最新の研究成果

熱を加える実験で明らかに。水晶が隠し持つ新たな特性!

2024年1月31日

  • 工学研究科
  • プレスリリース

ポイント

◇水晶はクォーツ時計や携帯電話、ジャイロセンサに利用されており、「産業の塩」と呼ばれる。
◇水晶は右手と左手のように、鏡像では重なるが実際には重ならない特殊な構造を持つ。
◇熱の流れに沿って水晶内の原子が回転運動し、その伝搬を電気信号へ変換することに成功。

概要

古来より親しみ深い鉱物である水晶は、電気的に振動する特性を活かし、クォーツ時計や携帯電話などの電子機器、ジャイロセンサに欠かせない電子部品として利用されています。水晶は、鏡写しにすると重なりますが実際には重ならない特殊な構造(キラル)を持っており、電気的・熱的な性質にキラル構造を持つことの影響が現れます。これまでの研究で、キラルな金属物質に電気を流すと電子の磁気的なバランスが崩れて正負どちらかに偏ることが明らかになりましたが、キラルな非金属物質である水晶では電気が流れないため、どのようなキラル特有の現象が生じるかは解明されていませんでした。

大阪公立大学大学院 工学研究科の大江 一希氏(当時 博士前期課程学生)、戸川 欣彦教授、東京大学 大学院理学系研究科の加藤 将貴大学院生(博士後期課程)、松浦 弘泰助教らの研究チームは、水晶に加えた熱の流れに沿って原子が回転しながら振動し、その回転運動を電気的に検出することに世界で初めて成功しました。原理的に「熱の流れを制御すること」や「加熱によって生じる原子の回転運動を電気信号に変換すること」が可能なため、新しい断熱材料や情報処理技術の開発への貢献が期待されます。

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図 左結晶と右結晶の結晶外形および左右の水晶玉が示す渦巻き模様。

本研究成果は、2024年1月30日に米国物理学会が発刊する『Physical Review Letters』に掲載されました。

古くから知られている水晶に新たな魅力を見つけたことが何より嬉しいです。本研究から「キラル物質がなぜ左右の構造となるのか」という謎に迫る手掛かりが得られるかもしれません。
キラルな水晶の隠れた特性を実験で証明するのには苦労しましたが、研究に用いる左右の天然水晶を探すのは楽しい作業でした。ちなみに、写真で手に持っているのは右水晶です。

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戸川 欣彦教授

掲載誌情報

【発表雑誌】Physical Review Letters
【論文名】Chirality-Induced Selectivity of Phonon Angular Momenta in Chiral Quartz Crystals
【著者】Kazuki Ohe, Hiroaki Shishido, Masaki Kato, Shoyo Utsumi, Hiroyasu Matsuura, and Yoshihiko Togawa
【掲載URL】https://doi.org/10.1103/PhysRevLett.132.056302

資金情報

本研究は、日本学術振興会 科研費 基盤研究A(JP23H00091)、基盤研究B(22H01944、21H01032、17H02923、17H02767)、豊田理研 特性課題研究、大学共同利用機関法人自然科学研究機構OPEN MIX LAB事業(OML012301)の助成を受けて行いました。また、本研究の一部は、文部科学省「マテリアル先端リサーチインフラ」事業(JPMXP1222MS0015、JPMXP1222MS3006)の支援を受けて自然科学研究機構 分子科学研究所で実施しました。

研究内容に関する問い合わせ先

大阪公立大学大学院 工学研究科
教授 戸川 欣彦(とがわ よしひこ)
TEL:072-254-8216
E-mail:ytogawa[at]omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。

報道に関する問い合わせ先

大阪公立大学 広報課
担当:竹内
TEL:06-6605-3411
E-mail:koho-list[at]ml.omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。

該当するSDGs

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