お知らせ
2026年7月29日
- 研究
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袁継輝准教授:大阪府内の微気候が住宅のCO₂排出量評価に与える影響を解明
大阪府内の微気候が住宅のCO₂排出量評価に与える影響を解明
~都市ヒートアイランドを考慮した地域別気象データの活用により、建築分野の脱炭素評価の高精度化へ~
ポイント
- 大阪府内9地域の実測気象データを用いて、都市ヒートアイランドや地形による微気候の違いが住宅の暖冷房負荷およびCO₂排出量評価へ与える影響を定量的に明らかにしました。
- 従来広く利用されている大阪市1地点の気象平年値では、地域によって暖房・冷房負荷を5~10%程度過大・過小評価する可能性があることを示しました。
- 地域ごとの実際の気象条件を建物エネルギー評価へ反映することで、より正確な脱炭素政策や建築物の省エネルギー設計への活用が期待されます。
グラフィカルアブストラクト

概要
2050年カーボンニュートラルの実現に向け、建築分野では住宅・建築物のエネルギー消費量およびCO₂排出量を高精度に評価することが求められています。しかし、現在の建築設計やエネルギー評価では、大阪府全域に対して大阪市中心部の気象平年値(Japan Meteorological Agency:JMA 1991–2020平年値)が代表気象データとして広く利用されています。
本研究では、大阪府内9地点(大阪市、堺市、豊中市、枚方市、八尾市、熊取町、関空島、能勢町、生駒山)の2025年実測気象データを解析し、それぞれの地域の微気候特性を比較しました。その結果、都市ヒートアイランドや標高、海岸距離などの違いによって暖房・冷房需要および住宅のCO₂排出量が大きく変化することを明らかにしました。
さらに、建築物の熱負荷計算、暖冷房エネルギー消費量およびCO₂排出量を地域別に評価することで、従来の単一気象データを用いた評価との差異を定量化し、地域特性を考慮した建築エネルギー評価の重要性を示しました。
研究の背景
日本では建築物のエネルギー性能評価において、代表気象データ(標準気象データ)が広く利用されています。しかし、大阪府のように都市部、郊外、山間部、沿岸部が混在する地域では、都市ヒートアイランド現象や地形の影響により地域ごとに気温環境が大きく異なります。
こうした地域差を考慮しない場合、住宅の暖房・冷房負荷やCO₂排出量を正確に評価できず、省エネルギー設計や地域ごとの脱炭素施策に誤差を生じる可能性があります。本研究では、大阪府全域を対象として、この課題に取り組みました。
研究の内容
研究では大阪府内9地点の2025年時間別気温データを収集し、日本気象庁(JMA)の1991~2020年気象平年値との比較を実施しました。
建物については、日本の住宅を想定した熱負荷モデルを構築し、
- 暖房負荷
- 冷房負荷
- Heating Degree Days(HDD)
- Cooling Degree Days(CDD)
- CO₂排出量
を算出しました。
さらに、各地域の気温差と暖冷房負荷との相関解析を行い、都市ヒートアイランドや標高差が住宅エネルギー需要へ及ぼす影響を定量的に評価しました。
主な研究成果
解析の結果、大阪市など都市中心部では都市ヒートアイランドの影響により冬季の暖房需要が小さくなる一方、夏季の冷房需要は増加することが確認されました。一方、能勢町や生駒山など標高の高い地域では暖房需要が大きく増加し、従来の代表気象データでは暖房エネルギーを過小評価する傾向が示されました。
地域によって暖房負荷は約5~10%程度の差異が生じ、日単位ではCO₂排出量評価にさらに大きな誤差が発生する可能性があることも明らかとなりました。
また、気温差と暖冷房負荷との間には非常に高い相関が確認され、地域別気象データを利用することで建築物のエネルギー評価精度を大幅に向上できることが示されました。
今後の展開
本研究で提案した評価手法は、大阪府だけでなく東京、名古屋、福岡など他の都市圏にも容易に適用できます。
今後は、
- 将来気候変動シナリオとの統合
- 都市ヒートアイランド緩和技術の効果評価
- AIを活用した都市エネルギー予測
- デジタルツインを用いた都市スケールでの脱炭素評価
へ発展させる予定です。
地域ごとの気象条件を考慮した建築エネルギー評価を実現することで、より精度の高いカーボンニュートラル政策や都市計画への貢献が期待されます。
掲載誌情報
- 雑誌:Case Studies in Thermal Engineering(Elsevier)
- 論文名:Spatial Microclimate Effects on Residential Carbon Emissions: Osaka Districts Versus JMA Climatological Normals
- 著者:Jihui Yuan(大阪公立大学), Zhichao Jiao(煙台大学), Patryk Antoszewski(ポズナン生命科学大学), Adam Choryński(ポズナン生命科学大学), Gangyi Tan(華中科技大学)
- DOI:https://doi.org/10.1016/j.csite.2026.108391
研究内容に関する問い合わせ先
大阪公立大学大学院生活科学研究科
准教授 袁 継輝(えん けいき)
TEL:06-6605-2833
E-mail:yuan[at]omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。