最新の研究成果

潰瘍性大腸炎やクローン病の 新規薬と従来薬の併用による効果を検証

2025年6月12日

  • 医学研究科
  • プレスリリース

ポイント

◇潰瘍性大腸炎やクローン病の治療薬であるベドリズマブ1と5-アミノサリチル酸2の併用の有効性を保険診療データから分析。
◇2つの治療薬を併用しても再燃率や治療効果に大きな違いはなかった。
◇患者の医療費負担や副作用の少ない治療方針の決定への貢献に期待。

概要

潰瘍性大腸炎やクローン病は腸に炎症が起き、腹痛や下痢などが慢性的に続く疾病です。治療薬として、新しいタイプの薬剤であるベドリズマブに加えて、従来の5-アミノサリチル酸(5-ASA)が処方されることが多いにもかかわらず、併用の有効性はこれまで明らかではありませんでした。

大阪公立大学大学院医学研究科消化器内科学の西田 裕講師、細見 周平准教授、藤原 靖弘教授らの研究グループは、全国の病院から収集された保険診療データの潰瘍性大腸炎患者2,134人とクローン病患者514人の情報を用い、ベドリズマブと5-ASAの併用効果を分析しました。その結果、2つの治療薬を併用しても再燃率に大きな違いは見られず、治療効果にも影響がないことがわかりました。本研究は、患者の医療費負担や副作用リスクの少ない治療方針の決定に役立つと期待されます。

本研究成果は、2025年5月21日に国際学術誌「Inflammatory Bowel Diseases」にオンライン公開されました。

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図 ベドリズマブ使用開始後における潰瘍性大腸炎・クローン病の累積再燃率

今回の研究結果によって、ベドリズマブ治療時における5-ASA併用の意義を再考する重要な契機になりました。患者さんの薬剤負担と効果のバランスを重視し、一人一人に最適化された治療戦略の確立に取り組んでいきます。 ​

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西田 裕講師

掲載誌情報

【発表雑誌】Inflammatory Bowel Diseases
【論 文 名】Lack of Efficacy of Concomitant 5-Aminosalicylic Acid with Vedolizumab in Inflammatory Bowel Disease: A Large-Scale Administrative Database Analysis
【著  者】Yu Nishida, Shuhei Hosomi, Koji Fujimoto, Yumie Kobayashi,
Rieko Nakata, Hirotsugu Maruyama, Masaki Ominami, Yuji Nadatani, Shusei Fukunaga, Koji Otani, Fumio Tanaka, Yasuhiro Fujiwara

【掲載URL】https://doi.org/10.1093/ibd/izaf088

用語解説

※1 ベドリズマブ:免疫系を調整することで腸の炎症を抑える効果がある。

※2 5-アミノサリチル酸(5-ASA):炎症を抑える薬で、炎症性腸疾患の治療に古くから使用されている。腸の粘膜に直接働きかけて症状を改善する。

研究内容に関する問い合わせ先

大阪公立大学大学院医学研究科
TEL:06-6645-3811
講師 西田 裕(にしだ ゆう)
E-mail:d21603q[at]omu.ac.jp
准教授 細見周平(ほそみ しゅうへい)
E-mail:shuhosomi[at]gmail.com

※[at]を@に変更してください。

報道に関する問い合わせ先

大阪公立大学 広報課
担当:谷
TEL:06-6967-1834
E-mail:koho-list[at]ml.omu.ac.jp

※[at]を@に変更してください。

該当するSDGs

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