最新の研究成果
高齢者の歩行リハビリを安全に、より楽しく~複合現実(MR)を用いたトレッドミル歩行の安全性を検証~
2026年3月11日
- リハビリテーション学研究科
- 情報学研究科
- 医学研究科
- プレスリリース
発表者
大阪公立大学大学院リハビリテーション学研究科 杉山 恭二講師、片岡 正教准教授、岩田 晃教授、樋口 由美教授、情報学研究科 佐賀 亮介准教授、医学研究科 高橋 真治講師、池渕 充彦講師、中村 博亮教授(研究当時、現・大阪公立大学医学部附属病院長)
概要
本研究グループは、高齢者を対象に現実の景色を見ながらその上にデジタル映像や情報を重ねて表示する技術『複合現実(Mixed Reality:MR)』を用いたトレッドミル歩行の安全性について検証しました。その結果、MRを用いた歩行でも転倒や体調不良は認められず、安全に実施できることが確認されました。さらに、通常の歩行と同程度の運動強度でありながら、通常の歩行よりも楽しさを感じることができることも示されました。
本研究成果は、2026年2月16日に国際学術誌「Disability and Rehabilitation: Assistive Technology 」にオンライン掲載されました。
ポイント
- MRを用いた自走式トレッドミル歩行は、高齢者でも安全に実施でき、運動の楽しさを高められる。
- MRは高齢者の歩行運動に無理なく取り入れられる技術であり、従来の運動方法に新たな価値を加える可能性が示された。

MRを用いたトレッドミル歩行の様子

MR体験映像サンプル
<研究者コメント>
高齢者の運動では、「正しさ」だけでなく、「やってみたい」「続けたい」と感じられることが重要です。本研究では複合現実(MR)を用いて、安全に運動の楽しさを高められる可能性を示しました。今後は、運動を“続けたくなる”新しいリハビリのかたちとしての活用を目指します。

杉山 恭二講師
研究の背景
高齢者にとって歩行能力を保つことは、転倒予防や自立した生活の維持に欠かせません。そのため、トレッドミルを用いた歩行運動は、医療やリハビリの現場で広く行われています。しかし、同じ動きを繰り返す運動は単調になりやすく、効果があっても長く続けることが難しいという課題があります。
近年、運動を継続するためには身体的な効果だけでなく、「楽しい」「やってみたい」と感じる気持ちが重要であることが注目されています。この流れの中で、仮想現実(VR)を用いた運動が導入されてきましたが、周囲が見えなくなることで転倒や映像酔いのリスクが指摘されています。
そこで本研究では、現実の環境を見ながら映像を重ねて表示できる複合現実(Mixed Reality:MR)に着目しました。MRは、運動の楽しさを高めながら安全性も確保できる可能性があり、高齢者リハビリ分野における新たな選択肢として位置づけられます。
研究の内容
本研究では、60~70代の男女42人を対象に、MRを用いたトレッドミル歩行が、安全に実施できるかどうかを調べました。参加者は、MRを用いて歩行するグループと、MRを使わずに歩行するグループに分かれ、10分間のトレッドミルで歩行運動を行いました。
そして、すべての参加者が運動を最後まで行えるか、安全上の問題が起こらないか、また運動をどの程度「楽しい」と感じたかを対象者へのアンケート調査やPhysical Activity Enjoyment Scale (PACES)を用いて評価しました。その結果、MRを用いた歩行でも転倒や体調不良は認められず、安全に実施できることが確認されました。さらに、MRを用いた歩行は通常の歩行と同程度の運動強度でありながら、運動の楽しさが高いことが分かりました。
これらの結果から、MRは高齢者の歩行運動に無理なく取り入れられる技術であり、従来の運動方法に新たな価値を加える可能性が示されました。
期待される効果・今後の展開
本研究の成果は、高齢者が安全に、そして前向きな気持ちで運動を続けるための新しい選択肢を示しています。運動は身体機能の維持や転倒予防に効果がある一方で、続けることが難しいという課題があります。MRを用いることで運動への抵抗感を減らし、楽しみながら取り組める環境づくりにつながることが期待されます。
今後は、病院やリハビリ施設だけでなく介護予防教室や地域での運動支援など、さまざまな場面での活用が考えられます。一方で、より長い運動時間での安全性の検証や、リハビリが必要な高齢者を対象とした検討が今後の課題です。これらを明らかにすることで、医療・介護現場で実際に役立つ運動支援技術としての発展が期待されます。
本研究は、2027年春に開設予定の大阪健康長寿医科学センターにおいて継承・発展させていく予定です。
資金情報
本研究は、知と健康のグローカル拠点推進事業の支援を受けて実施しました。
掲載誌情報
【発表雑誌】 Disability and Rehabilitation: Assistive Technology
【論文名】 Feasibility and safety of mixed reality treadmill walking in older adults: a pilot and feasibility trial
【著者】 Kyoji Sugiyama,Masataka Kataoka,Akira Iwata, Yumi Higuchi, Ryosuke Saga, Mitsuhiko Ikebuchi, Shinji Takahashi, Hiroaki Nakamura
【掲載URL】 https://doi.org/10.1080/17483107.2026.2626848
研究内容に関する問い合わせ先
大阪公立大学大学院リハビリテーション学研究科
講師 杉山 恭二(すぎやま きょうじ)
TEL:06-6167-1248
E-mail:k.sugiyama[at]omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。
報道に関する問い合わせ先
大阪公立大学 広報課
担当:久保
TEL:06-6967-1834
E-mail:koho-list[at]ml.omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。
該当するSDGs