最新の研究成果
iPS細胞を用いた再現性の高いイヌ間葉系幹細胞作製法を確立 ~ヒト技術を応用、獣医再生医療の発展へ~
2025年6月11日
- 獣医学研究科
- プレスリリース
概要
免疫調整や抗炎症作用を持つ間葉系幹細胞(MSC)※は、ヒトだけでなく獣医療にも応用されていますが、増殖能力や品質の安定性に課題があります。このため、均質なMSCを安定的に供給する手段として、人工多能性幹細胞(iPS細胞)を用いたMSCの作製法が注目されています。しかし、ヒトにおいては研究が進む一方、イヌにおける研究例は限られています。
大阪公立大学大学院獣医学研究科の鳩谷 晋吾教授、塚本 雅也講師、川端 千晶氏(当時 大阪府立大学生命環境科学域6年)らは、これまでに4種類の体細胞からイヌiPS細胞の作製に成功しています。本研究では、日本大学 生物資源科学部 獣医学科の枝村 一弥教授との共同研究により、これらのイヌiPS細胞を用いて、イヌMSCの最適な作製方法を検討しました。その結果、ヒトのMSC作製方法の一つを応用することで、高い増殖能とMSCマーカーの発現を持つ、高品質なイヌMSCを作製できることが明らかになりました。さらに、4種類のイヌiPS細胞由来のMSCを比較したところ、尿由来細胞から作製したイヌiPS細胞を用いた場合に、最も高品質なMSCが得られることが分かりました。再現性の高いイヌMSC作製法が確立されたことで、今後の獣医療における再生医療の実用化に向けた研究開発が大きく前進すると期待されます。
本研究成果は、2025年5月29日に国際学術誌「Regenerative Therapy」のオンライン速報版に掲載されました。
図 イヌiPS細胞から間葉系幹細胞の作製
私たちは難病の動物を助けるために研究しています。今回の研究成果を臨床へ届けるためには、まだまだ乗り超えなければならない課題は多いですが、イヌiPS細胞から間葉系幹細胞への誘導に成功したことで、臨床への応用に近づいたと考えています。一刻も早く研究成果を患者へ届けられるよう、努力していきます。

塚本 雅也講師(左)、鳩谷 晋吾教授(右)
掲載誌情報
【発表雑誌】Regenerative Therapy
【論文名】Generation of canine induced pluripotent stem cell-derived mesenchymal stem cells: Comparison of differentiation strategies and cell origins
【著者】Masaya Tsukamoto, Chiaki Kawabata, Kohei Shishida, Takumi Yoshida, Kazuto Kimura, Kazuya Edamura, Kikuya Sugiura, Shingo Hatoya
【掲載URL】https://doi.org/10.1016/j.reth.2025.05.008
資金情報
本研究は、JSPS 科研費(JP18K19273、JP18H02349、JP19J22851、20H03156、22H02525)の支援を受けて実施しました。
用語解説
※ 間葉系幹細胞(MSC)…脂肪や骨髄から分離される細胞。免疫を調整する能力や、骨・軟骨・脂肪へ分化する能力(三系統分化能)をもつ。
研究内容に関する問い合わせ先
大阪公立大学大学院獣医学研究科
教授 鳩谷 晋吾(はとや しんご)
TEL:072-463-5374
E-mail:hatoya[at]omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。
報道に関する問い合わせ先
大阪公立大学 広報課
担当:竹内
TEL:06-6967-1834
E-mail:koho-list[at]ml.omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。
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