最新の研究成果

円偏光を発生させる第3世代円偏光有機発光ダイオードを開発 次世代の3D表示用有機ELディスプレイ等製造への応用に期待

2023年10月23日

  • 工学研究科
  • プレスリリース

概要

近畿大学理工学部 応用化学科教授 今井喜胤、大阪公立大学大学院 工学研究科教授 八木繁幸らの研究グループは、安価でエネルギー変換効率が高く、第3世代の発光材料と呼ばれるTADF分子という発光性の分子を用いて、第3世代円偏光有機発光ダイオード※1を開発しました。開発したダイオードに外部から磁力を加えることで、3D立体映像を映し出す際に使われる、らせん状に回転しながら振動する「円偏光」を、TADF分子に由来する緑色の光で発生させることに成功しました。さらに、加える磁力の方向を変えることで、緑色の円偏光の回転方向を制御できることも明らかにしました。

本研究成果により、円偏光有機発光ダイオードの発光量子効率を理論上の限界まで引き上げることが可能となり、製造コスト削減が期待できます。将来的に、第3世代、さらには、その次の世代の発光材料を用いたフルカラー3D表示用有機ELディスプレイ等の製造や、高度な次世代セキュリティ認証技術の実用化につながることが期待されます。

本件に関する論文が、令和5年(2023年)10月21日(土)に、化学分野の国際的な学術誌である“Frontiers in Chemistry Nanoscience”にオンライン掲載されました。

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開発した緑色有機円偏光発光ダイオード

ポイント

◇第3世代の発光材料と呼ばれる、光学不活性※2なTADF分子を用いて有機発光ダイオードを作製し、外部から磁力を加えることにより、緑色の円偏光の発生に成功
◇加える磁力の方向を変えることで円偏光の回転方向を制御し、右回転と左回転の円偏光を選択的に取り出すことに成功
◇本研究成果を、次世代フルカラー3D表示用有機ELディスプレイの製造や、高度な次世代セキュリティ認証技術の実用化などへ生かすことに期待

掲載誌情報

【雑誌名】Frontiers in Chemistry Nanoscience
【論文名】External magnetic field-induced circularly polarized luminescence and electroluminescence from optically inactive thermally activated delayed fluorescence material 4CzIPN(光学不活性な熱活性化遅延蛍光物質4CzIPNの外部磁場誘起円偏光発光と電界発光)
【著者】黒田拓海、北原真穂、八木繁幸、今井喜胤* *責任著者
【掲載URL】https://doi.org/10.3389/fchem.2023.1281168

資金情報

本研究は、科学研究費補助金 挑戦的研究(萌芽)(課題番号 JP21K18940)、国立研究開発法人 科学技術振興機構(JST) 戦略的創造研究推進事業CREST研究領域「独創的原理に基づく革新的光科学技術の創成」(研究総括:河田聡)研究課題「円偏光発光材料の開発に向けた革新的基盤技術の創成」(研究代表者:赤木和夫)によって実施されました。

用語解説

※1 円偏光発光ダイオード…電圧をかけると有機物が発光する現象を有機EL(Electroluminescence)といい、この現象を利用した発光デバイスを有機発光ダイオード(Organic Light-Emitting Diode)という。この際、発光が円偏光であるダイオードを有機円偏光発光ダイオードという。

※2 光学不活性…物質が直線偏光の偏光面を回転させる性質(旋光性)があるとき、この物質は光学活性であるといい、偏光面を回転させる性質がないとき、この物質は光学不活性という。

研究内容に関する問い合わせ先

大阪公立大学大学院 工学研究科
教授 八木 繁幸(やぎ しげゆき)
Tel:072-254-9320
E-mail:yagi[at]omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。

取材に関する問い合わせ先

大阪公立大学 広報課
担当:竹内
Tel:06-6605-3411
E-mail:koho-list[at]ml.omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。

該当するSDGs

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