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胴体の長さって、どうやって決まるの? 脊椎動物の胴体の終点=後ろ足の形成制御を行うDNA領域を発見!

2024年3月25日

  • 理学研究科
  • プレスリリース

本研究のポイント

  • 脊椎動物の後ろ足を形成させるGdf11遺伝子の働くタイミングを制御するDNA領域を発見。
  • このDNA領域を欠損させたマウスは脊椎骨二つ分、胴体が長くなることを確認。
  • 脊椎動物の胴体の長さや骨格パターンの多様性は、種間で共通のDNA配列(本研究で同定した領域)と種間で異なるDNA配列の両方で制御されている可能性を強く示唆。

概要

ヒトを含む脊椎動物の手(前足)と足(後ろ足)の間の胴体の長さは、種によって異なっています。本研究グループは以前の研究で、体が作られる過程の中で、働いた場所に仙椎と後ろ足の両方を形成させるGdf11遺伝子を同定しましたが、この遺伝子が働く場所やタイミングを決める仕組みは不明でした。
大阪公立大学大学院理学研究科生物学専攻の鈴木 孝幸教授、徳島大学先端酵素学研究所の竹本 龍也教授、名古屋大学大学院生命農学研究科の飯田 敦夫助教らの研究グループは、Gdf11遺伝子が働くタイミングを制御するDNA領域(HCR領域と命名)を発見。25億あるマウスのゲノムの塩基(DNA)数のうち、たった1,700 bpの領域で胴体の長さが決められていることが明らかになりました。
また、HCR領域はヒト(哺乳類)や鳥(鳥類)にも存在することから、脊椎動物の中で、種を超えて同様の働きを担うDNA領域であることも分かりました。本研究成果は、脊椎動物の骨格パターンの進化メカニズムをDNAの配列レベルで解明する上で、大きな一歩となることが期待されます。 
本研究成果は、2024年3月15日に、国際学術誌「Frontiers in Cell and Developmental Biology」にオンライン掲載されました。

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図1. HCR領域を欠損させたマウスの骨格パターン
HCR領域を欠損させたマウスでは、Gdf11遺伝子が正常に働かなくなり、後ろ足と仙椎の位置が尾側にずれ、胴体の長さが脊椎骨二つ分長い胴長のマウスになった。

進化の過程は胚の発生過程に刻まれています。遺伝子の変化が発生過程に影響を与え、進化を導くのですが、現在はその影響を実際に実験で検証できる時代となりました。今回の研究ではGdf11遺伝子の働くタイミングを決めるDNAの候補領域を探すのに苦労しました。進化のメカニズム解明には発生生物学を土台とした多角的な手法が不可欠で今後の発展が期待されています。今後はヘビなどの、形態が大きく異なる生物の形態進化の仕組みを調べていきたいです。

鈴木 孝幸教授 (写真中央)

 

掲載誌情報

雑誌名:

Frontiers in Cell and Developmental Biology

論文名:

Functional analysis of a first hindlimb positioning enhancer via Gdf11 expression

著者:

Seiji Saito, Utsugi Kanazawa, Ayana Tatsumi, Atsuo Iida, Tatsuya Takemoto, Takayuki Suzuki

掲載URL

https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fcell.2024.1302141/full

研究内容に関する問い合わせ先

大阪公立大学 大学院理学研究科 生物学専攻 発生生物学研究室 担当:鈴木 孝幸 
TEL:06-6605-2578 E-mail:suzuki.takayuki[at]omu.ac.jp [at]を@に変更してください

報道に関する問い合わせ先

大阪公立大学 広報課
TEL:06-6605-3411 E-mail:koho-list[at]ml.omu.ac.jp [at]を@に変更してください

徳島大学 総務部未来創造課広報係
TEL:088-656-7646 E-mail:kohokakari[at]tokushima-u.ac.jp [at]を@に変更してください

名古屋大学 広報課
TEL:052-558-9735 E-mail:nu_research[at]t.mail.nagoya-u.ac.jp [at]を@に変更してください

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