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アミドの導入による非水素結合系「超分子液晶」の作製に成功 ~大面積に塗布可能な新規超分子液晶による有機エレクトロニクスの開発に期待~

2024年1月24日

  • 工学研究科
  • プレスリリース

ポイント

◇3級アミドを導入したL字型分子による超分子液晶の作製に成功
◇光・電子機能を有する有機π電子系分子の超分子液晶を大面積に塗布できる技術を開発
◇塗布型の有機半導体や固体発光材料への応用による簡便なデバイス作製など、新しい有機エレクトロニクスの開発に期待

概要

東京工業大学 物質理工学院 応用化学系の猿渡悠生大学院生と小西玄一准教授、大阪公立大学大学院工学研究科 物質化学生命系専攻の竹内雅人准教授らの研究チームは、光・電子機能を有する棒状の有機π電子系分子※1に、カルボン酸とアミンの脱水縮合によって形成される「アミド結合」を導入することにより、100℃程度で液晶相が発現する超分子液晶※2の作製に成功した。さらに、この超分子液晶を、その秩序構造を保持したまま大面積に塗布する技術も開発した。これまで、水素結合などの強い分子間の相互作用を用いた超分子液晶が知られていたが、このような水素結合性超分子液晶は結合に方向性があるため、得られる構造が限定的であった。そのため、近年では有機半導体※3によるデバイス製作を指向して、より分子配列の自由度が高い液晶材料が求められてきた。 

本研究チームは、棒状分子とアミド結合を組み合わせたL字型分子が液晶を形成することを発見した。構造解析を行ったところ、2つのL字型分子が二量体となり秩序構造を形成することが分かった。さらに、固体ではアミド結合の構造がシス型に固定されているが、液晶を示す温度以上ではアミド結合構造のシス-トランス異性化が起こることで柔軟性が付与され、液晶相が発現することが分かった。加えて、この分子は固体・液晶のいずれの状態でも二量体の性質に起因する強い蛍光を示し、かつ、大面積に塗布できる性質を有することも確認できた。この分子間の強い相関は、有機電界トランジスタなどにおいて重要な性質であり、この新たな超分子液晶を用いた簡便な電子デバイス開発など、新たな有機エレクトロニクスの開発につながるものと期待できる。 

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アミド結合を有するL字型分子による超分子液晶とその偏光顕微鏡写真

本研究成果は、凝集体の科学を扱う専門誌「アグリゲート(Aggregate、インパクトファクター18.8)」のオンライン版で123日(現地時間)に公開された。

掲載誌情報

【雑誌名】Aggregate(アグリゲート)
【論文名】Supramolecular liquid crystals from the dimer of L-shaped molecules with tertiary amide end groups
(和訳:3級アミドを末端に持つL型分子のダイマーから得られる超分子液晶)
【著者】Yuki Sawatari,1 Yoshimichi Shimomura,1 Masato Takeuchi,2 Riki Iwai,1 Takuya Tanaka,1 Eiji Tsurumaki,3 Masatoshi Tokita,1,4 Junji Watanabe,1,4 Gen-ichi Konishi*1,4
【所属】1 東京工業大学 物質理工学院 応用化学系、2 大阪公立大学大学院 工学研究科 物質化学生命系、3 東京工業大学 理学院 化学系、4 東京工業大学 工学部 高分子工学科(研究当時)
【掲載URL】https://doi.org/10.1002/agt2.507

資金情報等

質量分析の測定は、オープンファシリティセンター分析部門すずかけ台の小泉公人氏に依頼した。研究室から独立した機関で測定することにより、データの客観性を保証することを目的としている。

本成果は、文部科学省科学研究費助成事業(23H02036)および新学術領域研究(研究領域提案型「π造形科学」(17H05145)、科学技術振興機構さきがけ「元素戦略」(JPMJPR1096)および泉科学技術振興財団の支援によるものである。

用語解説

※1 有機π電子系分子…π電子による共役が拡がることにより光・電子機能を示す機能分子である。芳香族化合物や炭素-炭素の多重結合を有するものが多い。

※2 超分子液晶…小な分子コンポーネントから、水素結合などの非共有結合による相互作用を使って、より大きな明確な構造を形成して液晶性を発現するもの。

※3 有機半導体…半導体の性質を示す有機分子化合物のこと。白川英樹博士の開発したポリアセチレンも有機半導体であり、ドーピングにより電気が流れる。

研究内容に関する問い合わせ先

大阪公立大学大学院 工学研究科
准教授 竹内 雅人(たけうち まさと)
TEL: 072-254-9287
Email: masato.takeuchi[at]omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。

報道に関する問い合わせ先

大阪公立大学 企画部 広報課
TEL: 06-6605-3411
Email: koho-list[at]ml.omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。

該当するSDGs

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