産学官民共創推進本部長挨拶

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1963年に、バックミンスター・フラーというアメリカの思想家が「宇宙船地球号」という概念を提唱しました。この概念は、1972年の国連人間環境会議で世界が目指すべき行動指針のスローガンとして取り上げられました。地球上のあらゆる生物は、有限な資源の下で共同生活を営む宇宙船の乗組員と同じ環境下にあることを、それゆえ、環境の保全や快適な生活さらにはその持続的な発展のために、将来を見越した行動をとることの必要性を説いています。

2022年4月に誕生した大阪公立大学は、日本最大の公立総合大学にふさわしい知の拠点となることを宣言しています。当面の活動指針は、「大阪公立大学ビジョン2030~大阪公立大学の将来構想~」に示されています。人口減少や人口構成の変化、東南海地震とそれに伴う巨大津波の発生や上町断層帯の地震などをはじめとする自然災害、日本国内並びに世界情勢における経済的地位の変化、独自文化の継承と発展ならびに萌芽など、大阪にはさまざまな課題や懸念事項があります。大阪公立大学は、技術インキュベーション機能と都市シンクタンク機能を備え、さまざまな人々・立場のステークホルダーと協議・協働して、成熟した未来社会の共創に貢献したいと考えています。

本学のこのような取り組み姿勢は一定の評価を得ており、J-PEAKS(地域中核・特色ある研究大学強化促進事業)にも採択されています。この事業は、大学の強みや特色ある研究力を核とした戦略的経営の下、他大学との連携等を図りつつ、研究活動の国際展開や社会実装の加速等により研究力強化を図る環境整備を推進し、我が国全体の研究力の発展を牽引することを、採択大学に求めています。本学は、イノベーションアカデミー事業をベースとしてJ-PEAKS事業を推進するために産学官民共創推進本部を設置しました。研究成果の知財化・管理・活用やスタートアップの創出・支援を担う技術移転推進部門と、産官民との共創による研究成果の社会実装を担う未来都市創成部門を両輪として、J-PEAKS事業期間を超えた中長期の未来を見据えた大学改革ひいては未来社会創出の先導に取り組んでいます。

大阪公立大学のこれらの取組みは、大阪あるいは関西という宇宙船地球号の1セクションの活動が主たるものとなるかもしれません。しかし、この活動の成果が宇宙船地球号のあらゆるセクション(アジアさらには世界)に波及効果をもたらすものでありたいと考えています。そのためには、多様なレベル・階層・ステークホルダーによる取り組み(Multi Co-Creation)が必要です。社会から期待され、共創したいと思っていただけるように取り組んでいきたいと考えています。ご支援とご協力を賜りたいと切望します。

産学官民共創推進本部長
重松 孝昌