最新の研究成果
沈み込み帯誕生時の地殻形成プロセスを示す岩石・地球物理学的証拠を発見―海底下の「2つの地殻」を可視化―
2026年4月10日
- 理学研究科
- プレスリリース
発表のポイント
- 伊豆・小笠原海溝で掘削された岩石の物理特性を調べた結果、沈み込み帯誕生直後の海底拡大によってできた岩石と、拡大終結できた岩石とでは、割れ目の多さと地震波速度※1が大きく異なることを突き止めた。
- 岩石の物理特性をもとに海底下の地震波速度構造※2を読み解くことで、地殻の中に「初期にできた地殻」と「後からできた地殻」が重なって分布していることを初めて示した。
- 岩石試料の物理特性と地震波速度構造を結びつける新しい手法により、海底の広域的な内部構造を推定できるようになったことは、過去の掘削コア試料や観測データから沈み込み帯の進化過程をより詳しく解明することにつながる。
概要
国立研究開発法人海洋研究開発機構(理事長 河村 知彦、以下「JAMSTEC」という。)地震火山研究部門の赤松祐哉研究員、道林克禎客員研究員、国立極地研究所/総合研究大学院大学の藤井昌和助教らの研究チームは、国立研究開発法人産業技術総合研究所、大阪公立大学、京都大学、名古屋大学、神戸大学と共同で、沈み込み帯誕生直後の前弧※3地殻が、複数の異なる火山活動によって形成されたことを示す岩石物理・地球物理学的証拠を初めて示しました。
沈み込み帯の誕生は、地球のプレートテクトニクスの始まりに関わる重要な転換点です。大陸や日本列島の成り立ちを理解するためには、沈み込み帯誕生直後に地殻がどのように形成・進化したのかを解明する必要があります。しかし、そのような地殻形成をもたらした火山活動がどのように起こったのかを示す直接的な証拠は乏しく、長年未解明でした。本研究では、国際深海科学掘削計画(International Ocean Discovery Program: IODP)※4第352次研究航海(伊豆・小笠原弧前弧域調査掘削)で採取された岩石コア試料を用い、密度や空隙率※5、P波速度などの岩石物性を詳細に測定しました。その結果、沈み込み帯誕生後直後の火山活動で形成された岩石と、その後の火山活動で形成された岩石とでは、内部の割れ目(クラック)の量の違いが原因でP波速度が大きく異なることを明らかにしました(図1)。この結果を、掘削地点周辺で観測されている地震波速度構造と組み合わせることで、地殻が沈み込み開始直後の海底拡大を伴う火山活動と、海底拡大終了後に起こった火山活動の2つの段階を経て作られたことを、実際の地下構造として裏付けました(図1)。これは、大陸形成と関連する前弧地殻がどのように作られるのかを地球物理学的に初めて示す成果です。
本成果は、Nature Portfolioの論文誌「Communications Earth & Environment」に4月9日にオンライン掲載されました。なお、本研究の一部はJSPS科研費(22H01337, 23KJ2219,24K17156)、高知大学海洋コア総合研究センター共同利用(16A047,16B041,17A058,17B058)および情報・システム研究機構戦略的研究プロジェクトによって実施されました。

用語解説
※1 地震波速度:地震波(P波・S波)が岩石中を進む速さ。岩石の種類や状態によって変化し、硬い物質ほど速くなる。
※2 地震波速度構造:地下の地震波速度を場所ごとに表したもの。
※3 前弧:沈み込み帯において海溝に沿って発達する火山帯と海溝の間の領域。前弧で形成された地殻を前弧地殻といい、主に沈み込み帯が誕生した直後の火山活動によって形成された岩石からなる。
※4 国際深海科学掘削計画(IODP):2013年10月から開始された多国間科学研究協力プロジェクト。日本(地球深部探査船「ちきゅう」)、アメリカ(ジョイデス・レゾリューション号)、ヨーロッパ(特定任務掘削船)がそれぞれ提供する掘削船を用いて深海底を掘削することにより、地球環境変動、地球内部構造、地殻内生命圏等の解明を目的とした研究を行っている。2024年9月で終了し、2025年からは新たに国際海洋科学掘削計画(International Ocean Drilling Programme:IODP3)として日欧を中心としたプロジェクトが始まっている。(2025年10月既報)
※5 空隙率:岩石中の空隙(隙間)の体積の割合。火山岩にはマグマに含まれていた気泡や、変形によってできた割れ目(クラック)などが空隙として存在する。
掲載誌情報
【発表雑誌】 Communications Earth & Environment
【論文名】 Cracked on-axis and pristine off-axis crust formed during forearc evolution at a nascent subduction zone
【著者】 赤松祐哉1、藤井昌和2,3、針金由美子4、柵山徹也5、山本由弦6,7、神谷奈々8、道林克禎1,9
1.海洋研究開発機構 地震火山研究部門 固体地球物質科学センター、2.国立極地研究所、3.総合研究大学院大学、4.産業技術総合研究所 地質情報研究部門(研究当時、現:東京海洋大学)、5.大阪公立大学、6.神戸大学、7.海洋研究開発機構 数理科学・先端技術研究分野(研究当時)、8.京都大学、9.名古屋大学大学院環境学研究科
【掲載URL】 https://doi.org/10.1038/s43247-026-03400-7
報道に関する問い合わせ先
大阪公立大学 広報課
TEL:06-6967-1834
E-mail:koho-list[at]ml.omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。
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