最新の研究成果

胃潰瘍・胃がんを引き起こす原因菌か ~ピロリ菌とは異なる新種細菌を特定~

2026年3月9日

  • 獣医学研究科
  • プレスリリース

発表者

大阪公立大学大学院獣医学研究科/大阪国際感染症研究センター 山﨑 伸二教授、
Sharda Prasad Awasthi(アワスティ シャルダ プラサダ)特任准教授

概要

オーストラリアの医師が、ピロリ菌陽性の日本人女性患者の胃がんが発生しやすくなっている組織から、ピロリ菌とは異なる細菌を2010年に分離し、その解明が望まれていました。

本研究グループは、本菌がStreptococcus(ストレプトコッカス)属の新菌種であることを明らかにし、運動性が見られることからStreptococcus mobilis(ストレプトコッカス モビリス)と命名しました。

本研究成果は、2026年1月12日に微生物分類学の分野で非常に権威のある国際学術誌「International Journal of Systematic and Evolutionary Microbiology」にオンライン掲載されました。

pr20260309_yama03グラム染色を施したStreptococcus mobilis

ポイント

  1. 生化学的な特徴の解析と全ゲノム配列の解析により、Streptococcus属の新菌種であることを明らかにした。
  2. 本菌は鞭毛を持たないにもかかわらず運動性を示したことから、菌種名をmobilisと命名した。

<研究者のコメント>

ピロリ菌は胃潰瘍・胃がんの原因菌として有名ですが、実はこの菌(Streptococcus mobilis)も胃潰瘍等に関わっている可能性があります。検査法が確立しているので、治療法確立など今後の研究成果が期待されます。

pr20260309_yama02sAwasthi特任准教授
pr20260309_yama01s山﨑教授

研究の背景

胃潰瘍や胃がんの原因の一つとして、ヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)が関与していることは広く知られています。しかし近年、ピロリ菌による胃潰瘍、胃がんがピロリ菌単独で引き起こされているのかという点に疑問を持つ医師・研究者も増えています。このような中、オーストラリアの岡田 隆幸医師は、20年以上前にピロリ菌陽性の胃の前がん病変から、ピロリ菌とは異なる細菌を見出しており、その解明が望まれていました。

研究の内容

本研究グループは2010年に本菌を分離し、本研究において生化学的性状解析により、Streptococcus属の細菌であることを明らかにしました。しかし、この解析では菌種の同定には至らなかったため、本菌の全ゲノム配列を解析しました。系統樹(進化の関係図)では、Streptococcus parasanguinisが近いと考えられましたが、遺伝的類似性を定量化するANI(平均塩基配列同一性)は94.4%で、基準値の95%〜96%以上に達していなかったため、同一種とは判断されませんでした。また、細菌の種が同じかどうかを判断する指標である従来法の DDH とデジタル DDH では、本菌はそれぞれ62.5%と58.7%で、境界値70%を下回りました。そのため、Streptococcus属の既知のどの菌種にも属さない新菌種であることが明らかとなりました。また本菌は鞭毛を持たないにもかかわらず、これまでに報告のない運動性を示したことから菌種名にmobilisを採用し、Streptococcus mobilisと命名しました。さらに、全ゲノム配列が明らかとなったことで、本菌に特異的な検査法の開発も可能となりました。

 期待される効果・今後の展開

今後はまず、本菌(Streptococcus mobilis)を特異的に検出できる検査法を開発することが重要です。検査法が確立されれば、本菌の感染源として動物が関わっているかについても調べることができます。さらに、胃潰瘍や胃がんの患者の胃検体から、本菌が検出されるか否かを検討することも可能になります。もし胃がん患者から特異的に検出されることが明らかとなれば、新たな胃潰瘍、胃がんの原因菌として認知されるようになり、ピロリ菌のみならず本菌を含めた除菌療法など治療法開発につながることが期待されます。

 資金情報

本研究は、さくらコーポレーションの支援を受けて実施しました。

 用語解説

※ 前がん病変:正常組織と比べ、よりがんが発生しやすい形態に変化した組織。

掲載誌情報

【発表雑誌】 International Journal of Systematic and Evolutionary Microbiology
【論文名】 Streptococcus mobilis sp. nov., isolated from a Helicobacter pylori-positive pre-neoplastic human stomach
【著者】 Takayuki Okada#, Sharda Prasad Awasthi#, Atushi Hinenoya, Noritoshi Hatanaka, Shota Nakamura, Daisuke Motooka, Shinji Yamasaki (#These authors are equally contributed)

【掲載URL】 https://doi.org/10.1099/ijsem.0.007016

研究内容に関する問い合わせ先

大阪公立大学大学院獣医学研究科/大阪国際感染症研究センター
教授 山﨑 伸二(やまさきしんじ)
E-mail
yshinji[at]omu.ac.jp

特任准教授  Sharda Prasad Awasthi
E-mail
getsharda[at]gmail.com

TEL:072-463-5653

※[at]を@に変更してください。

報道に関する問い合わせ先

大阪公立大学 広報課
担当:谷
TEL:06-6967-1834
E-mail:koho-list[at]ml.omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。

該当するSDGs

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