最新の研究成果

~有害物質PFAS分解など、超音波の産業応用へ大きく前進~ 超音波照射による化学反応の「逆転現象」を解明

2025年6月10日

  • 工学研究科
  • プレスリリース

概要

液体中に超音波1を照射するとマイクロサイズの気泡が発生し、気泡内部が瞬間的に太陽の表面温度と同等の高温状態になることで、さまざまな化学反応が生じます。通常は超音波の出力を上げると反応が加速しますが、ある一定以上では逆に反応速度が低下する現象が知られており、その発生原因にはいくつかの説があり、論争が続いていました。

大阪公立大学大学院工学研究科の青木 暸太大学院生(博士前期課程2年)、服部 冠志大学院生(博士前期課程2年)、山本 卓也准教授の研究グループは、6種類の実験と3種類の数値シミュレーションによる解析から、超音波の出力を上げると反応速度が低下する原因を突き止めました。さらに、超音波の反応場が3種類に分類されることも明らかになり、用途に応じた最適な超音波照射条件の選定に役立つ指針が得られました。本成果は、環境汚染物質PFAS2の分解やナノ粒子の合成など、幅広い分野への超音波技術の応用と実用化の加速に貢献することが期待されます。

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図 超音波出力を変更した場合の槽内反応速度分布と拡大観察した際の発生した気泡の様子

本研究成果は、2025年6月10日に国際学術誌「Ultrasonics Sonochemistry」のオンライン速報版に掲載されました。

音を利用して化学反応を引き起こす現象は興味深いものですが、その背景には、音波や気泡、核生成、流動、化学反応等の数多くの現象が、複雑に絡み合っています。本研究では、この複雑な現象の一部を解明することができました。今後は本成果を活かして、超音波技術の幅広い分野への産業応用が広がることを期待しています。

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山本 卓也准教授

掲載誌情報

【発表雑誌】Ultrasonics Sonochemistry
【論文名】Revisit to the mechanism of quenching: Power effects for sonochemical reactions
【著者】Ryota Aoki, Kanji D. Hattori, Takuya Yamamoto
【掲載URL】https://doi.org/10.1016/j.ultsonch.2025.107419

資金情報

本研究は、国立研究開発法人 科学技術振興機構 戦略的創造研究推進事業さきがけ(複雑な流動・輸送現象の解明・予測・制御に向けた新しい流体科学、JPMJPR220A)の一部として実施しました。

用語解説

※1 超音波…周波数が20 kHz以上の音。

※2 PFAS…有機フッ素化合物の別称。難分解性、高蓄積性等の特徴があるため、近年環境や人体にとってリスクが高い可能性があるといわれている。

研究内容に関する問い合わせ先

大阪公立大学大学院工学研究科
准教授 山本 卓也(やまもと たくや)
TEL:072-247-6064
E-mail:takuya.yamamoto[at]omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。

報道に関する問い合わせ先

大阪公立大学 広報課
担当:竹内
TEL:06-6967-1834
E-mail:koho-list[at]ml.omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。

該当するSDGs

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