最新の研究成果

AIが胸部レントゲン画像から体内年齢を推定 重症化リスクを予測するバイオマーカーの開発に期待

2023年8月17日

  • プレスリリース
  • 医学研究科

ポイント

◇複数施設から収集した健常者の胸部レントゲン画像を使用して、高精度に年齢推定を行うAIモデルを開発
◇AIが推定した年齢と実年齢の差が、慢性疾患の罹患と正の相関関係があることが明らかに
◇余命予測、慢性疾患の重症度や手術リスクの推定などを行うAIバイオマーカーの開発に期待

概要

大阪公立大学大学院 医学研究科放射線診断学・IVR学の光山 容仁大学院生(博士課程2年)、植田 大樹研究員、三木 幸雄教授らの研究グループは、胸部レントゲン画像から体内年齢を推定するAIモデルを開発し、推定年齢から実際の年齢を引いた年齢差とさまざまな疾患の関係を実証しました。

年齢推定を行うAIモデルの開発と訓練、外部テストには、3施設から収集した67,099枚、36,051人の健常者(既往歴のある人は除外)の胸部レントゲン画像を利用しました。その結果、AIモデルは相関係数0.95(99%信頼区間:0.95‐0.95)の非常に高い推定精度を示しました。また、AIが年齢推定する際の可視化画像より、下肺野や大動脈弓に加齢を判定する判断根拠がある可能性を示唆しました(図)。

さらに、本AIモデルを、別の2施設から収集した有疾患者34,197人の胸部レントゲン画像を用いて、疾患と年齢差をオッズ比により分析。推定年齢が実年齢より高いほど、高血圧や高尿酸血症、慢性閉塞性肺疾患、間質性肺炎といった慢性疾患の罹患と正の相関関係があることを明らかにしました。

胸部レントゲン画像は、撮影が簡便で広く利用可能な検査方法です。AIの活用により、バイオマーカーとして余命予測、慢性疾患の重症度推定や手術時の合併症予測への応用が期待されます。

図:AIによる年齢特徴部の可視化
上が胸部レントゲン写真、下が可視化画像
(いずれも平均化処理後)。赤が加齢判定ポイント

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本研究成果は、8月17日(木)に国際学術誌「The Lancet Healthy Longevity」にオンライン掲載されました。

多くの施設に胸部レントゲン画像を提供いただきました。特に、AIモデル開発には健康診断時の胸部レントゲン画像から、既往歴のある人を除外したデータを用いることで、バイオマーカーの定義を満たす精度の高い年齢推定モデルを作成することができました。引き続きAIと医学の可能性を探り、新たな価値を創造してまいります。

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     光山 容仁大学院生

掲載誌情報

【発表雑誌】 The Lancet Healthy Longevity 
【論文名】

Chest radiography as a biomarker of ageing: artificial intelligence-based,
multi-institutional model development and validation in Japan

【著者】

Yasuhito Mitsuyama, Toshimasa Matsumoto, Hiroyuki Tatekawa, Shannon L Walston,
Tatsuo Kimura, Akira Yamamoto, Toshio Watanabe, Yukio Miki, Daiju Ueda

【DOI】 https://doi.org/10.1016/S2666-7568(23)00133-2
【掲載URL】 https://www.thelancet.com/journals/lanhl/article/PIIS2666-7568(23)00133-2/fulltext


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研究内容に関する問い合わせ先

大阪公立大学大学院 医学研究科
放射線診断学・IVR学
担当:光山 容仁(みつやま やすひと)
TEL:06-6645-3831
E-mail:so22470e[at]st.omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。

報道に関する問い合わせ先

大阪公立大学 広報課
担当:田中
TEL:06-6605-3411
E-mail:koho-list[at]ml.omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。

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