最新の研究成果
静止気象衛星「ひまわり」で熱帯雨林での“健康診断” —新手法で精度の高い観測が可能に—
2026年1月15日
- 農学研究科
- プレスリリース
概要
千葉大学環境リモートセンシング研究センターの市井和仁教授、同大大学院融合理工学府博士前期課程2年生の長谷美咲氏、東京大学大学院農学生命科学研究科の熊谷朝臣教授、愛知県立大学情報科学部の吉岡博貴教授、大阪公立大学大学院農学研究科の植山雅仁准教授らの研究グループは、日本の静止気象衛星「ひまわり8/9号」を用いて、東南アジアの熱帯雨林を正確かつ一貫して監視するための新たな観測幾何条件注1)「S-CSA(Spatially-Constant Scattering Angle:空間的統一散乱角注2))」を提案し、衛星・地表・太陽の相対的な位置関係に起因するバイアスを大幅に低減することに成功しました。S-CSA条件のもとで算出した植生指数注3)は、従来の手法よりも地上観測の光合成によるCO2吸収量との相関が最も高く、これまで困難だった季節変動の正確な把握を可能にしました。本研究成果は、宇宙からの「定点観測」という静止衛星の強みを最大限に引き出し、地球の肺とも言われる熱帯地域における炭素循環の理解や、森林管理・気候変動対策に大きく寄与することが期待されます。
本研究成果は、2025年11月21日に、国際誌Environmental Research Lettersにオンライン掲載されました。

図:新手法(S-CSA)による観測幾何条件の違いの補正と植生指数データの安定化効果
左図は従来手法(上段)、S-CSA手法(下段)の概念図。従来の静止衛星観測では、観測方向(直下視、斜め視)の違いから、場所によって見え方が変わりバイアスが生じる問題があった。S-CSA手法では、一定の観測幾何条件を採用し、どこでもできるだけ同じ条件で観測するように調整が可能(図中〇印)。
右図は植生指数(EVI2)の季節変動の幅を示したもので、新手法の適用により(下段)、特定の地域(衛星直下(★)地域付近など)で見られる不自然な変動を抑え、植生の実際の変化をより安定して捉えられることが分かる。
掲載誌情報
【発表雑誌】Environmental Research Letters
【論 文 名】Exploring the optimal geometry of satellites Himawari-8/9 to monitor seasonal variation in vegetation dynamics across Southeast Asia
【著 者】Misaki Hase, Kazuhito Ichii, Yuhei Yamamoto, Wei Li, Beichen Zhang, Wei Yang, Tomo’omi Kumagai, Yoshiaki Hata, Naoya Takamura, Chandra S Deshmukh, Masahito Ueyama, Hiroki Yoshioka and Tomoaki Miura
【掲載URL】
https://doi.org/10.1088/1748-9326/ae0f42
https://iopscience.iop.org/article/10.1088/1748-9326/ae0f42
資金情報等
本研究は以下の支援を受け実施されました。日本学術振興会(JSPS)科学研究費(JP22H05004, JP20K20487, JP23KJ0304)、研究拠点形成事業(JPJSCCA20220008)、文部科学省VLプロジェクト。
用語解説
注1)観測幾何条件:観測を行う際の対象物、観測センサー、光源(太陽など)の相対的な位置関係を指す言葉。特にリモートセンシング(人工衛星や航空機からの遠隔観測)の分野で重要な概念。
注2)散乱角 (Scattering Angle):太陽から地面に届く光の向きと、地面から衛星へ向かう(衛星が見る)向きの間の角度。衛星・地表・太陽がどのような位置関係にあるかを表す。この散乱角が大きいほど太陽と衛星の相対的な位置が近いことを示す。
注3)植生指数:植物が赤い光を吸収し、近赤外光を強く反射する性質を利用して、植物の葉の量や光合成活動の活発さを表した指標。本研究では、赤色と近赤外の 2種類の光のみから算出でき、植生の密な地域でも感度の高さを保てる「EVI2 (2-band Enhanced Vegetation Index; 2バンド拡張植生指数)」を利用した。
研究内容に関する問い合わせ先
大阪公立大学大学院農学研究科
准教授 植山 雅仁(うえやま まさひと)
TEL:072-254-9432
E-mail:mueyama[at]omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。
報道に関する問い合わせ先
大阪公立大学 広報課
TEL:06-6967-1834
E-mail:koho-list[at]ml.omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。
該当するSDGs