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超流動体はレイノルズの相似則に従うか? 物理学の「常識」を覆す量子粘性を理論提言

2024年1月12日

  • 理学研究科
  • プレスリリース

本研究のポイント

  • 大気の流れや人体の血流など、あらゆる粘性流体に適用できる理論「レイノルズの相似則」。
    この法則を非粘性の量子流体として知られる超流(動)体へと拡張し、その検証方法を提案。

  • 超流体中を落下する物体の終端速度を測定すれば、超流体におけるレイノルズの相似則の成立を検証できることを提示。

  • この法則が成立すれば、純粋な超流体にも実効的な粘性「量子粘性」が存在することを提言。

概要

空気や水などで物体が移動する際に発生する流れは、エネルギー損失の主要な原因です。この挙動や損失の度合いは、流体の持つ粘性を取り入れた「レイノルズ数」という量によって把握できます。この法則は「レイノルズの相似則」と呼ばれており、地球の大気から人体の血液まで、さまざまな流体に普遍的に適用できる強力な経験則として知られています。粘性が消失する量子流体である超流体は、この法則が適用できない明らかな例外と考えられていました[図1]。

大阪公立大学大学院理学研究科南部陽一郎物理学研究所 竹内 宏光講師は、超流体における(量子)乱流を理解する上での理論的な課題に焦点を当て、超流体中を落下する物体の終端速度を測定すれば、超流体におけるレイノルズの相似則の成立を検証できることを示しました。また同時に、これが成立すれば純粋な超流体にも実効的な粘性(量子粘性)が存在することを提言しています。

本研究成果は、2024112日(金)に国際学術誌「Physical Review B」の速報としてオンライン掲載されました。

超流体中を一定速度で運動する物体のまわりの流れ(模式図)。

図1:超流体中を一定速度で運動する物体のまわりの流れ(模式図)。
(上) 純粋な超流体では流体の抵抗力が働かない流動状態が実現する。
(下) 物体の速度を十分大きくすると粘性流体と同様な流れのパターンが後方に形成されることが予想される。
挿絵は、流れのパターンが微視的には糸状の量子渦が複雑に絡まった量子乱流から構成されていることを示している。

論文情報

雑誌名:

Physical Review B

論文名:

Quantum viscosity and the Reynolds similitude of a pure superfluid

著者:

Hiromitsu Takeuchi

掲載URL:

https://journals.aps.org/prb/abstract/10.1103/PhysRevB.109.L020502

資金情報

本研究は主に、JSTさきがけ「複雑な流動・輸送現象の解明・予測・制御に向けた新しい流体科学(研究総括:後藤 晋)」における研究課題「量子粘性の検証と複雑な量子流動現象の解明(研究代表者:竹内宏光、JPMJPR23O5)」の支援を受けて行われたものです。本研究の一部は、JSPS科研費 JP18KK0391、JP20H01842および「大阪市のふるさと寄付金(市立大学振興)」を財源とした「グローカル人材育成事業(研究支援)」による支援を受けて行われたものです。

研究に関する問い合わせ先

大阪公立大学大学院理学研究科
担当:竹内 宏光(たけうち ひろみつ)
E-mail:takeuchi[at]omu.ac.jp [at]を@に変更してください

報道に関する問い合わせ先

大阪公立大学 広報課
担当:上嶋(かみしま)
TEL:06-6605-3411
E-mail:koho-list[at]ml.omu.ac.jp [at]を@に変更してください

該当するSDGs

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