆さんは大学での学びの第一歩を踏み出します。森之宮キャンパスには、森之宮ライブラリーや学習支援のための空間をはじめ、幅広い分野の学びに触れられる最新の教育・研究環境が整えられています。 昨年後期には、およそ6,000名の学生・教職員を迎えて、基幹教育と専門の教育研究が始まりました。この森之宮キャンパスでは、多彩な講義や最先端の研究に触れ、第一線で活躍する教員から学ぶことができます。学部・学域の垣根を越えて、ひとつのキャンパスで仲間と学び、多様な専門性に触れていく中で、自分が深く学んでみたいと思える分野の輪郭も、少しずつ見えてくるはずです。ぜひ、自分の専門に直結する科目だけでなく、少しでも面白そうだと思う講義や、これまであまり知らなかった分野にも、積極的に手を伸ばしてみてください。
そして、このキャンパスの実動にあたっては、森之宮担当の教職員をはじめ、全学の教育に携わる教職員、関係部署の多くの方々が、移転作業と新しい環境の整備に尽力されました。さらに、開設に向けた準備の段階から、大阪府・大阪市をはじめ、学内外の多くの方々のご支援とご尽力をいただき、この森之宮キャンパスは実現しました。こうした多くの方々の支えの上に、皆さんの学びがあることを心に留めながら、日々の学びを大切に深め、自らの可能性を大きく開いていってください。
このように、ひとつの大学の中で、多様な学びの機会と選択肢が広く開かれていることが、総合大学としての本学の大きな強みです。そして、その広がりと厚みを支えているのが、本学が長い年月をかけて育んできた豊かな学問の蓄積です。皆さんが本日入学された大阪公立大学は、140年以上の歴史と伝統を受け継ぐ大阪市立大学と大阪府立大学が統合して誕生した、日本最大の公立総合大学です。皆さんは、大阪公立大学としての第5期生にあたります。
前身となる両大学は、共に明治初期、市民の負託を得て設立された高等教育機関をその源流としています。それ以来、長きにわたり、社会を牽引する多くの優れた人材を輩出してきました。歴代の卒業生や教員、研究者は、大阪をはじめ、日本や世界のさまざまな分野で活躍し、科学の進歩や社会の発展を支える礎となり、広く貢献してきました。 こうした歩みを支えてきたのは、大阪の人々が大学に寄せてきた熱い想いと大きな期待、そしてそれに応えるべく、歴代の学生や研究者・教職員が積み重ねてきた、たゆまぬ努力と情熱です。
この歴史を礎として、令和4年の統合を経た本学は、それぞれの学問分野が長年培ってきた強みを活かしながら、新たな学術領域を生み出し、時代に即応した国際水準の研究と教育を展開しています。そして、今日ここにいる皆さんもまた、その想いを受け継ぎ、本学での学びを通して国際性豊かな視野と柔軟な思考を育んでいく新たな歩みの第一歩を、今日から踏み出していきます。皆さん一人ひとりが挑戦を重ね、自らの可能性を伸ばし、活躍することで、大阪公立大学に新たな歴史が刻まれていきます。ぜひ、本学の一員としての誇りを胸に、それぞれの歩みを力強く進めていってください。
現代社会の課題は複雑化し、一つの視点だけでは解決できないものがますます増えています。価値観が多様化し、さまざまな情報があふれる中で、何を信じ、どのように判断して行動すべきなのかを見極めることも、これまで以上に難しくなっています。世界に目を向ければ、先行きの見通せない不安定な情勢が続いています。各地で続く痛ましい紛争や戦争、未曾有の規模で発生する自然災害——。人類は、かつてないほど地球規模の課題に直面しています。
こうした時代だからこそ、私たちには、多様な文化や価値観を理解し、互いに協力し合う姿勢が、これまで以上に求められています。その土台にあるのは、相手の大切にするものを認め、違いを尊重する心です。皆さんには、ぜひ学生時代に、自分とは異なる考え方や価値観に触れ、多様な背景を持つ人々と積極的に交流し、対話を重ねていただきたいと思います。そして、まずは身近なところから、互いの個性を尊重し合いながら学び、共に成長する経験を積み重ねていってください。
大学とは、多様な個性が交わり、新たな価値が生まれる場です。
真理の探究に挑み続ける研究者、互いに切磋琢磨しながら学び合う仲間、そして社会の第一線や世界のさまざまな現場で活躍する卒業生――。
一人ひとりが異なる視点と価値観を持ち、それを認め合いながら学び、挑戦し続けることで、人は成長し、豊かな人間性が育まれていきます。
社会が不安定で、先を見通すことが難しい時代だからこそ、共感力と思いやりを持ち、未来をよりよい方向へ導いていくことのできる、知性と実践力を兼ね備えた人が求められています。皆さんがこれから生きていく社会では、知識も価値観も絶えず更新され、今日の答えが明日もそのまま通用するとは限りません。そのような時代にあって、皆さんには、本学での学びを通して、多角的で柔軟な視点を養い、自ら問いを立て、考え続ける姿勢を培ってほしいと思います。そうした学びを続けていく姿勢が、物事の本質を見極め、新たな価値を生み出す力につながっていきます。皆さんがそのような高い志を持ち、本学での学びと経験を活かし、未来に貢献するリーダーとなっていくことを心から期待しています。
冒頭で、「皆さんは、大阪公立大学の一員として、人生の新たな出発点に立っています」と申し上げました。この節目を迎えられたのは、皆さん自身がこれまで努力を重ね、目標に向かって歩んできた成果にほかなりません。それと同時に、皆さんを支え、励まし、見守ってこられたご家族や友人、先生方、そして多くの関係者の存在があったことも、どうか忘れないでください。そして何より、本学での皆さんの学びは、大阪市民・大阪府民をはじめ、多くの方々のご理解とご支援によって支えられています。それは、未来を担う皆さんが、知を磨き、新たな価値を生み出し、社会に貢献していくことへの信頼の証でもあります。それはまた、本学で教育・研究に携わる私たち教職員にとっても、責任と使命を改めて自覚させるものです。
この恵まれた環境で学べることへの感謝の気持ちを胸に、皆さん自身の可能性を最大限に伸ばし、未来を切り拓く一歩を確かに踏み出していってください。そして、今日この場で抱いている喜びや決意を、これからの大学生活の原点として、大切に胸に刻んでください。
皆さんの大学生活が、多くの出会いと挑戦を通して志を育み、人として大きく成長していく、かけがえのない時間となることを心より願い、私のお祝いの言葉といたします。
本日は誠におめでとうございます。