最新の研究成果

認知症に加えALSの治療法に光 前頭側頭型認知症・ALSに対するリファンピシンによる改善効果を確認

2022年5月17日

  • 医学研究科
  • プレスリリース

本研究のポイント

◇ C9orf72 遺伝子の変異によって発症する前頭側頭型認知症(FTD)や筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、いまだ治療法が確立されていない
◇今回、C9orf72遺伝子に変異のあるモデルマウスにリファンピシンを1カ月間経鼻投与したところ、ヘキサヌクレオチドリピートの異常伸長(HRE)に起因する神経病理が抑制され、認知機能が改善
◇これまでの研究と合わせて、リファンピシンの経鼻投与は神経変性疾患の発症・進行抑制に有効であることが示唆された

概要

大阪公立大学大学院医学研究科認知症病態学の富山 貴美(とみやま たかみ)研究教授らの研究グループは、リファンピシンの経鼻投与が前頭側頭型認知症(FTD)や筋萎縮性側索硬化症(ALS)にも有効であるとモデルマウスを用いた研究で明らかにしました。本研究結果は、リファンピシンが神経変性疾患に広く有効な薬となる可能性を示しています。

FTDやALSはいまだ有効な治療法のない神経変性疾患です。原因として最も多いのがC9orf72遺伝子の非翻訳領域に存在するヘキサヌクレオチド(GGGGCC)リピートが異常伸長(HRE)する変異です。これにより生み出された異常なRNAやタンパク質が凝集し、神経系に蓄積することで神経変性が起こると考えられています。

今回、本研究グループは、HREを有するC9orf72遺伝子発現モデルマウスにリファンピシンを1カ月間経鼻投与し、マウスの認知機能を観察しました。その結果、リファンピシンを投与することでHREに起因する神経病理が抑制され、マウスの認知機能が改善することが明らかになりました。

本研究成果は、2022年5月6日(金)『Biomedicines』(IF = 6.081)にオンライン掲載されました。

※結核やハンセン病などの治療に使われてきた抗生物質。これまで本研究グループは抗生物質リファンピシンの経鼻投与がアルツハイマー病やタウ関連前頭側頭型認知症、レビー小体型認知症などの変性性認知症に有効であるとモデルマウスを用いた研究で解明。

研究の概要図

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研究者からのコメント

私たちはこれまで、抗生物質リファンピシンの経鼻投与がアルツハイマー病やタウ関連前頭側頭型認知症、レビー小体型認知症などの変性性認知症に有効であることをモデルマウスで示してきました。今回、C9orf72遺伝子を原因とする前頭側頭型認知症・筋萎縮性側索硬化症にも有効であることがわかり、リファンピシンは神経変性疾患に広く有効な薬となる可能性が示唆されました。

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富山 貴美研究教授

雑誌名:

Biomedicines(IF = 6.081

論文名:

C9orf72 hexanucleotide repeat expansion-related neuropathology is attenuated by nasal rifampicin in mice

著者:

Yukari Hatanaka1, Tomohiro Umeda1, Keiko Shigemori1, Toshihide Takeuchi2, Yoshitaka Nagai2, and Takami Tomiyama1

1 Department of Translational Neuroscience, Osaka City University Graduate School of Medicine, Osaka 545-8585, Japan

2 Department of Neurology, Kindai University Faculty of Medicine, Osakasayama 589-8511, Japan

掲載URL

https://www.mdpi.com/2227-9059/10/5/1080

資金情報

本研究は公益財団法人大阪認知症研究会、株式会社メディラボRFPによる支援を受けて行われました。

プレスリリース全文 (643.1KB)

研究内容に関する問合せ先

大阪公立大学大学院医学研究科認知症病態学
担当:富山 貴美
TEL:06-6645-3921
E-mail:gr-med-neurosci[at]omu.ac.jp 

[at]を@に変更してください。

取材に関する問い合わせ先

大阪公立大学 広報課
担当:上嶋 健太
TEL:06-6605-3411
E-mail:t-koho[at]ado.osaka-cu.ac.jp

[at]を@に変更してください。

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