最新の研究成果
歯の健康状態が死亡率予測の鍵に!高齢者19万人の歯科検診データから判明
2025年12月2日
- 看護学研究科
- プレスリリース
ポイント
◇75歳以上の高齢者190,282人を対象に、歯科健診時の歯数および歯の状態と全死亡との関連を解析。
◇健全歯および処置歯が多いほど死亡率は低下し、未処置歯は死亡率を上昇させる。
◇健全歯+処置歯のみを歯数として数える方法が、全死亡率の予測精度において最も優れている。
概要
口腔の健康状態と死亡リスクには関連があることが知られており、日本では1989年より「80歳になっても20本以上自分の歯を保とう」という8020運動が展開されています。しかし、歯の状態には健全歯、処置歯、未処置歯などさまざまな種類があり、どの状態の歯を歯数として数えることが死亡リスクの予測に最も有効かは明らかになっていません。
大阪公立大学大学院看護学研究科の大槻 奈緒子講師と、大阪大学キャンパスライフ健康支援・相談センター保健管理部門の山本 陵平教授らの共同研究グループは、75歳以上の高齢者190,282人を対象に、歯科健診時の歯数および歯の状態と全死亡との関連を解析しました。その結果、健全歯および処置歯が多いほど死亡率が低下する一方で、虫歯等の未処置歯は死亡率を上昇させることが明らかになりました。さらに、健全歯+処置歯のみを歯数として数える方法が、健全歯のみ、あるいは健全歯+処置歯+未処置歯を数える方法と比較して、全死亡率の予測精度が最も高いことが示されました。
本研究成果は、2025年11月24日に国際学術誌「BMC Oral Health」にオンライン掲載されました。

日本が世界に誇る8020運動の達成率は,2025年7月に61.5%と発表されました。発足当初はわずか10%台に過ぎなかったことを考えると、これは大きな進歩です。この好機に、本研究の成果が早期治療や定期的な歯科メインテナンスを促す一助になれば嬉しく思います。
本研究はOHSAKA study※の最初の取り組みであり、本研究を起点として、今後もさまざまな分析を進めていきたいと思います。

大槻 奈緒子講師
資金情報
本研究は、JSPS科研費基盤研究B(24K02764)および大阪府後期高齢者医療広域連合受託研究(受託研究代表:大阪大学キャンパスライフ健康支援・相談センター 山本 陵平)の一部として実施しました。
用語解説
※Oral Health Screening to Assess Keys of Aging well (OHSAKA) study:2018年から実施されている後期高齢者歯科健康診査結果と大阪府後期高齢者医療保険介入者延べ250万人の医療・介護レセプトデータ(悉皆)を突合した大規模リアルワールドデータを用いて、大阪府民の健康寿命の延伸を目指して実施している大阪発の歯学領域世界最大規模の疫学研究。大阪府後期高齢者医療広域連合および大阪府歯科医師会の協力のもと、大阪大学キャンパスライフ健康支援・相談センター保健管理部門、本学大学院看護学研究科地域包括ケア科学分野・がん包括ケア科学分野、大阪大学大学院歯学研究科有床義歯補綴学・高齢者歯科学講座が実施している多施設共同研究。
掲載誌情報
【発表雑誌】BMC Oral Health
【論 文 名】Assessing the effectivity of counting the number of teeth with their conditions to predict mortality: The OHSAKA study
【著 者】Naoko Otsuki, Ryohei Yamamoto, Tomoaki Mameno, Satoko Takeuchi, Maki Shinzawa, Ayumi Kono, and Kazunori Ikebe.
【掲載URL】https://doi.org/10.1186/s12903-025-07275-6
研究内容に関する問い合わせ先
大阪公立大学大学院看護学研究科
講師 大槻 奈緒子(おおつき なおこ)
TEL:06-6645-3538
E-mail:otsuki.naoko.cics[at]omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。
報道に関する問い合わせ先
大阪公立大学 広報課
担当:久保
TEL:06-6967-1834
E-mail:koho-list[at]ml.omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。
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