最新の研究成果
経済の自動化を測定する新手法を提示~産業間比較や経済効果を明らかにすることが可能に~
2026年4月8日
- 経済学研究科
- プレスリリース
発表者
大阪公立大学大学院経済学研究科 中村 英樹教授、森脇 祥太教授、立正大学経営学部 中村 勝克教授
概要
近年AIやロボット技術の進展により、さまざまな場面で「自動化」が急速に進んでいます。しかし、経済全体でどの程度のタスクが自動化されているかを測定する手法はこれまで十分に確立されていませんでした。
本研究グループは、標準的な経済データのみを用いて、自動化度合いを測定できる新たな理論的手法を提示しました。本手法は今後、産業間比較や国際比較、AI導入による経済効果の評価などにも活用が期待されます。
本研究成果は、2026年3月24日に国際学術誌「Journal of Economic Growth」にオンライン掲載されました。
ポイント
- 経済全体の「自動化」を測定できる新手法(計算方法)を提示。
- 日本の製造業 52産業のデータを本手法で分析した結果、産業間の大きなばらつきがあるものの、平均してタスクの約4割が自動化されていることが明らかに。
- 本手法により、作業内容などを詳細に調査せずとも自動化の進み具合が把握可能に。
<研究者コメント>
AIやロボットの発展により、仕事が急速に自動化されているという印象がありますが、依然、多くの仕事において人間の労働が必要です。本研究では、『どの程度のタスクが機械に置き換わっているのか』を経済データから測る手法を初めて理論的に提示しました。これにより、国や産業の自動化の程度を数値として知ることができます。
中村 英樹教授
研究の背景
AIやロボット技術の発展により、製造業からサービス業まで幅広い分野で自動化が進んでいます。少子高齢化が課題となる中、自動化の進展を定量的に把握することは、経済成長や雇用政策を考える上で重要な課題となっています。
しかし、経済全体で「どの程度のタスクが機械(ロボットやAI)に置き換わっているのか」についてはこれまで明らかになっていませんでした。従来の研究では、産業用ロボット台数、IT投資、ソフトウェア資本などが自動化の指標として用いられてきましたが、これらは自動化を間接的に示す代理指標に過ぎません。
そこで本研究は、経済理論に基づいて「機械やロボットがどれだけ生産タスクを担っているか」という観点から、自動化度合いを測定する手法を提案します。
研究の内容
本研究では、財やサービスの生産活動を多くのタスク(作業)に分解して考えます。各タスクでは、機械または人間の労働のいずれかが用いられますが、どちらが用いられるかは、そのタスクにおける効率性とコストによって決定されます(図1)。例えば、労働より機械のコストパフォーマンスがよくなれば、そのタスクは機械によって行われるようになり、機械が担うタスクの範囲は広がり、自動化は進みます。
本研究では、こうした自動化度合いが、経済の均衡※1において賃金・機械価格・生産量などと同時に決定されることに着目しました。この性質を利用することで、実際の経済データから生産関数※2の推定と同時に自動化度合いを計算できることを理論的に初めて示しました。
この手法を用いて、日本の製造業 52産業(1994年〜2020年)のデータを分析したところ、日本の製造業では平均して生産タスクの約4割が機械によって行われており、その割合は時間とともに上昇していることが明らかになりました(図2)。同時に、産業間の大きなばらつきがあり、一部の産業では7、8割の自動化が観測されています。

図1:自動化度合いとその進行

図2:自動化度合いの進行:日本の製造業52産業平均(1994年~2020年)
期待される効果・今後の展開
本手法により、現場の作業内容を詳しく調べたり、タスクを一つ一つ数えたりしなくても、理論に基づく数値で自動化の程度やその進行を計測することができます。さらに、産業間の自動化の違いや国際比較、自動化の経済効果などを明らかにすることが可能になります。
用語解説
※1 経済の均衡:各生産要素や財・サービスの需要と供給が一致している状態のこと。
※2 生産関数:資本(機械・ロボット)と労働投入と付加価値生産の関係を表現する関数。
掲載誌情報
【発表雑誌】 Journal of Economic Growth
【論文名】 The Macroeconomics of Automation
【著者】 Hideki Nakamura, Masakatsu Nakamura, Shota Moriwaki
【掲載URL】 https://doi.org/10.1007/s10887-026-09265-x
研究内容に関する問い合わせ先
大阪公立大学大学院経済学研究科
教授 中村 英樹(なかむら ひでき)
E-mail:hideki.nakamura[at]omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。
報道に関する問い合わせ先
大阪公立大学 広報課
担当:久保
TEL:06-6967-1834
E-mail:koho-list[at]ml.omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。
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