お知らせ
2025年12月18日
- 研究
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緒方康介 教授の査読論文が学術誌『犯罪学雑誌』に掲載されました。
研究概要
大学における「犯罪心理学」は国家資格(公認心理師)の前後で変化し始めています。対人援助の専門職を想定した資格養成を念頭に置くと,臨床心理学的色彩の濃い犯罪心理学の授業が展開されてしまうきらいがあります。
そこで調査Ⅰでは,公認心理師法施行前後での犯罪心理学に関する教科書テキスト40冊を分析しました。各教科書の章タイトルをテキストマイニングにより単語に分解し,共起ネットワークで分析したところ,法施行前から存在していた臨床心理学に関連の強い専門用語に加えて,法施行後には「心理支援」や「司法・犯罪分野」など,公認心理師と関係の深い単語が出現していました。一方,非臨床系のキーワードは法施行後に影を潜める結果となっていました。
続く調査Ⅱでは,researchmapという研究者情報データベースを用いて,○○心理学を専門とする学者の研究キーワードを分析しました。多次元尺度法によって布置したところ,「犯罪心理学」と近い距離になったのは,順に「家族心理学」,「人格心理学」,そして「臨床心理学」でした。すなわち,家族心理学や人格心理学や臨床心理学を専門としている学者ほど,同時に犯罪心理学に対しても専門性を自負しているという現状でした。
公認心理師法施行後,国家資格の養成に絡めて,犯罪心理学における臨床心理学的要素の重要性は大きくなっているのかもしれません。しかしながら,犯罪心理学は臨床心理学の単なる実践領域ではありません。このことを踏まえて,領域の多様性を維持・発展させていく必要性が議論されました。
掲載誌情報
雑誌名:犯罪学雑誌(日本犯罪学会)
論文名:犯罪心理学の授業に大学生が期待することー臨床心理学との比較を通して-
著 者:緒方康介