特別招へい教授
神谷 信夫(かみや のぶお)
現職
大阪公立大学 人工光合成研究センター 特別招へい教授 /
大阪市立大学 名誉教授
出身地:愛知県
研究分野:構造生物化学、タンパク質結晶学
研究概要
植物はどうやって酸素を生み出すのか ―光合成のなぞ「マンガンクラスター」の分子構造を解明
光合成は、太陽の光エネルギーを利用して、地球に豊富な水と有機物の燃え残りと言える二酸化炭素から、酸素とブドウ糖を作り出す過程です。ブドウ糖は、我々人間を含め、ほとんどすべての地球生命体が呼吸によりエネルギーを取り出している栄養源です。
葉緑体にあるたんぱく質20個の複合体「光化学系II」(PSII,図1)は、太陽からの光を受けて、水を分解して酸素分子を発生させ、同時に電子を発生させています。この電子は、二酸化炭素をブドウ糖まで変化させるために利用されます。これまでPSIIの酸素発生反応は、4個のマンガン原子(Mn)と1個のカルシウム原子(Ca)が複数の酸素原子(O)により結びつけられた金属・酸素クラスター(マンガンクラスター)の上で進行しているとされていましたが、そのクラスターの正確な化学組成と詳細な原子配置は明らかにされていませんでした。
神谷教授は、岡山大学の沈建仁教授らと共同で、PSIIの結晶の質を従来と比べて飛躍的に向上させることに成功し、大型放射光施設SPring-8(兵庫県・西播磨)を利用してX線結晶構造解析を行いました。これにより、マンガンクラスターはMn4CaO5の組成をもち、全体として“歪んだ椅子”の形をしており、ひとつのMnとCaにそれぞれ2個の水分子が結合していることが明らかになりました(図2)。これら4個の水分子のいずれかは、マンガンクラスターから発生する酸素分子の中に取り込まれるものと考えています。
本研究の成果は、太陽の光エネルギーを生物が利用可能な化学エネルギーに変換する機構を解明し、地球の環境問題、エネルギー問題、食料問題の解決につながるものと期待されています。
図1 光化学系II複合体の全体構造。2個の単量体からなる2量体構造を取っており、2個の赤丸の場所に酸素発生中心がある。
図2 酸素発生中心の詳細な化学構造。紫色はマンガン原子、黄色はカルシウム原子、赤は金属原子を結ぶ酸素原子、オレンジ色は酸素発生にかかわる水の酸素原子。
経歴
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1972(昭和47)年
- 愛知県立半田高等学校 卒業
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1976(昭和51)年
- 名古屋大学理学部 卒業
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1981(昭和56)年
- 同大大学院理学研究科 博士課程 満了
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1984(昭和59)年
- 同大大学院理学研究科 博士号取得
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1984(昭和59)年
- 高エネルギー物理学研究所 放射光実験施設(PF)客員研究員
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1985(昭和60)年
- 理化学研究所 研究員
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1995(平成7) 年8月
- 理化学研究所 副主任研究員
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1998(平成10)年
- 理化学研究所 播磨研究所(SPring-8)研究技術開発室室長
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2005(平成17)年4月1日
- 大阪市立大学 大学院理学研究科 教授
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2010(平成22)年4月
- 同大学 複合先端研究機構 教授
- 2011(平成23)年4月
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Nature誌に共著論文“Crystal structure of oxygen-evolving photosystem II at a resolution of 1.9Å”を発表
- 2013 (平成25) 年6月~2015 (平成27) 年3月
- 同大学 人工光合成研究センター センター所長
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2015 (平成27) 年4月~2019(平成31)年3月
- 同大学 複合先端研究機構 副機構長 / 教授
- 2019 (平成31) 年4月
- 同大学 複合先端研究機構 特別招へい教授 / 名誉教授
- 2020 (令和2) 年4月
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同大学 人工光合成研究センター 特別招へい教授
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2022 (令和4) 年4月~
現在 -
大阪公立大学 人工光合成研究センター 特別招へい教授 / 大阪市立大学 名誉教授
受賞歴
- 1996(平成8)年
- 日本結晶学会賞
- 2011(平成23)年
- サイエンス誌「Breakthrough of the Year 2011」に選出
- 2011(平成23)年
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「酸素発生光化学系IIの1.9 Å 分解能における結晶構造の決定」で日本光合成学会特別賞「光と緑の賞」
- 2012(平成24)年
神谷 信夫の報道提供用資料
クレジット
大阪公立大学
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