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2024年1月29日

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居住環境学分野 修士2回生 吉田幹央さんの修士論文が学術誌Sustainabilityに掲載されました。

研究概要:

世界の観光都市では、過度な観光開発によるオーバーツーリズムが社会問題となっています。その中でも、居住環境に対する影響である、観光ジェントリフィケーションが問題視されています。特に、住宅価格の上昇は、地域住民の住宅アフォーダビリティを悪化させる可能性があるため、持続可能な居住環境の実現に向けた重要な課題です。そこで、本研究は、2015年から2019年の京都市を対象に、宿泊施設の増加と住宅価格の関係性を統計的に分析しました。

その結果、上京区、中京区、下京区からなる歴史的中心エリアにおいて、旅館・ホテルの増加と売住宅の価格上昇が有意に関係していました。加えて、旅館・ホテルが一件増加すると、売住宅の平均価格が約200万円上昇することが分かりました。実際に、2015年から2019年の間に、平均価格は約640万円上昇していました。以上の結果は、観光ジェントリフィケーションが住宅アフォーダビリティを悪化させ、地域住民の住宅取得を困難にしている可能性を示しています。

無制限な観光開発は、京都市の居住環境としての役割の低下、それに伴う人口流出、地域住民により継承されてきた文化の衰退につながる重要な問題です。本研究の結果から、持続可能な観光都市の実現に向け、歴史的中心エリアにおいて、観光開発の適切な管理と住宅取得補助といった都市政策が必要だと言えます。

 

※「住宅アフォーダビリティ」とは、住宅取得能力を表す概念です。収入に対する住居費の割合で表されます。

吉田幹央さん1

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■掲載誌情報 雑誌名:Sustainability, Vo. 16, Issue 1, No. 309 (2024) ※ IF=3.9

論文名:Housing Affordability Risk and Tourism Gentrification in Kyoto City

著者:Mikio Yoshida and Haruka Kato

掲載URL:https://doi.org/10.3390/su16010309

 

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