2023年度 入学式学長式辞

2023年45

大阪公立大学
学長 辰巳砂 昌弘

大阪公立大学に入学された新入生の皆さん、誠におめでとうございます。本日、学部・学域生2,976名、大学院生1,457名、合計4,433名の皆さんを本学にお迎えできたことは、私たちの大きな喜びです。大阪公立大学を代表して皆さんの入学を心より歓迎します。

また、この間、皆さんが晴れて入学する日を心待ちにし、これまで皆さんの勉学を様々な形で励まし、支えてこられたご家族始め関係者の皆さまに、心よりお慶び申し上げます。

大阪公立大学は、昨年開学したばかり新しい大学です。皆さんは開学2年目に入学された二期生ということになります。皆さんをお迎えして、また同伴の方々にもご来席頂いて、昨年に引き続きここ大阪城ホールにてリアルの入学式を挙行できますことを大変嬉しく思います。

3年に及ぶパンデミック下での生活は、すべての人が初めての体験でした。皆さんの場合は、この時期が受験の年と重なりました。この不安な3年間を乗り越えて来られた皆さんには、その努力と忍耐に敬意を表すとともに、心からお疲れ様と申し上げたいです。その上で、このコロナ禍がもたらした社会の変化に対するアフターコロナの対応は、皆さんにとっても大変大切です。今後の新しい価値観を予測し、これから始まる皆さんの新しいステージをスタートさせて頂ければと思います。また昨年、ウクライナでの戦争が始まり、様々な点で世界が大きく変化しています。皆さんには、この大きな変化に翻弄されることなく、物事の本質を見極めながら行動して頂きたいと願っています。残念ながら地球上では今も戦争が行われている状況です。皆さんが今日の日を無事迎えられていることを当たり前のこととせず、平和に対する感謝の気持ちを常に持ちながらこれからの大学生活を送って頂ければと思います。人々の価値観はこれからますます多様になると思われます。本学で学ばれる皆さんには、まずはその多様な価値観を認め尊重しあえる人になって頂きたいと願っています。

さて、本学は、大阪市立大学と大阪府立大学が1年前に統合して設立された我が国最大規模の公立総合大学です。本学の基となった大阪市立大学と大阪府立大学についてまずはお話しさせて頂きます。この2つの大学はいずれも140年以上の歴史を有する伝統ある大学で、それぞれ大阪商業講習所、獣医学講習所を淵源としています。大阪商業講習所は現在の商学部の前身、獣医学講習所は現在の獣医学部の前身です。私は、本学の初代学長として、大阪商業講習所創立員代表・五代友厚の「利他」の精神、大阪市長・關一の「国立大学のコッピーであってはならぬ」、大阪府知事・赤間文三の「日本一の大学を作る」といった、前身校を支え、育んでいった先人の思いは、大阪公立大学にも引き継いでいくべきもの、誇るべきものとして守っていきたいと考えています。

両大学とも新制大学のスタートは74年前の1949年に遡ります。浪速大学という名称で、工学、農学が中心となってスタートし、すぐに改称された大阪府立大学は、その後、統合改組を繰り返しながら発展してきました。そして2005年には、大阪府立の「大阪女子大学」、「大阪府立看護大学」と統合して今に至る大阪府立大学が誕生しています。「旧大阪府立大学」は、「実学を重んじる大学」として、「大阪女子大学」は「リベラルアーツ」の理念のもと、「大阪府立看護大学」は、質の高い医療専門の高度専門職業人養成大学として、大阪と我が国の学術研究と高等教育の発展に大きく寄与してきました。一方、大阪市立大学は、旧制大阪商科大学を母体に設立され、後に医学部となる大阪市立医科大学が加わり、新制大学設立当初から最終形に近いフルスペックの総合大学で、今日までその良き伝統を守り抜いてきました。恒藤恭大阪市立大学初代学長の示した「大阪ひいては日本の発展に寄与すべく、学理探求の自由尊重のもと、理論と実際的応用との有機的な連結を重視する学風」を謳う大学の理念は、今でも色褪せることはなく、これまで、「都市とともに」を合い言葉に、その都市を支える人材育成と産業活性化や健康増進などに貢献してきました。

大阪公立大学の開学は、ここ大阪の様々な公立高等教育機関が合流することの総仕上げであると私は考えています。そして、この全く異なる文化や伝統の出会いと調和こそが、12学部・学域による「総合知」と共に創る「共創」を掲げる本学が今後発展するための原動力と考えています。今、皆さんをお迎えしたことで、キャンパス内には大阪市立大学、大阪府立大学、大阪公立大学、3大学の学生が共に学ぶ環境となっています。様々な局面で、多様性と多様な価値観を感じて頂けるのではないかと思っています。昨年新しく誕生した大阪公立大学がこれから発展していく長い歴史の中で、今は一つの通過点に過ぎませんが、この節目のときに入学された皆さんは、この多様な文化が交わる中から新大学のカラーを生み出してゆく重要な役割を担って頂いています。

さて、新入生の皆さんに改めて問いますが、大学とはどのようなところでしょうか。これまでの教育機関との違いは何でしょうか。大学の基本機能は教育、研究、社会貢献です。知の継承、知の創造、知の活用を図る場と言い換えることも出来ます。学問をするところと一言で表現する方もおられるでしょう。あの「学問のすゝめ」において、福沢諭吉は「天は人の上に人を造らず、人の下に人を造らず」と万民の平等を説きましたが、それに続けて、そこに違いが生まれる理由を「学ぶと学ばざるとに由りてできるものなり」と述べています。また、学問については「専ら勤むべきは人間普通日用に近き実学なり」とも、「飯を炊き風呂の火を焚くも学問なり」とも述べています。明治維新、あの激動の時代、人は一生学び続け、一人一人が自分の頭で考えられる判断力を身につける重要性を説いていると私は思います。これは、今のこのパンデミックや戦争がもたらしている大きな変化の時代にも繋がる話ではないでしょうか。人生100年時代に際して、私は、皆さんには今後ずっと学び続けて頂きたい、また溢れる情報を自分なりに整理し、自ら考え続けて頂きたいと思っています。

「考える」といえば、大学はこれまでの教育機関にもまして考えることを大切にしているところです。ただ、考えるためには、その基となる知識をしっかりと身につける必要があります。論語で「学びて思わざれば則ち罔(くら)し、思いて学ばざれば則ち殆(あやう)し」と言われるように、「考える」ことが、独断に陥らないように「学ぶ」のです。大学や大学院では、ただ人から教えられることを学ぶのではなく、自ら進んで学ぶ「能動的な学び」が基本になります。つまり、学生は「自主・自立」のもとで学ぶことを前提にしています。大学では、講義・演習・実習・実験・ゼミなどが用意されていますが、これらは皆さんが自身で習得し成長される「学び」を、最適な形でサポートするためのものです。また、どんな学問を身につけるかについても、自分で履修計画を立てるのが基本になります。皆さんが社会に出て、様々な課題に取り組んでいくとき、一つの学問分野だけで解決できることは皆無といっても過言ではありません。本学には副専攻や留学プログラムなど多彩なメニューが用意されていますので、是非皆さん独自のカリキュラムを構築して、「学び」を充実させて下さい。「学び」を充実させることは「正しく考えること」に繋がります。本学で考えることの楽しさを体験して頂ければと思います。

能動的な学びについては、学部・学域1年生の前期から「初年次ゼミナール」という全学必修科目のゼミを受講して頂きます。全学部・学域の教員が担当する多彩なテーマの中から、興味のあるものを選び、学部・学域の枠を越えて集まった多様かつ少人数の学生と教員によって進めるアクティブラーニング型授業です。少数多様なメンバーによるディスカッションを通して、能動的な学びを体験して頂きます。このゼミナールによって、皆さんには価値観の多様性とともに総合知の大切さを知って頂くことができると考えています。大阪公立大学では専門分野、価値観の多様性に加えて学生、教員、職員の多様性、そして国際性やダイバーシティを重んじています。常に新しいものにチャレンジする高い志をもって、互いの価値観を尊重し合いながら、学びを深めて頂ければと思います。

さらに本学には、これまで述べてきた多彩な教育カリキュラムに加えて、世界最先端の充実した研究設備、人工光合成研究センターや植物工場研究センター、全固体電池研究センターに代表される実証実験研究所、また共創研究センターと呼ばれる約50のユニークな学際研究所があります。基礎から応用まで、教職員・学生が一丸となって取り組む多様な学術研究はグローバルに発信され、世界中の学界や産業界から高い評価を受けています。

また、学問を通じた知的活動だけでなく、クラブ活動、ボランティア活動、地域での交流活動、学園祭なども活発に行われており、企画力、コミュニケーション力はじめ様々な能力を養うことが出来ます。自分の裁量で自分を磨くことが出来るのが大学です。自由を謳歌できるこの限られた時間に何をなすべきか、大学でしか出来ないことを是非皆さん自身で見つけて頂ければと思います。大学・大学院生活を通じて、これからの皆さんには様々な素晴らしい出会いが待っています。本学で学んだ学問、良き友、巡り会えた良き師、これらが、皆さんが社会に出て活躍される礎になります。10年先、20年先さらには何十年先に、大阪公立大学で学んで良かったと思うことができるよう祈念いたしております。 

以上をもちまして、本日から始まる新入生の皆さんの新しい生活における飛躍を期待して祝辞と致します。本日は、誠におめでとうございます。