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小惑星リュウグウでみつかった窒化した鉄の鉱物 ―太陽系の遠方から辿り着いた窒素に富む塵―

2023年12月1日

  • 理学研究科
  • プレスリリース

概要

太陽から遠く離れた場所で生まれた氷天体や彗星にはアンモニウム塩のような窒素化合物が大量に貯蔵されています。このような窒素を含む固体は生命の材料物質としてとても重要だと考えられていますが、地球軌道の地域に輸送される証拠は見つかっていませんでした。本研究では、地球の近くに軌道をもつ小惑星リュウグウの砂を電子顕微鏡で調べ、砂のごく表面が窒化した鉄(窒化鉄:Fe4N)に覆われていることを発見しました。窒化鉄は、磁鉄鉱と呼ばれる鉄原子と酸素原子の鉱物の表面で見られます。我々は、氷天体からやってきたアンモニア化合物を大量に含む微小な隕石がリュウグウに衝突して、磁鉄鉱の表面で化学反応が起こり、この窒化鉄が形成したと考えました。小惑星の表層では、太陽から吹くイオンの風(太陽風)の照射などによって磁鉄鉱の表面から酸素が失われていて、アンモニアと反応しやすい金属鉄がごく表面に形成しています。このため、磁鉄鉱の表面ではアンモニアに由来する窒化鉄の合成が促されたと推測しています。この微小隕石は太陽系遠方の氷天体からやってきたかもしれず、これまで気づかれてきたよりも多くの量の窒素化合物が太陽系の地球付近に輸送されて、生命の材料となった可能性があります。

本成果は、京都大学白眉センターの松本徹 特定助教、理学研究科の野口高明教授、三宅亮准教授、伊神洋平助教、化学研究所の治田充貴准教授、および国際的な共同研究者のグループによって行われ、2023年11月30日に英国の国際学術誌「Nature Astronomy」にオンライン掲載されました。

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(A) 小惑星リュウグウの試料に含まれる磁鉄鉱粒子。天体の中を存在した水の中で成長したため、丸い形をしている。磁鉄鉱の表面はとても多孔質であり、この特徴は宇宙空間にさらされた表面にだけ見られる。 (B) 丸い磁鉄鉱の断面画像。元素の分布を色付けしている。表面に鉄と窒素に富む層が見られる(緑色の場所)。窒化鉄はごく表面の数十ナノメートルの厚みを覆っている。


この研究成果は、はやぶさ2初期分析チームのうち「砂の物質分析チーム」によるものです。本学からは理学研究科地球学専攻の瀬戸 雄介准教授がこのチームに参加し、成果の一部に貢献しました。


詳しくは、京都大学 のホームページをご覧ください。

掲載誌情報

【発表雑誌】Nature Astronomy
【論 文 名】Influx of nitrogen-rich material from the outer Solar System indicated by iron nitride in Ryugu samples
【掲載URL】https://www.nature.com/articles/s41550-023-02137-z

プレスリリース全文 (1.6MB)

研究内容に関する問い合わせ先

大阪公立大学 大学院理学研究科
准教授 瀬戸 雄介(せと ゆうすけ)
TEL:06-6605-3194
E-mail:seto.y[at]omu.ac.jp [at]を@に変更してください

報道に関する問い合わせ先

広報課
TEL:06-6605-3411
E-mail:koho-list[at]ml.omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。

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