最新の研究成果

ベイズ統計を用いてスペクトルを予測!蛍光X線分析の測定時間の短縮に成功

2022年12月23日

  • プレスリリース
  • 工学研究科

ポイント

◇蛍光X線分析にベイズ推定1を応用しスペクトルを予測することで、測定時間を大幅に短縮することに成功。
◇工業製品や有害廃棄物のベルトコンベア上での分析など、蛍光X線分析の迅速化が期待。 

概要

大阪公立大学 大学院工学研究科の松山 嗣史特任助教、中江 理紀大学院生(大阪市立大学大学院 前期博士課程2年)、辻 幸一教授と日本原子力研究開発機構の共同研究グループは、蛍光X線分析にベイズ推定を応用することで、ガラス標準試料2に1時間蛍光X線を照射して得られたスペクトルと同等の分析結果を得るために必要な測定時間を、7秒から3秒まで、4秒縮めることに成功しました。

蛍光X線分析は、試料にX線を照射して得られたスペクトルから元素の同定や存在量を解析する手法で、多くの元素を同時に検出することができます。元素を正確に同定するため、通常は10分ほどX線を照射し精度の高いスペクトルを取得しますが、さまざまな場面で計測時間の迅速化が求められています。

今回確立したベイズ推定を用いたスペクトル予測を応用することで、ベルトコンベアで移動する工業製品や有害物質を含んだ廃棄物試料などの迅速な分析や化学反応過程のモニタリングが可能になると期待できます。

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本研究成果は、Elsevierが刊行する国際学術誌「Spectrochimica Acta Part B: Atomic Spectroscopy」のオンライン速報版に、2022年12月1日に掲載されました。

今回の研究によって短時間の計測で蛍光X線スペクトルを予測できる可能性を示すことができました。蛍光X元素分析の高速性を生かして、材料分析の高効率化や環境モニタリングなど多くの分野に適用されることを期待しています。

press_1223_matsu-tsuji松山 嗣史特任助教(左)、辻 幸一教授(右)

 掲載誌情報

【発表雑誌】Spectrochimica Acta Part B: Atomic Spectroscopy
【論 文 名】Spectrum prediction in X-ray fluorescence analysis using Bayesian estimation
【著者】Tsugufumi Matsuyama, Masanori Nakae, Masashi Murakami, Yukihiko Yoshida, Masahiko Machida, Kouichi Tsuji
【掲載URL】https://doi.org/10.1016/j.sab.2022.106593
プレスリリース全文 (654.8KB)

資金情報

本研究の一部は科研費(基盤研究B)の支援および日本原子力研究開発機構との共同研究として行われました。

 用語解説

※1 ベイズ推定…条件付き確率に基づき推定する方法。尤度(ゆうど)関数と事前分布をもとに事後分布を算出し、観測された事象から、推定したい事象を推論する。
※2 標準試料…標準試料はそれを構成する各元素の化学分析値が保証されている物質である。分析法の妥当性評価に用いることができる。

研究に関する問い合わせ先

大阪公立大学 大学院工学研究科
特任助教 松山 嗣史(まつやま つぐふみ)
教授 辻 幸一(つじ こういち)
TEL: 06-6605-2770
06-6605-3080
E-mail:t-matsuyama[at]omu.ac.jp
              k-tsuji[at]omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。

報道に関する問い合わせ先

大阪公立大学 広報課
担当:竹内
TEL:06-6605-3411
E-mail:koho-list[at]ml.omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。

該当するSDGs

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